味問題を、男3人が語る
リビングのテーブルには、焼きそばと、お菓子が置いてあった。
熊さんが松本さんに聞いた。
「焼きそばを食べていいの?」
「どうぞ。愛海が焼いたんです」
熊さんが、平川くんにも、取皿を渡した。
川平くんがひとくち食べて言う。
「見た目と違って、旨い」
熊さんが言う。
「そうなんだよ。味は良いんだよ」
平川くんが言う。
「盛り付けが、雑ですね。皿から焼きそばが、はみ出てますよ。目玉焼きは、焼きそばの上に、折り重なって置いてあるし」
雑な平川くんまで、吉川さんの雑を嘆いた。
おもむろに熊さんが、平川くんに質問した。
「盛り付けが良くて、味が最低なのと、盛り付けが雑で旨い料理。どっちが良い?」
平川くんが、言葉の裏側に何かを感じる。
「なんかあったんですか?」
熊さんは焦る。
「ままままままま、なぁ。分かるだろう?」
平川くんは、おおよそ理解した。
「大変ですね」
「大変なのよ」
松本さんが熊さんに聞いた。
「自分で作らないんですか?」
「作るけど。そうなると、あっちが気に入らないんだ」
平川くんが嘆く。
「はぁ、料理の味問題は、結婚生活の、最初の難関ですね」
熊さんが平川くんに聞いた。
「山岡ちゃんとは、どのくらい付き合っているの?」
「まだ、2ヶ月……ですかね」
「え? それでもう揉めてんの?」
「まぁ、俺はたまにしか、手料理とかは食べないから良いんです」
熊さんが更に聞いた。
「山岡ちゃんの料理は、どうなっているの?」
「ヘルシーです」
熊さんは絶望の表情をした。
「ヘルシーカァ」
「雑穀米です」
「雑穀かぁ。あれボゾボゾするんだよなぁ。それに比べて、良いなぁ。松本氏は、雑料理でさぁ」
松本さんが言う。
「褒められている気がしません。でも僕は愛海の料理が好きですよ」
熊さんが、味を堪能する。
「俺も好きだよ。あー旨い」
平川くんも満足していた。
「旨いっすね」
「そうそう。目玉焼きも乗っているし。最高だな」
「目玉焼きの、下の焦げ焦げが良いですね」
「そうなんだよぉ。目玉焼きは、底にカリカリの焦げがあると、旨いんだよ」
「半熟の目玉焼きの黄身と、焼きそばを絡めて食べると、なお旨い」
「分かっているじゃなか! 平川くん。お前はこれから俺の友だちにしてやる」
「ありがとうございます」
「後でライン交換しよう。俺、ホルモンが旨い店を知ってるから」
「良いですね」
松本さんが焦って言う。
「僕も行きます」
そこに女たちが入ってきた。
華ちゃんが言う。
「あ、焼きそば」
山岡ちゃんが言う。
「吉川ちゃんが作ったの? 平川くん、美味しい?」
平川くんが答える。
「食べられなくは……、ない」
華ちゃんが熊さんに聞いた。
「美味しい?」
熊さんが答えた。
「まぁまぁだな。でも大したもんじゃないよ。あるから食べてやっているんだ」
吉川さんが怒る。
「もう、食べなくていいから。アンタたち! 無理して食べるな!」
松本さんが吉川さんをなだめる。
「まぁ、まぁ、まぁ」




