表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/98

第38話 慣れ

薪の焼ける音。


はじけるような音とともに赤い光が暗くなった周囲を照らしている。


寒いな。ある程度の温度までは耐えられるとは言え、こうして暖をとることに越したことはない。


「ううぅ。寒っ。もうすっかり冬だね。」


対面に座っているシドが言った。魔王討伐の旅路の途中で野営中だ。

しかし、コイツの口から『寒い』という言葉を聞くことになるとは。バカは寒くならないと聞いたことがあるが、与太話なのか?


「む。今バカにしなかったかい?」


「気のせいだ。」


バカにはしてない。ものの例えだ。


「ふふっ。」


対面に座っているもう一人が静かに笑った。


「このやりとりも何回目でしょうか。すっかり馴染み深いものになりましたね。」


こうして静かな空間で趣深い環境に身をおいていると、どうしても感慨深くなってしまう。とるに足らない2,3年の話なのに。


俺は二人と旅を続けていた。


正直ここまで続くとは思っていなかった。自分が他とズレているのは自覚している。どこかで意見が合わず仲違いすると思っていたが……。


「意外と続くものだな。」


「?どうかしたかい?」


弱くなった炎に追加の薪を投げ入れる。思ったことを話すと、二人は苦笑した。


「確かに無茶苦茶だと思ったことは何度もあります。でも、旅をしたくないと思ったことは一度もありません。」


「それに、僕らはいつも助けられてるからね。戦闘面の指導をしてもらって、サポートもしてもらって、他にも索敵、料理、細かなアドバイスも。奇天烈な面もあるけど、それ以上に感謝しているんだよ。」


「そういうことです。」


・・・・・・はぁ。


「おかしな奴らだ。本当に。」


「ハハハッ」

「フフッ」


「そりゃ、おかしな先生の指導を受けてるからね。少なからず影響は受けるさ。毒されているとも言うね。」


「あなたの性格や傾向は嫌というほど実感しましたし、染み付いています。ほら、今だって。昔の私達なら『なぜおかしいのか』と聞いていましたが、進化した私達はそんな野暮なことは致しません。」


変な奴らだ。言動から俺に対する信頼が伺える。会って数日ならそんな考察は絶対にないが、数年共に戦ってきて俺も背中を預けかけている仲だ。扱いに困るな。


・・・・・・!?


「・・・・・・まさか俺が?人間関係で悩むことになるとは。」


「お、レイ悩んでいるのかい?しかも僕達を思って?いいよ、是非相談してく・・・・・・痛い!」


前言撤回。やっぱりバカはバカだ。


そこからずっと話していると、アルミリネが寝落ちしてしまった。

そこで、ずっと気になっていたことをシドに聞くことにした。


「シド、お前アルミリネが好きなのか?」


「ぶっ!?い、いきなり何を!?」


「図星か。まぁ日頃の態度を見ていれば丸わかりだな。そういう話に疎い俺でも気づけたぞ。」


「え……。ちなみにいつぐらいから……?」


「旅を始めて二週間ぐらい。」


「早っ!?」


「で?本音は?」


「うっ……。そうだよ。レイの言う通り。僕はアルミリネ、ミーネが好きだ。」


ミーネとはシドが二人きりのときに呼んでいた愛称だ。呼ばれた方もまんざらでもなかった。

顔を赤くしたシドが聞いてくる。


「でもどうして急にそんなことを?」


聞かれた内容について少し吟味して、正直に答えることにした。


「……好きになる、とはどういうことか聞きたくてな。昔、そんな感情を抱いたような気がするが、感覚として思い出せない。どんな感情だったかを考えていると、そもそもそれが何か自体忘れてしまった。だから聞けるうちに聞いておこうと思った。それだけだ。」


「……そうだね。確かに、僕にとってミーネを好きっていう気持ちは自然と浮かび上がってきたもの。考えてしまうと、分からなくなるのが普通かもしれない。でも、あくまで僕の考えとして、だよ?好きを含めて、人との関係って共感でできているんじゃないかな。好きは相手のいいところに共感して発展して、立場上相手をしないといけない人相手なら、事前に集めた情報や話しているうちに共感する部分を探して、ちょっと悪く言うとご機嫌取りをするんだ。だから、全ての関係は共感がある。あり得ないって思うかもしれない。でも、これが勇者としていろんな人に接してきた僕の考えかな。」


最後を笑って締めくくった。俺にはない、勇者ならではの視点だ。


「共感、か。考えてみれば、相手の実力を認めたりするのも共感の一種と言える。まぁしかし、本当に納得できるかと言われればそれは無理だ。俺に本当に共感したようた経験はない。もちろん、お前にもな。」


「え?ちょっとひどくないかい?」


そういいながらもシドは笑っていた。


「でも僕はあるよ。レイに共感したこと。」


「そうだろうな。お前ほど感受性豊かなら……」


「そうじゃない。一番初めに共感したときは、自己紹介をしたときさ。今だからこうして言えるけど、理由はけっこう滅茶苦茶だよ。僕の姓は……。」


特別なことは何もない。そんな夜は更けていった。





















2年後


黒雲に覆われた空。


身を蝕みそうな不快な空気。


無彩色でできた大きな城。


俺たちは旅の最終目的である魔王城に辿り着いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ