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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第二章

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第18話 審問

◇レイ視点◇


ドラゴンのブレスを壁で防いだ後、俺は3人のほうを向いた。


3人は本気のドラゴンにこっぴどくやられており、開戦前の勢いは見る影もない。まぁ、当然と言えば当然だが。


そもそも実力がかけ離れているし、途中からこっそり俺が抜けていたのだ。こういった戦闘において4人から3人に減るということは大きな意味を持つ。カバーできる範囲や一人当たりの仕事量がはるかに違う。隙ができ、やられやすくなるのも無理はない。


俺が途中で抜けたのは、俺なりに3人の意思を尊重しようと思ったからだ。道中3人何としても完遂する覚悟とともに死ぬ覚悟も持ち合わせていた。野営中の様子を見れば一目瞭然。だから俺は介入せず、最後は3人の底力を発揮しそれでも及ばないならそれが道理だろう、と。本当なら最期まで見続けるつもりだった。


だが、見過ごせない発言が飛び出した。


俺は自分の中でいくつかルールを定めている。


基本的に俺は自分の思うがまま、自由そのものとして行動する。どれだけ常識を説かれようと、倫理だの人としてだの言われようと。


死に対する考えもそう。不運で死を迎えても、自ら選ぼうとも、俺は口出しをしない。俺は自由だから。考えを押し付ける訳ではないが、俺の気分が向きそいつが望ない限り、他人は手出しすべきでない。俺の生き方のように自由であるから。


今回はそれにひっかかった。


「守る、か。」


そう俺はつぶやいた。視線は3人にむけたままで。


「それをお前は言えるのか?」


「……は?」


俺の言ったことが理解できなかったらしい。リソルの目が点になる。リギットとタラトもよく分からないという様子で首を捻っている。


確かに、これだけではどういう意味か分からないだろう。本音を言えば、このくらいは自覚しているかと思ったが。


「なに、簡単な話だ。お前はさっき守る、と言った。別にそのこと自体が悪いとかダメだとかいうわけではない。その心意気は大いに結構。持ち続ければ、探求心や貪欲さの原動力となる。俺が指摘したいのはな、くだらないってことだよ。」


「くだらない、だと?ふざけるな!故郷を、家族を守ることの何がくだらないというんだ!」


「言っただろう?簡単だって。ちょっと考えれば分かることだ。何で領主に逆らわなかった?」


リソルが言葉に詰まる。言いたいことがないようなので俺は容赦なく続ける。


「お前らははき違えている。考えてみろ。最強と名高いドラゴン一匹とそこまで強くない領主一行、どちらのほうが守れる可能性が高い?自分の実力がランクに合わないことを分かっているお前なら、このぐらい自明として思考できるだろ。それができないってのは、どういうことか分かるか?」


答えは返ってこない。


「結局のところお前らは支配されているだけなんだよ。人間を無意識に恐れているだけ。何もかも、自分の命すら懸けて守ろうって言うのなら。そんなものに縛られている時点で終わってる。それを、くだらないって言ったんだ。お前らは自由じゃない。」


自覚はあったのだろう。リソルが俯く。そういうところだ。目の前の事実から目を背けている。そうやって逃げてるうちは何も救えない。ドラゴンと相対していた時の威勢はどこにいったのか。


守る、救うとかそんな重いものに限った話ではない。何もかもに向き合う覚悟は必須だ。火急的な要件なら準備時間なんて取っている暇はないのだ。ここでいう準備時間とは物資をそろえたりすることではない。


逃げるな、とは言っていないんだ。


自ら意気揚々とドラゴンに向かっていって、笑って死ぬ。

それなら俺は口を出さない。寧ろ、立ち上がって拍手を送りたいぐらいだ。


だが、今はどうだ?


家族のため、村のため、仕方なく命を散らす。未練を残して。

これのどこが自由と言えるか。正義のためとか、嫌々とか、そいつが本当の意味で心から思っている以外は俺の嫌いな最期だ。


まったく、くだらない。


「で?どうするんだ?このまま死にたいと言うなら今すぐこの結界を解いてやる。」


もはやこいつらのに付き合う意味はない。本当なら問答無用で解くが、少々世話になった礼だ。


「……いやだ。あたしはまだ死ねない。」


リソルが俯いたまま答える。はぁ。


「またそれか。お前はそれしか言えないのか?自分で実力不足であることを分かっていたくせに、何段もすっ飛ばして格上に挑むからそうなる。せめて自分で必死に考えろ。状況を見極め分析し方法を死に物狂いで探し出せ。それとも、何だ?この期に及んでまだくだらないプライドを持つか?」


「レイさん!」


「お前も同じだ、タラト。自分が好きな相手の故郷を懸けられているんだ。もっと真剣に考えろ。お前の取柄はそkじゃないのか。」


さて、ここでどんな結論を出すか。だいたい予想できる、というより実質二択しかない。俺に縋るか、否か。これくらいの状況判断はできるだろう。


そう考えて答えを待っていたその時、


「レ……イ……。」


消え入りそうな声が聞こえた。


リギットだ。


驚いた。あのボロ雑巾のような状態で声が出せるとは。もう息をするだけで全身が悲鳴を上げているはずなのだが。


「私、ね。楽しかったよ。レイが来る前から、来たあとはよりいっそう。だから、あの村自体が、私の思い出。みんなを守る、とかそんな動機もある。でも、一番は、持ち続けたい、っていう独占欲、みたいなのだよ。自分勝手で、自分のためだけの理由。でも私は、落としかけてる。だから……」


リギットは僅かに眼を開いた。


「レイが、持って。壊れないように」


その言葉は。リギットが死の淵で放った言葉は。


俺が納得するには十分だった。


「……いいだろう。」


結界が無くなり、ドラゴンの首が落ちた。










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