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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第二章

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第7話 固定観念

前にも同じようなことを思考したような気がするが、人間は感情に左右されやすい生き物だ。目の前に困っている人間がいれば助けたいという気になり、誰かにこぶされれば根拠のにないやる気がでる。人間はどれだけ合理的に行動しようとしても、熟考に熟考を重ねてもほとんど情が入る。それを無視できる人物は希少だろう。

余談はおいといて、村を出るギリギリでリギットが加わった俺たちは今……






途方に暮れていた。





別に、道に迷ったわけでも、旅路でトラブルに巻き込まれたとかそういうことでもない。では何故途方に暮れているかというと、目の前で正座しているこいつにある。


「まさか、ここまでとはね……。いや、当たり前っていっちゃあ当たり前なんだけど。」


元気枠で明るいリソルがしんみりする事態。何があったかというと、


「リギットがここまで動けないとは。」


「うっ……。ごめんなさい。」


そう、リギットが運動音痴なのだ。リギットは生まれてからずっと農家として生きてきた。だから戦えないのは否めない。そこは理解できる。なにが問題になるか?それはリギットの体力だ。

今俺たちは乗り合い所がある村の中間あたりで休憩をとっている。某カップルのこともあるため、早く進めたらいいのだがそうもいかない。リギットの体力が切れたのだ。日頃農作業で培った体力はいずこに?


問題は体力だけではない。普通に走ったりするといった運動もリギットはできていない。ここに来るまでに試してみたのだが、まぁ酷かった。運動音痴の極み一歩手前ぐらい。思い返せば、リギットが村の子どもたちと遊んでいるところを見たことがない。動けないのが、遊んでないからなのか、分かっているから遊ばないのかはおいておくとしよう。


一応、戦闘面も試してみたのだが、結果はお察しの通り。武器が扱えないのは当然。そんなことは分かっている。なにを試したかというと、回避能力等、攻撃ではないほうだ。俺が剣を使って正面から切りかかってみたり、リソルがこっそり後ろから殴ってみたり。俺の剣は避けれず尻もちをつき、リソルの拳はきれいに入った。近接はダメそう。


ただ、リギットは魔力への適応性がよさそうだからまだ救いはある。俺は常に自分の目に魔力を張っていて、それで魔力を見ることができる。ほとんど感覚だが。魔力は誰しもが持っているものだ。うまく言い表せないが、魔法が使える人間は体内にある魔力が引っ付いているというか、馴染んでいるというか……。磁石みたいなものだろうか?その引っ付き具合で魔法が使えるかどうかがおおよそ分かる。リギットはかなり癒着しているから、冒険者になるなら完全な後衛として育てるべきだな。加えて、短剣でも教えとけばいいだろう。

因みに某カップルは、タラトが剣と盾、リソルが拳というダブル前衛だとか。後衛のサポート無しにやってきているんだから大したものだ。


「とりあえず、このまま進むぞ。リギットに近接戦は無理そうだから、後衛で魔法でも使えるようになればいいだろう。」


「えっ。」


リギットの目が点になる。自分が魔法を使うことになるとは思ってなかったらしい。


「文句は言わせない。このままだと町に着いたところで何もできないからな。必用最低限身を守れるぐらいにはなってもらう。後は冒険者活動をしながら覚えればいい。そのためにも、へばってないで早く行くぞ。」


「う、うん!」


自分が魔法を使うことになるとは思ってなかったのか、突然元気を取り戻すリギット。農家の娘から魔法使いに転職となると、珍しいほうか。


俺は歩きながら話す。


「魔法を使うには魔力が必須だ。自分のなかにある魔力を知覚し、操り、ものにする。魔力を動かす、魔法に変える、魔法を操る。どれもそのイメージが無ければどう足掻こうが無意味だ。そのイメージが強ければ強いほど、強力な魔法使いになれる。威力面でも、技術面でもな。より確固たるイメージを創るために、まずは魔法という概念そのものを教える。」


「うん。……レイって魔法使えたんだね。もしかして、農作業が異常に手早かったのも?」


「なかなか鋭いな。正解だ。頭の回転は速ければ速いほどいい。魔法だけじゃなく、戦闘全般から日々の生活までな。」


俺の魔法は世間一般で知られているような分類がされていない。一部を除き名前がついている訳でもない。イメージという点において、こういったものは名前を付けないほうがいい。名前という形で、イメージが固定されてしまうからだ。これが常識、普通と呼ばれる。農家だから体力があると思ったようにな。一度定着したものを変えるのは難しい。名前を付けない分扱いも難しいが、応用の幅はこちらのほうが断然広い。


こうして、時々頭が沸騰するリギットに教えながら進んでいった。


そして昼頃。

俺たちは町に到着した。


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