第23話 食
この話から第二章後半となります。
前半タイトルは『突き進む路』です
金属を渡し、代わりに棒を受け取る。
その棒には塊がついており、色は濃く、少し粘液性のある液体を纏っている。
感じ方によれば異臭ともとれるにおいを放ち、多くの人を坩堝へ叩き落したであろうソレを、何のためらいもなく口に運び……
「うっま。」
俺は今食べた焼き鳥の感想を思わず口にした。
リーズナブルな価格でこの味は大満足だ。小腹がすいたときにも、昼食にも夕食にもなりそうだ。
ただ一つ。ここだけが惜しい。
におい。この一点だけ改善すべきだ。今までもそんな感じはしていたが、臭み取りがあまい。なんなら一切していないのではなかろうか?ただ味をつけて焼いただけみたいな。香草を一緒に焼くだけで違うのに。
ただ、繰り返すことになるが、味は大変よろしい。それこそ、口に入れた瞬間においなんて気にならなくなるくらいには。
結論。
満足比9:1。十分大満足にはいる数値だ。
早々に1本食べきりただの木の棒となったそれを下に落とす。腕を伸ばして、手から滑らせるように自然体で。
もちろん不法投棄で町を汚す気は無い。俺の手から落ちた棒は、注視しても分からないくらい僅かな火に焼かれ、灰となり風に乗った。
少し肌寒いような風が吹く。冷えてきたな。少量でも体を動かすとはいえ、何か羽織れるものをストックしておくか。
そう思いながら今日も目的地へ向かう。相も変わらず、冒険者生活だ。
◇
「こんにちは。依頼ですね。少々お待ちください。」
受付に依頼書を渡し、しばらく処理を待つ。
もうこの町に来て半年か。我ながら長く滞在しているな。
イルミア王国王都ナスプレト。それが今いる町の名前だ。
ここに長くいるのは、隠された財宝があるとか、何か重大な秘密があるとか、そういう理由がある訳ではない。ただ単純に、飯がうまい。
いや、これは旅人にとって死活問題と同義なのだ。長い長い期間渡り歩く旅人にとって、とてつもない忍耐力は必須だ。進むにつれ景色は変わるが、広大な土地ならば年単位で同じような景色というものもあり得る。そうなると、当然飽きが来る。コイツがまた厄介で、集中力、判断力等さまざまなものが鈍るきっかけとなりえる。魔物に襲われる危険がある以上、何としてでも避けなければならないのだ。
そこで、毎日必要かつ毎日変えられるものは?
食だ。
旅人は限られた荷物しかもてない。だから、基本食料は現地調達だ。そうなると、旨い不味い以前のお話になる。食材が手に入るかからだし、味付けも偏ってしまう。なら……となるのが町での食事だ。毎日必要だからこそ美味しいものを、という思考が旅人たちに無意識に生まれているのかもしれない。
まぁ、俺は食料は空間に仕舞えるし、そもそも空飛べるから段違いの速さで移動できる。町から町へ歩いて、そういう旅の醍醐味を楽しむのは気が向いた時だけだ。
つまり俺がこの町に長居しているのは、単純にこの町の食に感銘を受けただけだ。
なかなかのバリエーションで、それぞれの個性がよく出ている。オーソドックスで安心感のある料理から、疑問符を浮かべてしまうような尖った料理まで。それはもう凄まじいの一言に尽きる。
それに、メリットもある。ここを拠点にしている冒険者とは顔見知りになったし、ついさっきの受付嬢も同じだ。長居しているおかげか、軽く情報を渡してくれるようになった。ここの冒険者は基本よくできており、ギルドで俺の見た目でも突っかかってくることはめったにない。あるのは、外から移ってきたチンピラもどきだけだ。平和平和。
処理が終わったことを伝えられたので王都の門から外に出る。今回は『アルブウルフ』の討伐。群れをつくる魔物なのだが、その数が多く、なのに高度な連携をしてくる。人によっては厄介な相手だ。
俺?どんな相手でも関係ない。自分で言うのもなんだが、だいたい何とかなる。
というわけで『アルブウルフ』討伐完了。ざっと70匹前後か?
俺は犬魔物の死骸を雑に袋に入れていく。王都の冒険者ギルドは死骸を持ち込むと解体してくれる上に、買い取りも適正価格で行ってもらえるのだ。あのギルドのいいところがどこかを聞かれると、何割かの冒険者はこのことをあげるだろう。
早々にギルドに戻ってきた俺を、顔見知りの受付嬢は苦笑いで迎えた。普通は、朝早くに出かけて、夕方に返ってくるらしい。
人間は慣れる生き物だ。まぁ、数ヶ月同じようなことを繰り返せばそれが自然か。
報酬を受け取り、ギルドを後にする。さて、夕食は何を食べようか。




