平川くんの告白
スネ子と対決した次の日だった。
平川くんが言う。
「電話して、すぐ会ってもらえるなんて、思ってなかったよ」
山岡ちゃんが言う。
「うん、今日は、用事があってさ。早めに退社する日だったから。少しなら会えると思って。それで、大事な話ってなに?」
「俺、山岡ちゃんが好きで……」
意外な告白に、山岡ちゃんはびっくりした。
「え、知らなかった。吉川ちゃんが好きなんじゃなかったの?」
平川くんが語気を強めて言う。
「違うよ」
「昔から仲いいじゃん」
「違うよ。あれは友だちだ」
「え? そうだったの?」
「そうだよ。あいつって、なんか女を感じないから。中身がオバさんみたいだろう? 職場の気がいいオバさんって感じする」
「う――――ん。でもね。それは吉川ちゃんの一部だよ。案外可愛んだよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
平川くんが、照れながら言う。
「なぁ、山岡ちゃん。俺、お前が好きなんだ」
「いつからよぉ」
「高校の時だよ」
山岡ちゃんには、意外な話だった。
「知らなかったな。すっかり吉川ちゃん狙いだと思ってた」
「吉川は美人だから、モテたけど。俺は、ずっと山岡ちゃんが好きだったんだ」
山岡ちゃんは、気になって聞いた。
「そうなんだ。でも未だに、私が好きなの? 確か最近まで彼女いたよね?」
「フラれた」
「そうなの?」
「ああ」
山岡ちゃんは、理由が知りたい。
「また何でフラれての?」
「好きな人が出来たから、別れてってさ」
「ほう? 何処でその男と知り合ったんだろうね?」
「友だちの紹介だって」
山岡ちゃんは思う。
(婚活アプリだな。いい男を、女が女友達に絶対、紹介しない!)
けれど山岡ちゃんは、心と裏腹に「そうなんだぁ」と言った。
平川くんが自分のお気持ちを主張した。
「恋人にフラレて、そしたら山岡ちゃんが離婚したって聞いて。俺さ。チャンスだって思ったのよ」
「チャンスってぇ……。私はかなりこの離婚で、落ち込んだし、悩んだんだよ」
平川くんは本気で悪かったと思った。
「ごめん」
山岡ちゃんに、平川くんの。その気持ちが伝わった。
「いいよ。許すよ」
山岡ちゃんがソワソワしだした。
「それより私、これから行くところがあって……。だから今は、付き合うとか、恋愛とか、考えられなくて」
「何処に行くの?」
山岡ちゃんは言いにくい。
「それを言ったら、きっと引かれると思うんだ」
「何処? 言ってよ。俺絶対引かない自信がある」
「本当かな? 嘘くさい」
「俺は、嘘くさい男だが、そこまで嘘はつかないぞ」
「なにそれ。ウケる」
「なぁ。言ってみなよ」
山岡ちゃんは真剣な顔になる。
「吉川ちゃんにも、私言ってないんだよ」
「マジ?」
「うん、引かれそうで」
「俺は大丈夫だよ」
山岡ちゃんが言いにくそうに言う。
「保育園に……、行くんだよぉ」
平川くんは、状況が理解できない。
「保育園って、山岡ちゃんは、子供はもういないんだろう?」
山岡ちゃんが悲しげに言う。
「いないけど。いるよ」
平川くんが聞く。
「そうだけどぉ。もう会えなくなったんだろう?」
山岡ちゃんは思い詰めている様子だった。
「でも、会いたい」
「そうかぁ。会いたいのかぁ」
「引いたでしょう?」
平川くんは、平川くんなりに、山岡ちゃんの気持ちを理解した。
「引かないよ。俺がたぶん、山岡ちゃんに拒絶されても、山岡ちゃんに会いたくなるって思う。だから山岡ちゃんの気持ちは、分かる気がする」
山岡ちゃんは、平川くんの話と、自分の話は違うと思いながら、感謝した。
「そうかぁ、ありがとう」
「行こうぜ。保育園に」
「え? 一緒に来るの?」
「ああ、行くよ」
山岡ちゃんは、ためらう。
山岡ちゃんは、”でも”と思う。
山岡ちゃんが、平川くんの顔を見る。
そして言う。
「……うん、じゃ、一緒に行こう」
二人は、保育園に向かった。




