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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第一章 始まりの異世界
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第6話 ギルドマスター

まずいなぁ。

俺は門の外に出て草原を駆ける。さっき通りすがりにチラッと聞いたが、もう少ししたら門が閉まるらしい。防衛上の理由で夜よりちょっと早めに閉めるんだとか。普段ならきっちりしてるなぁってことで感心できるのに。


門を出て3分ぐらい走ったところで後ろを振り返ると、めっちゃ遠かった。は?町全体が見えるんだが。そんなにスピード出てたのか。だが、『強化』だとか『疾走』だとかいう能力は持ってないはず。っと、今は時間がないんだった。また、俺は走り始める。

それからすぐに、魔物と遭遇した。緑色の体に棍棒。異世界おなじみのゴブリンだ。数は8。特に変わった奴はいないか。


「時間がないんでね。手早く終わらせる。」


そう言って、風の魔法を使う。今になってこちらに気づいたがもう遅い。首が跳ね飛ばされているからだ。 


急いでゴブリンの体ごと収納する。魔石とがどれくらいの価値になるかは分からないが、熊の分と合わせればなんとか足りるだろう。そう信じたい。

あー、でも多分空間属性なんて使ったらまずいよな。取り敢えず魔石だけ持っておくか。


そう思いつつ門に向かって走り出した。





門に辿り着いてから、帰りは『飛翔』使えばよかったじゃんって気づいた。





間に合った。時間ギリギリアウト。門番の人が俺が急いで出ていったのを見て引き伸ばしてくれていたらしい。

そして現在冒険者ギルド前。換金とかの時間制限は無いはずだから、ここからはゆっくりできる。

そう思いながら扉を押し開けると、ギルド内が静まり返った。ワォ、テンプレジャン。

テンプレに感激しながら、扉からまっすぐ歩いて行く。受付前の血の池は消えてるな。


「すみません。依頼後から申請してもいいんですか?」


「はい。自己申告なり当日に達成したもののみ有効となります。」


ちゃんと俺みたいな奴に対しても対策があるのか。

受付にお礼を言って、掲示板を見に行く。そのとき、人が避けていくのが露骨で笑いそうになった。

どれどれ、ちょうどゴブリンの討伐依頼があるな。よかったよかった。依頼票を持って受付に向かう。


「この依頼をお願いします。後からの申請ですが、さっき狩ってきました。」


「はい。では、討伐証明として魔石の提示をお願いします。」


俺はポケットから緑色の魔石8個を取り出す。


「8個ですか。依頼は5体の討伐ですので、超過分は買取のみで依頼には関係しませんのでご注意ください。こちらが、報酬の2000エスになります。」


渡されたのは2枚の、銅貨ってやつか?価値が分からないからなぁ。


「魔石や素材の換金はあちらでお願いします。」


そう言われたので俺は横のカウンターに行き、魔石をテーブルの上に置く。


「魔石の換金をお願いします。」


「畏まりました。鑑定結果がでるまでしばらくお待ちください。」


買取担当の人間が魔石の鑑定を始める。


「はい、ゴブリンの魔石が8つに・・・えぇ!?」


ん?何か問題でもあったのか?


「失礼ですが、この魔石は盗品じゃ無いですよね?」


見せられたのは・・・あぁ熊の魔石か。


「えぇ、もちろん。この町に入る前に自分で狩った熊の魔石ですね。それがどうかしましたか?」


「どうかって・・・。あなたはFランクですよね。しかも登録したての。だとすると、この魔石は有り得ないんですよ!だってこの魔石、シールドベアのですよ!」


また周囲がざわつき始める。テンプレはみたいがここまで来ると面倒だな。で、何で熊ちゃんの魔石で騒がれなくちゃならないんだ?

という疑問は簡単に氷解する。


「Cランクの!」


あぁ、なるほど。つまり登録したてのペーペーが中堅の魔物を狩れるのはおかしいとそう言いたい訳だな。


「有り得ないと言われても、狩れたのだから他に何も言えませんよ?実力的にと言うなら、登録が今日というだけで実力はあるので。」


「な、そんな事通じる訳がないでしょう!冒険者でも、魔石や素材の窃盗は罪になりますよ!いいですか、今正直に言えばまだ軽く済みますよ・・・。」


めんどくさくなってきたな。もうこの人も昼間絡んできた男と同じ扱いでいいかな。そんな事を考えていると、近くの階段から誰かが降りてきた。


「おいおい、昼間に続いて夕方もかよ。今度は何事だ?」


「あ!ギルドマスター!」


この如何にもそうです的な人間がギルドマスターらしい。いや、流石にテンプレすぎだろって突っ込みたくなる外見をしていた。


「で、今度は何の騒ぎだ?」


「聞いてください、ギルドマスター!この子が盗みを働いたんです!」


「盗みぃ?」


買取担当の人間が話すのを、何故か微妙そうな顔でギルドマスターが聞いている。なんだ、あの顔?まるで、同じような話を同じ日に2回聞いたような顔だが。


「はぁ、経緯はよぉーく分かった。」


聞き終わると、大きな溜息をつきながらこっちを見る。なんだ?その全ての元凶を見るようなかおは。


「坊主、昼間にも騒ぎ起こしたろ。ほら、男が絡んだやつ。」


「はい、そうですが。」


「やっぱりな。」


それからギルドマスターは担当の方を向く。


「この坊主は盗んでなんかいねぇ。間違いなく実力で倒したものだろう。」


「な、そんなのあり得ません。だってその子はFランクですよ!」


「お前、昼間は非番だったな?この坊主に絡んだCランクが腕切り落とされるってことがあったんだよ。だから実力はあるんだろう。」


買取担当は絶句して黙ってしまった。ちょうどいい、正直説明も面倒だと思っていたところだ。代わりにやってくれたのはありがたい。

と、思っていたら


「ただ、昼間の件と合わせて俺も聞きたい事がある。坊主、すまんが、支部長室にきてくれるか?そのときに買取代金も渡そう。」


まぁ、これは必要経費だと思って諦めるか。








俺はギルドマスターとともに支部長室のやってきた。ギルドマスターって呼ばれてるのに支部長したって何?


「悪いな、そっち座ってくれ。」


促されたのでギルドマスターの対面に座る。おぉフカフカのソファーだ。


「急に連れてきて悪かったな。俺はウォルド・ソルディア。ここで支部長なんてやってる。ギルドマスターとも呼ばれるな。」


「レイといいます。今日ギルドに登録しました。」


どうやらギルマスはまともな人のようだ。いやぁ、脳筋タイプとかじゃなくてよかった。いや、ほんとに。


「さて、着いてきてもらって悪いんだが、お前はそれなりの実力はあるってことでいいんだよな?」


「そうですね。それこそCランクをひねれるぐらいの実力はあると思っています。」


どこまで通用するかは知らないが。


「詳しく言う気はない、と。分かった。なら報酬を準備するからちょっと待ってくれ。」


「あっさりしているんですね。もっと根掘り葉掘り聞かれると思っていました。」


「俺も冒険者でな。一応、冒険者どうしの詮索は御法度になってるんだよ。暗黙のルールってヤツだな。それに聞いても答えないだろうし、お前とは長い付き合いになりそうだしな。」


そう言ってニヤっと笑ってみせるギルマス。だがしかし、その見た目では、


「ギルマスが笑うと悪人が悪巧みしているみたいですね。」


「んだとコラァ。」


ノリいいなこの人間。いや、割と気にしてるのか?


「ほら、ゴブリンの魔石8つで800、シールドベアの魔石1つで4000の5000エスだ。」


「ギルマス、計算できないんですか?」


「アホ言うな。迷惑料込みだ。」


受け取った袋の中には銅貨が5枚。この銅貨は1000エスで間違いなさそうだな。


「ゴブリンの魔石8個で800エスなのに、ゴブリン討伐の依頼では2000エスなんですね。」


「依頼を通させるためだ。依頼を全く受けず乱獲なんてされたら困るからな。っと、冒険者証出せ。支部長権限でDランクに昇格だ。」


「そんなことできるんですか。例外なくFランクスタートなのでは?」


「それは登録時の話だな。その後は支部長権限でDランクまで上げれるんだよ。当然、実力がない奴をあげるのは禁止だ。」


結構ガバガバなんだな、冒険者ギルド。ある意味予想通り。


「で、いいんですか?実力見られてないと思いますが。」


「ハッ。Cランクの腕切り飛ばした奴が何言ってやがる。」


そうか。その件も伝わってるよな。

さて、用はこれで終わりだろう。


「ギルマス、ありがとうございました。」


「なに、迷惑かけたのはこっちだ。」


「そうですが、事態を収めるために回収してくれたんですよね。」


そう言うと、ギルマスは驚いた様子になった。


「実力は未知数な上に、頭の回る坊主か。こりゃ末恐ろしいな。」


「本人の前で言いますかそれ。」


呆れながら、一礼して支部長室を後にする。

はぁ、さっさと宿見つけて休みたい。














「あの坊主、マジかよ。」













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