ピンポーン、ドアチャイムの音は鳴った 2
スネ子が、忘れ物のメガネ差し出した。
それで、平川くんが、受け取ろうと手を伸ばしのだが……。
平川くんの手の、少し先で、メガネが滑り落ちる。
平川くんが「あっ」と言った。
平川くんは、わざとメガネが落とされたのだと思った。
落ちたメガネを平川くんが目で追う。
メガネがコンクリートの地面に落ちて、その場で小さく弾む。平川くんがメガネを拾おうとして屈んだ。
しかし屈んで、メガネを掴もうとした時。メガネは踏まれた。
靴がメガネを踏みつけた。靴の主はスネ子だった。
平川くんは、屈んだまま顔をあげる。
スネ子が鬼の形相で、メガネを見ていた。スネ子の足は止まらない。
メガネは何度もスネ子に踏まれて、グニャグニャになった。
踏みつけ終わった後、満足そうに「フン」とスネ子が言った。
スネ子が声高らかに言う。
「いらないって言ったよね? 捨ててくれって言ったよね? だったら壊しても文句ないよね?」
平川くんは呆然とスネ子を見る。スネ子が高らかに言った。
「帰る。さよなら。今度私に会ったら、知らない人のフリして」
スネ子はグングンとアパートの通路を階段に向かって歩いていく。
まるで軍隊の行進みたいに。堂々と勇ましく歩いて行く。
その様子を見ながら、吉川さんが言う。
「よく分かんないけど……。スネ子がかっこよく見えた」
山本くんもそう思った。
「確かにそうだな」
平川くんが、メガネを見ながら言う。
「俺の眼鏡がぁ。大破したぁ」
山本くんが言う。
「まぁ、メガネ2本で、諦めてくれたから。良かったじゃないか?」
吉川さんが携帯を見た。
「ああ、私、帰る。颯太から今、メッセージ入ったァ。今日約束してたの忘れてたァ」
平川君が言う。
「え?また約束忘れてたんの?」
吉川さんが言う。
「私って、忘れぽいからさぁ。じゃ、また。まぁ、良かった。終わってさ」
吉川さんが小走りに帰って行く。
平川君が吉川さんを見送りながら言う。
「吉川って、すぐ忘れるからなぁ」
平川くんが、山本くんに聞く。
「山本はどうする。俺は、メガネを買いに行くけど。2個いっぺんに壊れたからさ」
「俺は帰るよ。なんか、どっと疲れたよ」
山本さんも駅に向かってあるき出した。
皆いなくなって、平川くんは一人残された。
平川さんは、一人になって、心底ホッとしている自分に気がつく。
――あぁ、良かったぁ。終わった――
そして思い出すのは山岡ちゃんの事だった。
平川くんは思った。
――山岡ちゃんに、会いたいな――
平川くんは、無意識レベルで、電話してしまう。
5コールした時だった。
「はい、山岡です」
平川くんが、今一番聞きたい人の声がした。
平川くんが言う。
「山岡ちゃん。会えないかなぁ」
山岡ちゃんが、電話の向こうで、喋った。
平川くんは、電話に耳を押し当てて。
山岡ちゃんの声を聞いた。




