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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第二章

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第27話 質の悪い善人

さぁ、今日も冒険者として職務に邁進するとしよう。


気持ちの良い朝を迎え、美味しい朝食を取り、意気揚々と狩りに出かける。


嗚呼、なんと素晴らしきことか。


このような日々のことを真の意味で日常と呼ぶのだろう。


……だと言うのに。


「すごいね!魔物を倒すスピードと効率がとんでもないよ!」


「ふむふむ。魔物はこうやって解体すればよいのですね。勉強になります。」


……何故、いるのだろうかこの二人は。


あの交渉から一夜明け、いつも通りに依頼を受けに行った俺をギルドで待ち構えていやがった。しかも、


『おはよう、レイ!さっそくだけど僕ら、君の依頼に付いて行くことにしたから!』


『……は?』


『あ、安心して!何を言われようとも付いて行くから。』


『……Huh??』


と言って聞かないのだ。俺がすがすがしい朝を過ごしていると高確率で邪魔される気がする。呪われているのだろうか?


いや、俺は頑張った。こいつらを引き離すためにいろいろやってみた。例えば、結構な速さで走って追いつけないようにしてみたり。結果は惨敗、というか意味不明だったが。


聞けば、聖女が使える聖属性に探し物を見つけ出す魔法があるらしい。それであっさり見つかって諦めた。なんだよその魔法。お前ら勇者一行の目的は魔王討伐だろうが。なに道中での人助け前提にしてるんだよ。


そんなこんなあり現在。


「はぁ。何でついてくるんだよ。帰れよ。勇者の仕事しろよ。」


流石にうんざりしてきたんだが。


「何でって。あんな理由だとこうするしかないよ?」


どこがだ。寝言は寝て言え。

俺と勇者の会話は続く。続けたくないが。


「昨日『断る』って言われて、その理由を僕が聞いたとき君はなんて言ったか忘れたのかい?『興味ない』って。なら興味を示すまで付きまとうしかないよね!って話になった。」


何言ってるんだろうかこの勇者は。

呆れているとまともだと思っていた聖女まで混ざってきた。


「シドが言うことはどうかと思いますが、私もあなたにはついてきて欲しいと思っています。昨日の段階では本当に強いのか半信半疑でしたが、今日の動きを見ていると納得せざるを得ませんでした。確かに、あなたほどの実力者がいれば魔王討伐にぐっと近づきます。」


うん、やはり聖女はまとものようだ。話の筋がきちんと通っている。俺が納得するかどうかは別問題だが。どこかの勇者とは大違いだ。


「……今何かおかしなこと考えなかったかい?」


チッ、これだから勘の(ry


「……俺に興味を示させる的な発言をする割には何もしていないように見えるが?」


実際、この二人はただただ付いて来ているというか勝手に盗み見ているだけだ。

そう言うと勇者の顔が分かりやすくウザくなる。


「ふっふっふ。よくぞ聞いてk」


「やっぱいいや。」


「ちょっ!?」


妙に腹立つドヤ顔をかましてきた勇者の言葉を遮り先へ進む。付いてくるだけで妨害こそしてこない二人だが、引き離すたび何度も恨み言を吐いてくるため、俺が気を使ってペースダウンせざるを得ないのだ。こいつらのせいで大幅に遅れている。


いつもなら問答無用で排除するところだが今回はそうもいかない。具体的に勇者だとか魔王だとかがどんなものなのかは知らないが、字面とかざっくりとした話を聞く限り、消せば面倒になるのは間違いない。


「で?理由をとっとと吐け。」


「止めたの君だよねぇ!?」


何故か溜息をつくストーカー紛いの勇者。お前が付いて来なければ済む話だろうが。

そんな俺の内心を知る訳もなく、勇者はのびのびと話し始める。


「えっとまあ、短絡的って言われるかもしれないけど、昨日の交渉の感じから普通に説得するのは無理かな、と。あの後二人で考えたんだ。どうすればレイを説得できるだろうって。それで、僕の思いつきで『興味を持ってもらえるまで付き纏えば!』ってなったんだ。正直に言うと、その時彼女は引き気味だったんだけど、今は積極的勧誘派になってるから。」


……コイツ、頭おかしい。勇者云々関係なく、いや勇者だからこそ消した方がいい気がしてきた。もう思考がストーカーと化しているんだが。


「私の名誉のために言っておきますが。」


ここでまとも枠の聖女が口を挟む。流石精神安定剤。さっさとこの腐りきった勇者を元に……


「昨晩の私は、引き気味ではなくドン引きでした。」


……だめだこりゃ。すっかり勇者に染められている。意外ともともとはこんな感じなのかもしれないが。


ともかく


「言っておくが入れを仲間に加えたいなら相応のメリットを示せ。納得できるぐらいのな。」


本音を言うと、本当に興味が湧いたなら付いて行っていいとは思う。だが、この美食の町ともいえる王都での生活を捨ててまで、そう思えるようなことはなかなかないだろう。

遠回しに『付いて行くことはない』と告げた俺を前に、勇者は不敵に笑う。


「お、言質とったよ。」


「そうですね。」


おい、なんで聖女がやる気になっている?


当の二人は困惑している俺のことは無視。ボケとツッコミかと思っていたら、まさかの似た者同士だった。もしかして、逃げるのが正解だったりするか?


「お、血の匂いにつられて魔物が来たね。じゃ、さっそく価値を示すとしますか。」


勇者の言葉のとおり、数十メートル先に熊型の魔物がいる。いいだろう。そこまで真剣なら是非見せてもらおうじゃないか。勇者コンビの実力とやらを。


獲物を視界に捉えた勇者が駆けだしていく。聖女はその場で待機。距離を半分も詰めない地点で抜剣。見た目通り勇者は前衛で片手剣一本、聖女は後衛で魔法使いか。


最初に仕掛けたのは聖女だ。光属性なのだろう、細長い光を数本生み出していく。その形は槍でも杭でもない、両端が尖ったごく細の線といえる。


勇者が熊型に迫る前に魔法が射出された。その線はクマのいたるところを貫通し、後方へ抜けていく。あの魔法自体が貫通力特化なのだろう。熊型へのダメージは少ない。だが、確実にダメージは入った。熊型は嫌がり、左右に暴れる。


その瞬間を狙ったかのように勇者が接近する。その接近は魔法が着弾した瞬間、一気に加速したように見えた。あれも聖属性魔法か?身体強化系まであるとは。ある意味万能属性だな。


なるほど、勇者が前衛、聖女が後衛という分担が代々同じなら魔法も偏っている可能性は高い。もしかしたら、それぞれに合わせて使える魔法はかわるのかもしれない。勇者が後衛、聖女が前衛という代は使える魔法が逆で、勇者も聖女も前衛の代は、どちらも身体強化系に偏るとか。


あの急な接近が魔法ではない可能性?ないな。しっかり魔力出てたし。


ふと思ったんだが、勇者が女子で聖女に男子が任ぜられるということはないのだろうか?さっきの適正論で言えばこういったこともありえるはずだ。聖女ならぬ聖男?……あまり考えないでおくか。


接近した勇者は一撃とはいかなかったが、三撃目で熊型を倒した。


今の戦闘で評価点は大きく二点。


一つ目は勇者と聖女の連携力の高さ。あの二人は何の打ち合わせもなく戦闘を開始した。にもかかわらず聖女が魔法、そのあと勇者が突撃という流れを当然の如く行っていた。あれを無意識で行っているのなら、かなり格上とも戦えるだろう。


二つ目は、俺も驚いたことだが、戦闘開始から十秒かかっていないことだ。勇者が走ったり剣を振ったり、聖女が魔法を紡ぎ、着弾するまでのスピードは世界でも上位レベルだろう。


勇者と聖女が自信満々だったのも、多少癪だが認めよう。

終わった二人が近づいてくる。


「どうだ、レイ?仲間になっても損はさせないはずだ。」


「どうでしたか、レイさん?私達はかなりの実力者だと自負しています。足手まといにはならないはずです。」


だが、


「そうだな、改めて断る。」


不満を垂らす二人を置いて、熊型に近づく。解体しろよ。魔物が寄ってくるだろうが。


確かにあの二人に昨日よりは興味が湧いた。だが、ソレ止まりだ。決定的なものにはならない。


あのレベルの連携ができる冒険者なら、今まで何人も見てきたし、同じようなスピード戦ができる冒険者はもっといる。聖属性魔法を加味しても、やはり足りない。


未だ睨んでくる勇者と聖女を半ば無視して、俺は次の獲物の場所へ向かった。



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