それでも、引き締まってからしか付き合えません
山岡ちゃんが恥ずかしそうに言う。
「私ね。子供産んでさぁ。お腹がタプタプのままなの」
平川くんは、その状況が、今ひとつ飲み込めない。
「お腹がタプタプってなに?」
山岡ちゃんが説明した。
「ほら、子供を妊娠すると、お腹の皮が伸びてさ。なんか緩んじゃって。そこがまだタプタプなの。それが引き締まらないうちは、ちゃんとは付き合えないよ。お腹を見せられない」
「そんなの平気だよ」
「だって、平川くんのお腹は完璧じゃん? だからそんな人に、私はお腹を見せられない」
「なんで、俺のお腹を知っているの?」
平川くんは、犯人が誰なのか、気がついた。
「あ!!!!!! 吉川のやつ!!!!!!」
「うん、見せて貰った。ねぇ、お腹みせて」
平川くんは意外に思う。
「え? 見たいの?」
「うん」
そして、ひとしきり、山岡ちゃんにお腹を触られてしまう。
山岡ちゃんがお腹を見て言う。
「いいねぇ」
平川くんも、そう言われてまんざらではない。
「そお?」
「うん」
平川くんは、お腹を触られて、山岡ちゃんと触れ合いたくなってしまった。
「なぁ、山岡ちゃん、俺、山岡ちゃんのお腹なんて気にしないよ」
しかし、山岡ちゃんは頑なだった。
「駄目、私は気にするから。ジムへ通うよ」
「ジム? 通うの?」
「平川くんと、同じジムに通っても良い?」
平川くんは、せめてもの願いを言う。
「通って良いよ。それより、ねぇ、お願い。ハグさせてぇ」
「え? ハグ?」
そして平川くんは山岡ちゃんをハグした。
そして聞く。
「ねぇ、俺は尊敬できるタイプじゃないけど大丈夫なの?」
「尊敬って?」
「尊敬できる男がタイプだって聞いたんだ」
「ああ、それ。もうその考えは捨てたんだよ。吉川ちゃんの彼みていたら、優しい人が一番だなって思うようになったから」
「俺、優しい? 優しいかなぁ」
「うん、優しいと思う」
「何でそう思うの」
山岡ちゃんは、些細な嘘をつく。
「それはね、私への触り方1つで分かるよ」
山岡ちゃんは、過去の付き合った男たちと比べたとは言えなかった。
平川くんが、息を呑んだ。
平川くんは、そんな事で分かってしまう山岡ちゃんに、恐れをなした。
だとしたらと、平川くんは思う。
――山岡ちゃんは、単純な俺のことは、全てお見通しに違いない――
平川くんは、山岡ちゃんに優しくしなければと、改めて決意した。
平川くんが言う。
「山岡ちゃんを、俺は大事にするよ」
「うん。あとね。私をこれからも笑わせてくれる?」
平川くんがおどけて言う。
「任せろ。いつだって笑わせるよ」
山岡ちゃんが笑う。
「あともう1つ問題があるの」
平川くんは、ちゃんと付き合えない理由が、まだあるのかと心配になる。
「まだあるの?」
山岡ちゃんが可愛く聞く。
まぁ、これは山岡ちゃんが甘えているだけで、可愛いふりをしているのはないのだが。
平川くんには、そう見えるから仕方ない。
ともかく、山岡ちゃんは、可愛く聞いた。
「まだあっちゃ、ダメなの?」
平川くんはデレっとして言う。
「いいよ言って」
「妊娠線がね、結構あるんだ。それが恥ずかしい」
雑な平川くんは、細かいことは、気にならない。
「だから、そう言うの俺は気にしないから」
「でも、恥ずかしいの。皮膚科行って薄くするよ。もう恋愛しないからいいかと思って。放置していてェ」
可愛いく言われて、再度平川くんはデレっとした。
こうして、二人は、しばらくはエッチ無しで、付き合うことになった。




