表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/64

熊さんの家出


 突如、熊さんが、吉川邸にやって来た。

 そして言い放った。

 「もう耐えられない」


 居合わせた松本さんが、熊さんに理由を聞いた。

 熊さんが言う。

 「喧嘩して以来。無言なんだ」


 吉川さんが尋ねる。

 「無言って、無言ぐらいで何が耐えられないの?」

 熊さんが言う。

 「もう2週間、華ちゃんは俺と口を聞いてくれない。俺は華ちゃんの声も聞いてない」

 吉川さんが驚く。

 「え? 長いね」


 熊さんは心底、華ちゃんの無言の圧力が、耐えられなかった。

 「そうだろう? もう一緒の空間にいること出来ない。頼む。部屋は開いているだろう?置いてくれ」

 

 吉川さんが困ったように言う。

 「部屋はあるけど。仏壇がある部屋で……。もしくは物置部屋しかないけど。それに颯太が嫌がるよね?」

 熊さんが松本さんにお願いする。

 「置いてくれ、頼む」


 松本さんが念を押した。

 「熊さんは、結婚しているし、赤ちゃんも産まれるんですよね?」

 「ああ、後1月くらいで……」

 「じゃぁ。僕の愛海に悪さしないですよね?」


 吉川さんは、松本さんの小さな言葉を、逃さない。

 「僕のだってぇ……。僕の愛海だってぇ」

 松本さんが赤くなる。

 「だって、そうだろう」

 それからモジモジした。


 熊さんがいちゃつく2人を見て言う。

 「悪さなんかしない。絶対にしない。そんなキショい会話している二人の間に、俺は割り込む勇気がないから」


 松本さんが熊さんに言う。

 「だったら、1週間位なら良いですよ。1週間経つまでに、仲直りして帰ってくださいよ」

 熊さんが約束した。

 「分かった。恩にきる。本当に品行方正に勤めるからさ。それに今俺は、女絡みのトラブルは避けたいし。俺は友達の女には手をつけないから。松本さんは俺の友達だからな」

 

 熊さんは男の友情に厚い。

 それは松本さんが知っている。


 松本さんが吉川さんに言う。

 「熊さんがいる間は、ちゃんと服を着るんだよ」

 「うん」


 熊さんが驚いて聞く。

 「吉川は、まだ下着で家の中をフラフラしているのか?」

 吉川さんが頷く。

 「そりゃしているよ。駄目なの? 私んちだよ。自由じゃん?」

 熊さんが吉川さんに意見した。

 「そうかも知れないが。そろそろ止めたほうが良いぞ。カーテンもハジまでちゃんと閉めないと、外から見られるぞ。俺はそれが嫌で、カーテンをいつも閉めまくっていたし。レースカーテンだけだと、夜は外から透けて見えるだろう? だから俺は、木も……」


 吉川さんが聞き返す。

 「え? 木?」

 熊さんが言葉を濁す。

 「いや、いいんだ」


 それを聞いていた松本さんが、慌てて、カーテンの透け具合を見に行ってしまった。


 熊さんが言う。

 「置いてくれてありがとう」

 「いいけどぉ。1週間だけだよ」


 熊さんが意外な事を言う。

 「分かっている。直ぐにアパート見つけるよ」

 「え? 華ちゃんは?」

 「生活費を入れたらいいだけだろう? 華ちゃんは、俺なんかいなくても、写真を撮って、アップしていたら満足なんだ。目の前の俺より、目の前のモチーフが大切何だと思うよ」

 「え? 何言っているか分かんないよ。分かるように言って」

 

 熊さんは会話を拒絶する。

 「ごめん。もう俺は疲れた。部屋使っていい? 寝たいんだ」


 熊さんは、そのまま仏間に籠もってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ