ピンポーン、ドアチャイムの音は鳴った 1
同窓会から一月後。
吉川さんは、平川くんのアパートの部屋にいた。
もちろん山本くんもいる。
「何で私まで、呼ばれたの?」
平川くんが言う。
「仲間だろう?」
「え――。でも今日はスネ子と対決するんでしょう? 怖いじゃん」
「俺も怖い辛さ。友だちの力がないと、俺は頑張れない」
山本くんが言う。
「もう、そろそろ自立しろ。平川ァ」
「そうだよ。いつまでも高校生じゃないんだよぉ」
すると、ピンポーンとドアベルがなった。
3人で、モニターを見た。
モニターに映ったのは、当然スネ子だった。
平川くんが言う。
「な?来ただろう?」
吉川さんが眉間にシワを寄せて言う。
「本当だ。どうするの」
山本くんが励ました。
「頑張れ、平川。ケリをつけるしかない」
平川くんが、目に力を入れる。
「そうだよなぁ」
吉川さんも励ました。
「自分で巻いた種は、自分で刈るしかないよ」
「うん。俺、頑張ってみる」
意を決して、平川くんが、アパートの戸を開く。
すると、リアルスネ子が、満面の笑みで、平川くんを見る。
「あ、やっと出て来たァ」
スネ子が喋った瞬間、平川くんが言う。
「ごめん」
スネ子は、驚く。
「え?」
平川くんがハッキリという。
「俺、永井に全く興味ないから」
スネ子は可愛いふりをして言う。
「でも一緒にあの日うちに来て……」
「でも俺は、永井に何もしてないし」
スネ子の顔色が変わる。
「本当にそう思うの?」
「だって俺、ズボン穿いたままだったし」
スネ子の表情がみるみる険しくなった。
「確かに最後まではしなくても、色々したじゃん」
それを聞いていた吉川さんが、平川くんの背後でいう。
「色々したらしいよ」
山本くんが言う。
「そうだな」
スネ子が、吉川さんと山本くんに気がつく。
「何であんたたちがいるの?」
吉川さんが答える。
「いやぁ、遊びに来ていて」
スネ子の顔は、醜く歪んだ。
「まさか、吉川さんと、平川くんが付き合っているとか?」
吉川さんは、平川くんとスネ子の問題に、巻き込まれたくない。
だから激しく否定した。
「ない、ない、ない、ない。ないから」
スネ子が平川くんを見る。
「ねぇ、あの日あんな事になったし、付き合おうよ。私たちさぁ」
平川くんが、スネ子を拒絶するように言う。
「付き合えないよ。駄目だよ。許してくれよ。それは謝るけど。好きじゃないんだ」
スネ子の声が大きくなる。
「好きじゃないのに、あんな事したの?」
吉川さんが、平川くんに聞いた。
「あんな事って何したの?」
山本くんも気になっていた。
「気になるなぁ」
平川くんが、釈明した。
「いや、俺、多分何もしてないと思う。すごく酔っていて、上手く歩けないほどだったと思うから」
山本くんもそれは同意見だ。
「男はそうなると、何も出来ないよなぁ」
「そうだろう?」
スネ子が怒る。
「全部忘れて、全部酔ったせいにするの?」
吉川さんも、スネ子に賛同した。
「それは良くないね」
平川くんが吉川さんに文句を言う。
「おい吉川! お前はどっちの味方だよ」
吉川さんが、仕方なく援護射撃した。
「永井さん。平川は、永井さんが、異性として好きじゃないって言っているし。もうやめなよ。無理強いしても、上手く行かないよ」
スネ子が吉川さんを見る。
「大きなお世話よ。何よ! あんたたち、か弱い私1人に、3人かかりでぇ!」
吉川さんが言う。
「好きじゃないって言われて、無理強いして付き合っても、寂しいだけだよ」
平川くんも言う。
「もう、俺のこと、諦めて帰って!」
スネ子が叫ぶ。
「酷い! 酷いよ!」
そう言いながら、スネ子が平川くんに、掴みかかろとした。
それを平川くんが避けたので、平川くんの後にいた吉川さんへ、スネ子がブチ当たってきた。
吉川さんが叫ぶ。
「きゃぁ」
しかし、吉川さんにスネ子は、ぶつからなかった。
スネ子が吉川さんにぶつかる直前で、山本くんがすね子を、アパートの外に向かって弾いたのだ。
弾かれたスネ子は、玄関の扉まえのコンクリートの地面に、尻餅をつく。
スネ子は、酷く、心が傷ついた。
「酷い。女の私に、暴力を奮って……」
山本くんが言う。
「さきに、暴力を振るうからでしょう?」
スネ子は繰り返す。
「酷い……」
平川くんが、サンダルを履いて、スネ子の側に行く。
「立ちなよ。パンツが丸見えだよ」
スネ子が、スカートを引っ張って、パンツを見えなくする。
スネ子は、それからソロソロと立ち上がって、平川くんを睨んだ。
そして次の瞬間、スネ子は平川くんの顔をビンタした。
ビンタされて、平川くんのメガネが飛んだ。
メガネは、勢いよく、遠くまで飛んでいく。
平川くんは、あまりの衝撃に、口が聞けなかった。
その場で、平川くんは立ちすくし。
スネ子は、真っ赤な顔で平川くんを睨みつけていた。
その間に、吉川さんが、靴を履いて玄関から出ると、通路に落ちたメガネを拾いに行った。
吉川さんが、メガネを拾い、戻って言う。
「歪んでる。きっともう使えない」
確かに、眼鏡はもう、復活しないだろうと、平川くんも思った。
平川くんがメガネをみて言う。
「あ、スペアーのメガネまでなくなった……。ヤバい」
すると、スネ子が、平川くんの忘れて行ったメガネを出した。




