ダイヤと、月と、うさぎと
みんな帰ってしまった後、吉川さんと松本くんが、縁側で腰掛けて、月見をしていた。
「赤ちゃんが可愛かったね」
松本くんが携帯を開く。
「僕も写真を一緒に撮らせてもらったんだ」
赤ちゃんと、にっこり笑う松本くんの写真があった。
吉川さんが言う。
「本当に、子供が好きだよね」
「好きだよ」
吉川さんが尋ねる。
「颯太は、子供が欲しいの?」
「まぁ、そうだね」
「そうかぁ。私は、怖いんだよねぇ」
「何が?」
「赤ちゃんを産むのが。怖いんだよ」
松本さんがシュンとして言う。
「そんなに怖いの? ごめんね」
吉川さんは謝られた理由が分からない。
「なんで謝るの?」
「僕が産めたらいいのに」
松本さんは本当にそう思っていた。
吉川さん驚いて言う。
「颯太、それって、私の代わりにって事なの?」
「そうだよ」
吉川さんが、身悶える。
それで、松本さんが聞く。
「どうしたの?」
「それって、私とぉ。そのぉ、この生活の先を考えているって事だよね?」
松本くんが、隣に座る吉川さんを抱きしめて言う。
「考えているよ。僕は、愛海とずっと一緒にいたんだ」
吉川さんが「うん」って小さく言う。
松本さんが囁くように言う。
「だから、結婚しよう」
そして、松本くんは、ポケットから指輪のケースを出した。
吉川さんが驚く。
「いつの間に、買ったの?」
松本くんはバレッタを捨てた次の日に、宝飾店に出向いたのだが、それは言えなかった。
「何時だったかぁな。兎も角、注文して……。少し前に、出来上がってきて。15夜に、満月をみながらプロポーズしたいって思ってたんだよ」
吉川さんが聞く。
「でも何で急に結婚しようって思ってくれたの」
「僕は、愛海に、僕の愛の目印をつけたくなったんだよ。愛海は僕だけの愛海だって」
吉川さんが赤くなって言う。
「もう、ずっと私は颯太だけの、愛海だよぉ」
松本くんは、その言葉に興奮して、吉川さんにキスをした。
短めのキスの後、松本くんが月を見上げた。
吉川さんも、空を見上げて、月を見る。
抱き合いながら、空を見上げる2人。
「うさぎが僕らの婚約の見届人だよ」
「うさぎなのに、人なの?」
松本くんがにっこりする。
「ああ、そうかぁ。見届動物か」
松本さんが吉川さんにプロポーズした。
「結婚してくれる」
もちろん、答えはYESだった。
「よろこんで。これからもよろしくね」
「僕こそよろしく」
松本くんが、指輪のケースを開けて、指輪を取り出した。
指輪を吉川さんにはめた。
吉川さんが、松本さんに抱かれながら、指輪を眺めて言う。
「立て爪のシンプルな、ダイヤモンドの指輪にしたんだね」
「初めは若い店員さんも一緒に考えてくれたんだけど。最終的に、お店の年配の女性店員さんに、これならセンスや年齢も関係ないって、言われたんだよ」
「オバさん、最強説だね」
売り場で長らく働いているオバさんは、ここぞという時は、売るべき物を間違わない。
オバさん最強説。
松本さんが微笑みながら言う。
「結婚指輪は、愛海が選んで」
「分かった。そうする」
松本さんが言う。
「愛海と、いい思い出を重ねていきたな」
吉川さんが、頷いて。
月色に光る、指輪に触れた。
「そうだね」
松本さんと吉川さんが見つめ合う。
二人を、月のうさぎが祝福する。
松本さんが幸せそうに言う。
「愛海が、僕の幸せだよ。愛海、僕を選んでくれて、ありがとう」
吉川さんが、松本さんの腕の中で、小さく「うん」って言った。
それから、吉川さんは、もっと小さな声で、恥ずかしそうに言った。
「こちらこそ、ありがとう」
松本さんが、愛おしいそうに、吉川さんを見ながら言う。
「あいしてる」
吉川さんは、松本さんの優しい愛に包まれていた。
吉川さんは、幸せを感じながら言う。
「あいしてる。幸せをありがとう」
吉川さんの言葉に、呼応するかのごとく、指輪がキラキラと光った。
松本さんが光る指輪を見ながら言う。
「これからも、僕はずっと、愛海を幸せにするよ。そして、僕もずっと、愛海のお陰で幸せだと思うな」
――君が、僕の幸せ――
――僕は、君の幸せ――
それから二人は、しばらく縁側で、腰掛けながら、寄り添って。
空を見上げて、それぞれに、将来への思いをはせた。
月光が、明るく、二人を照らして。
すべてが月色に染まった夜の出来事だった。
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これにて、おしまい。
最後までお読みいただき、感謝したします。
エブリスタで新作あげてます
セクシャルマイノリティの話です
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