大丈夫って聞かれて
公園のベンチで、二人並んで座っていた。
「大丈夫?」
「ごめん、私に、付き合わせちゃって」
「俺が、一緒に来たがったんだからさ」
「何で、付いてきたの?」
「山岡ちゃんと、一緒にいたくて」
山岡ちゃんが、薄く笑う。
「私となんか一緒にいたいて言ってくれて、ありがとう」
「吉川だって、山本だって、山岡ちゃんと一緒にいたいと思っているよ」
「ありがとう」
山岡ちゃんが乾いた声で言う。
「子供に拒否られちゃった。子供に会いたかったのは私だけで、子供は私なんか、とっくに知らない人だった」
平川くんが慰めた。
「小さいから、仕方ないよ」
山岡ちゃんが続ける。
「子供を手放した時から、もう子供とは別の人生が始まっていたんだと思った」
平川くんが言う。
「大げさだなぁ」
山岡ちゃんが真顔で言う。
「大げさじゃないよ。別れて、違う人生が始まっていたのに、いつまでもそれを認めてあげなかったら、子供の人生の重荷になってしまう。それに私は気が付いたんだよ。早すぎるけど、もう子離れしなきゃならないんだって思った」
平川くんが自分の考えを言った。
「でもさ。藍里ちゃんもそのうち大人になって、山岡ちゃんに会いたいってもう日が来ると思うよ。それまで、山岡ちゃんは、自分の人生を思いっきり生きろよ。大人になった藍里ちゃんにあった時に、カッコいいママになっているように、頑張れば良いじゃん?」
山岡ちゃんがしんみりという。
「そうだね。娘に恥じない様に生きるしかないね。別々の場所で。お互い頑張っていくしかないね」
そう言い終わって、山岡ちゃんは少し黙っていた。
数分間が空いて。
山岡ちゃんが、また喋りだす。
「みっともないとこ見せて、ごめん。私すごく恥ずかしい」
しかし、平川くんは、みっともないと思わなかった。
「いや、俺、逆に親近感が沸いたよ。可愛いなって思ったし。俺でも、山岡ちゃんを守ってあげられるかもって思った」
山岡ちゃんには、意外な答えだった。
「親近感? 守ってあげられるかもって?」
平川くんはニコニコしながら言う。
「山岡ちゃんは、優等生で、何でもできちゃう人だったし。バリバリ仕事もしているし。それが弱い部分みて、萌えたっていうか。こんな俺でも、山岡ちゃんの役に立てる部分があるんじゃなかってさ」
山岡ちゃんは、不思議に思っていた。
「そもそも、私の何処が良いの?」
平川くんは即答した。
「気高い猫みたいなところかな」
山岡ちゃんが吹き出す。
「なにそれ?」
平川くんがニンマリして言う。
「吉川が犬なら。山岡ちゃんは猫ちゃんだろう? 俺は、犬は友だちになりたいけど、猫とは恋人になりたいんだ」
山岡ちゃんがボロボロ涙を流しながら言う。
「確かにね。私って猫みたいかも。お高く止まって、高みから見物して。弱みを見せないようにして」
平川くんが言う。
「気高い猫に、自分だけが甘えられると、めっちゃ嬉しかったりするだろう?」
山岡ちゃんが泣きながら言う。
「ねぇ、だったら、ちょっと肩を抱いてもらっていい? 少しだけ、温もりを貸して欲しいの 」
そう言われて、平川くんが、山岡ちゃんを抱き寄せて、涙を拭いた。
平川くんが言う。
「たまには、人に甘えろよ」
山岡ちゃんが答える。
「吉川ちゃんには甘えているよ」
平川くんが変顔で言う。
「俺にも甘えて良いんだぜ」
山岡ちゃんが、泣きながら笑った。




