第5話 漫才
「や、ち、ちが、違う。違うから!」
「ほーん?妙に怪しい反応するなぁ?」
リギット……。事実無根なんだから狼狽えず否定しろよ。
余計な先入観を植え付けかねないので、さっさと否定してしまおう。
「リソルさん。」
「ん?なんだいリギットのイイ人君。」
「私とリギットはそういう仲ではありませんよ。」
「えー?ほんとかなぁ?カレ君はそう言ってるけどどうなのリギット?」
「あ、うん。レイはちょっと事情が会って今ウチに住んでるの。」
「ふーん?ほんとかなぁ?」
「ほんとだって。」
落ち着きを取り戻したリギットが二人に説明する。リソルは興味深そうに、タラトはそんなことが、と驚いたように聞いている。どちらも印象通りだ。裏表はなさそうなカップルだな。
「なるほどなぁ。」
話を聞き終えたリソルが神妙な面持ちで聞いてくる。
「えっと、レイ、だったか?悪いが聞きたいこと、というか頼みたいことがある。急で困るかもしれないが、どうか聞いてほしい。」
ここで口を挟みそうなリギットは、リソルの只ならぬ様子を感じ黙っている。タラト君はきっと重要なことだ、とリソルを信頼しているような眼差しだ。
「レイ、頼むから……」
リソルが口を開く。何事だ?
「リギットを貰ってやってくれ!!」
「ぶっ!?」
リソルの雰囲気と合わない発言に、リギットが噴き出す。正直俺も同じ気持ちだ。
「ちょ。リソル何言ってんの!?」
リギットがまたあたふたし始める。せっかく落ち着いていたのに。
「だってよ。その話、リギットがレイを捕まえてきたっつう話にしか聞こえなかったんだよ。普段から一緒に作業してんだろ?それってもう夫婦での共同作業じゃねぇの?家でも外でも仲いいらしいしな。」
ついに笑い始めたよこいつ。どおりであの雰囲気の中、リソルの両親だけが和やかだった訳だ。
さてどうしたものか。
「私とリギットは友人として仲がいいだけですよ。恋仲とかでは決してありません。」
相手するのが面倒になる前に収束させてしまおう、という結論に達した。
「決して……。」
おいリギットなんで黙ってるんだ早く上乗せしろ。
「決して、ねぇ?その割にリギットの話してるときとか今の様子は……。どう見てもレイに」
「わー!!リソル黙って!」
今度は口だけでおさまらず取っ組み合いが始まった。が、それもすぐに終わった。家の中ということやタラトに遠慮してのことだろう。
「ま、今はこのくらいにしといてやるよ。レイ、同い年なんだろ?あたしもタラトも15だ。リギットに敬語使ってないんなら、あたしらにも軽く頼む。仲良くしようぜ?」
「そうか?ならよろしく。」
「レイさん。これからよろしくお願いします。僕はこれが癖のようなものなので気にしないでください。」
リソル、タラトと握手を交わす。リギットも敬語ではなくフランクに話せって言ってたな。やはり幼馴染も似るのか。
そこから6人で談笑を続けた。俺が拾われた詳しい経緯、リギットとリソル、タラトの昔、リソル親の近況、リソルとタラトの馴れ初め等々。中でもリソルとタラトの出会いから引っ付くまでの話はなかなか面白かった。リソルが惚れたその日から毎日アタックしていって最終的にタラトも惚れさせられたストーリーは、合間のギャグ(実話)もあり退屈しなかった。
そんな感じで長々と話し込んで、そろそろ帰ろうかと解散ムードが漂い始めた。
「そういえば二人はまた町に戻るんでしょ?いつぐらいにするの?」
リギットがふと思い出したように聞いた。リソルは少し考え込んで、タラトと視線を合わせる。
「特に決めてないんだよ。まぁ、別に長居はしないつもりだぜ。冒険者生活があたしらを待ってるからな!」
「そうだね。一度慣れてしまうと不自然に感じてしまうし、鈍るのも避けたいからね。」
「っじゃ、明日出発するぜ。」
「はやっ!?」
暴走列車カップル。即断即決爆速夫婦。あ、まだ夫婦じゃなかった。
タラトはリソルにだけ敬語を外す。惚れた相手以外は一定の距離を置きますってか
?とことん一途なやつだな。
二人が冒険者として活動しているのは、この村から離れた大きな町だったか。ちょうどいいや。
「リソル、タラト。二人がよければ付いて行っていいか?その町で冒険者ギルドまで案内してくれるとありがたい。」
「え?」
「……っ、え?」
リソルとリギットが似たような反応を返してくる。多少違っていた気もしたが。




