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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第二章

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第26話 交渉

「で?何の用だ?」


食事を終えた俺は改めて問いかける。

すると目の前の少年が天を仰いだ。


「ああ。やっと話させてもらえる。」


「帰るぞ。」


今朝話させてもらえなかったのはこっちだ。自分に帰ってきたと思うんだな。


「ごめんって。今朝からずっと交渉したくてつい。」


「交渉?一方的に呼び止められただけだった気がするが。」


「ぅ、うん。悪かったよ。流石に勢いのまま行き過ぎたと思ってる。」


……やけに素直だな。話が通じなかった今朝と比べて落ち着いている。これなら交渉を受けると言える。飯奢ってもらったし。


「じゃあ、改めまして。」


少年と少女が居住いを正す。


「僕はシド。今代の勇者をやってる。よろしくね。」


少年―――シドが自己紹介をする。中肉中背で、容姿を問われると100人中100人が美少年と答えるような柔和な雰囲気の少年だ。なお、第一印象は最悪ではないとだけ言っておく。


「私はアルミリネと申します。隣のシドと同時に、聖女の位を賜りました。よろしくお願いします、レイさん。あと、今朝はシドが失礼しました。」


少女―――アルミリネが続いて喋った。こちらも美少女と呼ばれる部類だ。ただ、外見はとても細く見え、簡単に折れそうな感じだ。しかし内面は強かなようで、今朝の様子がその証拠。第一印象は自由すぎる行動を窘める妻という感じだ。


「……あの、今何か失礼なことを考えませんでしたか?」


「気のせいだ。」


君のような勘のいいガキは……。おっと、口を閉じるとしよう。

どうやら勘がいいのは聖女だけじゃないらしい。聖女は分かるが、どこにお前が睨んでくる要素があった勇者……。


気を取り直して二人を観察する。並べて見ていると絵になるな。美少年と美少女ということは勿論だが、一層際立たせている要素が2人の髪だ。勇者は銀髪、聖女は金髪ロングでいかにも勇者と聖女って感じだ。


「えっと、じゃあ本題に入らせてもらうよ。」


俺が観察を終えたことを悟ったのか、勇者が問いかけてくる。


「改めて、僕たちの仲間になってくれないかな?」


相変わらずド直球で要求してくる勇者。ここである不思議現象が起こった。

俺は思ったことをそのまま口にする。


「……勧誘はとりあえず置いておくとして、なぜ聖女が驚いている?」


そう。勧誘発言が出た瞬間、仲間であるはずの聖女が驚いた表情で勇者を見たのだ。


「……初耳です。あなた今朝、馬車を飛び出して勧誘に行っていたのですか?」


「あれ、言ってなかったっけ?」


「言われてないです!」


ほんとに、苦労人のようだ。というか、


「今朝から今まで、何で飛び出したか聞かなかったのか?」


「ええ。国王陛下への無礼になるということしか考えてなくて、理由を聞くこと自体失念していました。」


勇者や聖女ってのは思ったより面倒のようだな。世界を救う側だから、国王とかとは対等なのかと思ったが。意外とそうでもないらしい。確かに、資金や食料などの援助のことを考えればそれはそうか。


「で、どうなんだ?そこの聖女のもだが、勧誘するときは理由も含めて話せ。」


俺は一連の元凶に視線を向け問い詰める。聖女も何か言いたげな視線を向けている。

当の本人は苦笑いして答えた。


「アハハ……。ごめん、僕も忘れてた。さて、レイを誘った理由だけど。」


勇者は顔を真剣なものに切り替え、続ける。


「きっかけは今朝、王都に入った瞬間だよ。馬車を飛び出した理由にもなるんだけど。門をくぐった瞬間すごく強烈な気配を感じてね。僕は勇者だけどあまり経験はないし、訓練は受けたけど死ぬほどではなかったから、気配とかはさっぱりなんだ。僕自身分かってるし、いろいろ教えてくれた聖都の人からも言われたから信じてくれていいよ。そんな僕が、気配を感じた。『門から距離があるはずの冒険者ギルド』から、『すごく強い気配』をだよ?まぁ、前者は漠然とした方向しか分からなかったけど、後者だけでも異常だと思わないかい?で、そのときの僕はヤバいと感じて駆けだした訳さ。直感だったけどね。そして見事的中。ギルドに君がいた。最初は魔王が化けてるのかと思ったよ。でも違うって分かった。なら、そんな強い人がいれば魔王討伐に近づくと思って勧誘した。」


だから初対面で全身観察された訳か。

筋の通った説明ではある。コイツが行動を起こすには十分だ。自身で勇者としての自覚はあるということだろう。普通はそんな気配を感じたら近づかない。嬉々として寄っていくのは、強さを求める武闘家や戦闘狂、ただの死にたがり、あるいは目の前のような奴。


「ひとつ、気になる点がある。お前、気配はさっぱりといったな。ならどうやって俺が魔王や魔族ではないと分かった?」


これはおかしな点だ。この世界にステータスとかスキルだとかそんなものはない。ならどうやって、という話になる。

すると勇者は答えかけ、困った顔になった。


「ああ、それは……うーん?これって言っちゃっていいのかな?」


問いかけた先は聖女だ。聖女は少し悩むそぶりを見せ、勇者に返した。


「その前にシド、あなたはどこまで本気なのですか?」


「レイを誘ったこと?もちろん、レイを加え3人で魔王を倒そうってくらいには本気だよ。」


「そうですか。ここまでの旅で同行の申し出を悉く断ったあなたが……。」


聖女は再び考え始める。やはり、正式に勇者認定されているだけはある。仲間に加わりたいものは山ほどいるようだ。純粋に勇者を尊敬しているのか、魔王討伐の栄誉が欲しいだけなのかは知らないが。

数秒で聖女は顔を上げ、言った。


「いいと思いますよ。あなたがそこまで本気なら。」


「分かった。」


相談は終わったようだ。


「実は勇者と聖女は聖魔法が使えるんだ。その2つは神託で選ばれるんだけど、選ばれた人たちは例外なく宿っていたんだって。当然、僕たちにも宿ってる。僕たち2人がそれぞれ使えるけど、どちらかしか使えないものもある。聖魔法の中でも勇者は攻撃系、聖女は支援系や回復系しか使えない。これも歴代の勇者と聖女も同じで例外はない。魔族を見分けれるのも聖魔法の1つなんだ。」


聖魔法……聖属性、あるいは神聖属性魔法といったところか?光属性魔法はあるが、それを特殊化したものだろうか?


「レイが魔族じゃないって分かった理由はそういうことだよ。この情報、今まで秘匿されてきているんだ。」


「魔族に情報を渡さないという理由もありますが、一番は勇者と聖女に余計な負担をかけないためです。特に聖女の聖魔法には効果が桁違いに高い回復魔法があります。それを公にしてしまえば、人々が殺到しかねませんので。」


勇者に続き聖女が補足して説明を加えた。


「それじゃあ、答えを聞いてもいいかい?」


勇者が笑顔で聞いてくる。まるで、『秘密を知ったのだから仲間になる以外ないよな?』と言うような表情だ。聖女も俺が仲間になることはおおむね賛成らしい。

俺は今までの情報を整理し、返答した。


「もちろん―――――断る。」







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