第39話 From trap to trap
「ここが……。」
シドが言った。呆気に取られている様子だったが、すぐに顔を引き締め睨みつけるように城を見た。
確かにこれは呆気にとられるのも理解できる。俺が想像していた魔王城の数倍禍々しい。少なくとも俺が知っている魔王城は、『常に暗雲が浮かんでいて雷が鳴り響いて』いないし、『城壁が意思を持っているように動く』ことはない。どういう原理だアレ。特に城壁。
パチンと、隣から音がした。横には真剣な表情で城を見つめる勇者。頬が赤くなっているところを見る。まぁそういうことらしい。
やがて勇者が言った。
「よし。行こう。」
シドが城門を押し開ける。かなりの大きさがあるが、力を入れていないかのように開けていく。これまでの旅の成果だろう。
門をくぐり、場内へ入っていく。この魔王城は庭が無い。城だけが建っている。
城内は黒多めの無彩色のものばかりだ。ここにいると、世界から色が消え去ったような感覚を抱く。
天井はさほど高くない。ざっと5メートル程度だ。仮に全ての階が同じ高さだとすると、外観から推測するに5階ぐらいだろう。これが多いのか少ないのかは分からない。
数分進んで2階に通じている階段を見つけた。
階段を見つけて一息つくようにシドが言った。それに茶化すようにアルミリネが返す。アルミリネは出会ったばかりの頃と比べて、軽口を言えるようになっていた。
「よし。前進だね。」
「あら。緊張しているのですか?」
「それはもちろん。なんたって後ちょっとで」
「止まれ!」
シドが階段を登り始める一瞬前でギリギリ止めれた。
2人が怪訝そうに言った。
「どうしたんだいレイ?まさか、ここに何か?」
「ああ。ちょっと下がれ。」
2人が下がったのを確認して魔法を使う。土属性で石を生成し、階段に投げた。
すると、石は真っ二つになってしまった。それを見た2人が息をのむ。
「これは・・・・・・。罠、ですか?」
「ああ。通ったものを感知して、風属性の刃を射出するようだ。気づかなかったら縦に裂かれてただろうな。シドが通る直前、魔力が動いたのに気づけた。」
「なるほど・・・・・・。流石魔王城だね。」
「魔王城がいいのか魔王が手練れなのかは知らないが、状況があまり良くないのは変わらない。罠が発動する直前まで気づけなかった。魔法での感知に引っかからなかった。この先、同じかそれ以上の罠があると思った方がいい。」
これでも、俺は世界最強レベルの強さはあると思っている。当然、魔力感知を極めているつもりだ。だが、そんな俺が気づけなかった。これがそこら中に仕掛けられているとなると、正直キツい。自分だけなら何とかなるが、2人がいる。警告したらのう遅かったは洒落にならない。
加えて、今回の罠が囮の可能性も捨てきれない。というのも、1階部分をかなり歩いたが、これが初めての罠だ。1階に仕掛ける罠がこれ一つというのはどうも不自然だ。気を抜かせるためか、或いは『罠はこんなもの』と思わせて、次の階から更に巧妙になっているかもしれない。
いずれにせよ、警戒せずにはいられないな。
これらを2人に伝えると、顔が険しくなった。
「確かにそうだね。意気込んで忘れていたけど、ここは敵地のど真ん中。いつ殺されてもおかしくないんだ。」
「そうですね。レイの予想の一個目はワザと、というのはかなり高い可能性をひめていると思います。城に入る前の、あの動く城壁が根拠になります。まぁ、それすらも、という可能性も否定できませんが・・・・・・。」
「考えられるパターンは多岐にわたるが、ここで退くという選択肢は無いんだろう?」
「もちろん」「もちろんです」
「なら今は考えられる場合を想定し進む、そうだろう?」
2人が悩み出したのを見て、先を促した。
2人が同意したので、階段の罠に向き合う。一度発動したら消えるタイプではなく、再利用できるもののようだ。今は発動前と同じように魔力の流れが隠蔽されているが、一度流れた部分を見たため、どこに流れているかは分かる。一瞬光ったライトを見てだいたいこの辺、と分かるのと同じだ。
魔力の導線が分かっていれば、あとはこちらのものだ。導線に介入し、魔力を遮断する。
「よし。問題ない。」
俺達は先に進んだ。
◇
そこから先、順調とまではいかなかったがなんとか進んでいた。
道中には如何にも魔王城らしい性格の悪い罠が盛りだくさんで、地面に槍が生えている落とし穴というベタなものもあれば、『天井から粘度がヤバいスライムが降ってくる』なんて最悪ものもあれば、『触手が伸びてきて捕まったら高速で振り回される』とか『糸で繋がれて連続バク転』とかよくわからない変わり種もあった。
なんで詳細を知ってるのかって?魔力の流れを辿って術式を覗いたりわざと発動させたりしたからだけど?
まあ、解析した結果『発動したら魔王城ごと爆散』なんて激物は発動させなくてよかった、と心から思った。あんなもの触らないに越したことはない。
そんなこんなで今。
最上階にたどり着いた俺たちはある門の前に立っていた。
階段を上ってすぐの、たった一つの部屋の前に




