平川さんは呼び出された
元旦那さんが来た次の日、山岡ちゃんに呼ばれて、平川くんはのこのこやって来た。
平川くんは、あの日、なんとなく山岡ちゃんにフラれたと思っていた。
でも、呼ばれると、やっぱり来てしまった。
平川くんは、玄関で聞く。
「呼ばれて来たけど。家に上がっていいの?」
「いいよ。ねぇ、一緒に捨ててくれる?」
「何を?」
山岡ちゃんが、おむつや玩具を指さした。
それは大量で、平川くんも驚きの量だった。
「本当に全部、捨てちゃうの? 売るとかしたほうが良いんじゃない?」
「早いところ捨てないと、未練がまた募るからさ。思い切って捨てるよ。写真だけ残して、後はもう……」
「そうかぁ」
「うん。踏み出すことにした。でもそれは藍里を捨てたわけじゃなくて……」
「分かるよ。子離れだろう? かなり早い、子離れだ」
「うん。そう。その方が、たぶん藍里が幸せになれるから」
二人は子供の、大量の荷持を整理した。
すべて仕分けて、ゴミ袋に入れ終わって、山岡ちゃんがお茶とお菓子を出した。
山岡ちゃんが、平川くんに礼を言う。
「あの日ありがとう」
「いや、余計なことしたなって思ったんだ」
「ううん、平川くんのお陰で踏ん切りが付けたんだ。やっと先に進もうって思えた。あのままだったら、これからも2週間に1度、保育園に通ってたよ」
晴れ晴れした顔の山岡ちゃんに、平川くんが尋ねた。
「先に進むの?」
「そうだよ。今まで止まっていたから」
しんみりとした空気が漂う。
山岡ちゃんが不意に言う。
「ねぇ、平川くん。私と、一緒に進まない」
「え? それって……」
山岡ちゃんは照れる。
「告白の答えだけど」
「俺で良いの? 俺はもうフラれたと思っていたよ。あの日、返事を有耶無耶にされた感じで……」
「ごめん。ちょっとあの日は、それ何処じゃなかったの。分かるでしょう?」
「そうだね、まぁ、そうだね」
山岡ちゃんが、平川くんと付き合いたい理由を言う。
「平川くんの、人柄は前から知っていたけど。今回、平川くんに自分さらけ出したじゃない。それで、こんなに自分を見せられる人はいないなって。ほら私カッコつけの、優等生だから。本当の自分は隠しがちでさ。私って、プライドが高いんだよ」
平川くんはじっと山岡ちゃんの話を聞いている。
「私ね。平川くんなら、駄目な自分を、見せられると思ったんだ」
平川くんが、変顔して戯けて言う。
「おう、何でも見せてくれ」
山岡ちゃんがクスッと笑った。
「笑わせてくれてありがとう」
平川くんがニンマリして言う。
「いつだって笑わせるよ」
微笑みつつ山岡ちゃんが言う。
「それにね。実は、昨日元旦那が、家まで文句言いに来てさ。すごく悲しくなって。その時、会いたくなったのが、平川くんだった」
平川くんは感激した。
「俺に会いたくなってくれたの?」
「そうなんだよね。それで今日呼んだの。甘えて良いんでしょう?」
「嬉しいよ。ああ、甘えてくれよ」
山岡ちゃんの表情が濁った。
「ただ付き合うに当たって、ちょっと、お願いがあって」
「なに?」
山岡ちゃんは本気で照れている。
「あ――――、恥ずい」
「ねぇ、何?」
山岡ちゃんが条件を話し始めた。




