恐怖に震える会議
吉川さんは、同窓会の2週間後、また居酒屋にいた。
隣には平川くんと山本くんがいる。
吉川さんが聞く。
「それで、私はなんでまた呼び出されているんですか?」
平川くんが、枝豆を食べながら言う。
「仲間だろう?」
吉川さんが否定した。
「だからぁ、仲間じゃないから」
平川くんが携帯画面を見せてきた。
「それよりこれを見てくれ」
吉川さんは、携帯画面をガン見した。
「なに?え? スネ子? え? 怖いんだけど、このスタンプ」
可愛い猫キャラが、ハートの花が生けられた花束を、持っているスタンプだった。
「何で、こんなスタンプがぁ。恋人なら分かるけど……。絵文字にハートも……。しかして付き合っているの?」
平川くんが必死で否定した。
「付き合ってないよ。恋人じゃないよ!」
それはそうだろうと、吉川さんも思う。
「そうだよね。じゃぁ、何か誤解させる事でも、スネ子に何したの?」
躊躇うように、平川君が言う。
「同窓会の後、気がついたら、スネ子のアパートで、スネ子を腕枕してして寝ていた」
吉川さんがびっくりして言う。
「え! 何でそうなったの?」
平川くんが説明する。
「お前たちが去った後、スネ子が現れて、山岡ちゃんがスネ子に追い払われて……。気が付いたら捕獲されていた……」
吉川さんが憐れんだ。
「ヤバい奴じゃん」
「ヤバいんよぉ」
「スネ子と、エッチしたの?」
「してないと思う。ただ思うだけで、覚えてないんだよなぁ」
平川くんが頭抱えた。
吉川さんが新たな情報を提供した。
「そうかぁ、スネ子って、高校の時、平川の事好きだったじゃん?」
平川くんは知らなかった。
「え? そうなの? 知らなかったけど」
今更吉川さんが文句を言う。
「お陰で私はいい迷惑よ。高校時代は、結構嫌がらせ受けたからさぁ」
平川くんは困った。
「高校の時、話しかけてくるなとは思っていたけど……」
山本が言う。
「平川は、バスケやっていたから、あの当時はモテたじゃん。全国大会も出たし。だからじゃないか?」
平川くんが懐かしげに言う。
「俺の全盛期だった。今は全くモテない」
山本くんが考えながら言う。
「俺はそう言うのないから、どんなものなのかとは思う」
平川くんが力説した。
「なまじ激モテ経験があると、それが忘れられなくて、苦しむぞ」
大きくモテた経験のない山本くんにはピンとこない。
「うーん。そう言うものなのかぁ。でも好きじゃない女の子にモテても、面倒なだけだけどな」
その間、スネ子から送られてきたスタンプやメッセージを見ていた、吉川さんが言う。
「やっぱりさぁ。スネ子は平川と、スネ子の脳内で、既に付き合っているんじゃないの?」
平川くんは心底困っていた。
「実は、それよりもっと……、困った目にあっているんだ」
「何?」
「それがぁ……、スネ子が俺の家に訪ねてくる」
「え? 家に? 平川の家に、スネ子が来るの?」
平川くんが困り顔で言う。
「どうやらスネ子は、勤め先の新宿で仕事が終わってから、俺のアパートまでやってくるらしい。そうすると、18時半くらいになるらしく……。18時半になると、ピンポーンって鳴るんだ。最初にスネ子が来たときは、俺は寝ていて、部屋の明かりがついてなくて救われたんだけど……。それから俺は怖くて、部屋の明かりが付けられない」
「何をしに、スネ子は来るの?」
「うーん。どうもメガネを返しに来てくれているらしい」
吉川さんは平川くんの顔を見て言う。
「でも今もメガネをかけているじゃない?」
「スペアのメガネだよ」
冷静に山本くんは言う。
「メガネを返しに来るのは、口実だろう? そんな理由で毎日平川のアパートに来ないだろう?」
「たぶん、そうだと思う」
流石の吉川さんも怯える。
「家に押しかけるって。怖いんだけど。毎日来るの?」
「俺も仕事で、その時間いるとは限らないから、確かではないけど……。でもその時間、俺がアパートいるときは、たいてい来るんだ。だから毎日来ているんじゃないかと思う」
吉川さんが顔をしかめる。
「ヤバいね」
「そうなんだよぉ。なぁ、俺どうしたらいい?」
吉川さんが提案する。
「もう、付き合うしかないんじゃない?」
「やめて。お願い、そう言うの言うのやめて」
「でもぉ、平川の身から出た錆じゃん?」
「何もしてないから」
疑いの目で吉川さんが見た。
「ほんとうだから。それに、していたとしても、スネ子とは付き合わないから」
「う――――ん。じゃぁ、ちゃんと断りなよ。好きじゃないってさぁ」
「俺、怖いよ。スネ子にそんな事言うのさ」
「じゃ、どうするの?」
「あ、俺、どうしよう?」
吉川さんが言う。
「チームやクラス、そして山本くんの問題も、いつも平川が解決してるじゃん。自分の問題は解決出来ないの?」
平川くんが言う。
「面目ない……。いざ自分の事となると、難しいよなァ」
山本くんが言う。
「キッパリ断れ、平川!」
平川くんが山本くんを見る。
「山本方式は、揉めるからなぁ」
平川くんが、がっくりと肩を落とした。




