表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/64

お持ち帰りされる


 朝、目が覚めると。

 そこは平川くんの、知らない部屋の中だった。

 平川くんはベッドの上に寝ていた。

 

 「重い。腕が痺れている」

 平川くんの腕が麻痺していた。

 それで、自分の腕に乗っている、何かを見た。


 スネ子の頭だった。

 平川くんの背筋に、電気が走る。


 平川くんは、危険を察知して、そっとスネ子から腕を引き抜いた。

 それからあたりを確認した。


 昨日着ていた、上着とシャツは、床に転がっていた。

 しかし、ズボンは履いていた。

 おろしたての硬いジーンズだったのが、幸いしたのだろう。山岡ちゃんに同窓会で会うために、ジーンズショップで、万札を2枚も叩いた、ジーンズのお陰だった。


 平川くんは、ジーンズに感謝した。

 ――ズボンを脱がずに済んだ――

 ――ありがとう――


 平川くんは、心底ホッとした。

 それから、床に足をおろして、音をたてないように、シャツと上着を着た。

 テーブルの上に置かれていた、平川君の携帯と鍵、そして財布を、ズボンや上着のポケットに突っ込んだ。



 平川くんがスネ子の様子をうかがう。

 スネ子は、昨日飲みすぎたのか、全く起きる気配はない。

 スネ子の様子を確かめつつ、平川くんは素早く部屋を出た。

 オートロックだったから、勝手に鍵がかった。

 

 建物の外に出ると、見知らぬ町並みだった。

 平川くんは、携帯で自分の位置を確認した。

 

 「町田かぁ。俺今町田にいるのかぁ。帰ろう……。駅まで遠いなぁ。家につくのに、1時間かかるなぁ」

 平川くんは、携帯の地図を頼りに、駅に向かった。


 すると、携帯に電話がかかってきた。

 画面を見て、平川くんは、立ち尽くした。スネ子だった。電話に出ないと、ラインメッセージが入る。


 「メガネ忘れていったけどぉ」

 

 スネ子からのメッセージに、メガネがない事に気がつく。

 「メガネ? あわぅ。メガネ? ない。ない。ああ、忘れたんだぁ」

 携帯画面を見ながら、平川くんは思う。


 ――メガネはいらない――


 ラインに書き込んだ。

 「メガネはいらない。捨ててくれ」

 

 スネ子から、即レスがある。

 「え――。でもまだ新しいよね? もったいなくない?」


 平川くんが固辞する。

 「いらない。捨ててくれ」


 スネ子は、持って来る気満々だ。

 「今何処にいるの? 持って行ってあげるよ」


 平川くんは、またも固辞する。

 「いや、いらない。もう良いから、捨ててくれ」


 スネ子は頑張る。

 「今日が駄目なら、後で会おうよぉ」


 平川くんはスタンプを送った。

 「さよなら」


 スネ子がスタンプを返してきた。

 「またね」


 スネ子のまたねが、平川くんの脳の中でこだました。


 ――またね。またね。またね――


 平川くんの背筋に、また電流が流れた。

 ――ヤバい、ヤバすぎる――


 それから平川くんは昨日の夜を思い出す。


 ――俺、大丈夫だよな。何もしていないよな――

 ――酔っていたとはいえ、スネ子なんかと寝たとなったら、俺のバカさは、世界一だと思う――


 そして山岡ちゃんを思い出した。


 ――山岡ちゃん。俺シクッたみたい――


 トボトボと、平川くんは駅に向かった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ