表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/64

高速と夜景と、アクセルと


 2次会をした店の外に、吉川さんはいた。

 すぐに山本くんも、吉川さんの隣にやってきた。


 吉川さんが言う。

 「うまくいくかなぁ?」

 「さぁ、どうかな?」


 吉川さんが、山岡ちゃんにメッセージを送る。

 ”用事が出来たから、先に帰るね”


 吉川さんは、メッセージを送ると、山本くんに言う。

 「はぁ、20時過ぎかぁ。なんかしょうもない同窓会になったね。同窓会では、何も食べてないし。同窓会の会費は、払い損になったしなぁ」

 「そうだな」

 「帰る?」

 山本くんがサラって言う。

 「うん、送っていくよ」

 「え?良いよ。電車の線、違うじゃん?」

 「俺、今日車だから」


 吉川さんは、山本くんがビールを飲んでいたのを見ていた。

 「あれ、ビールを飲んでいたよね?」

 「ノンアル飲んでた」

 そこで、吉川さんは疑問に思う。

 「なんで今日は車で来たの?」

 「どうしてだろうなぁ?」

 「う――――ん」


 ”車で来た訳なんて”

 ”きっと吉川さんには分からない”


 山本さんが言う。

 「ここから5分くらいの場所に停めてあるから、一緒に行く? それとも俺だけ行って、車で戻ってこようか?」

 「本当に送ってくれるの?」

 「ああ、ついでに高速乗ろうよ」

 「え? 高速?」

 「夜景が綺麗だよ。新宿から乗って、首都高を少し回ろう。それから中央道に乗ろう」

 「いいねぇ」


 二人は駐車場に向かってあるき出した。

 通りすがりにコンビニが見えた。

 吉川さんが聞く。

 「何かコンビニで飲み物とか買う?」

 山本くんと吉川さんが、コンビニに入る。


 吉川さんが菓子パンと紅茶を手にした。

 籠を持っていた山本くんが言う。


 「それ、俺の籠に入れろよ」

 「え? でもぉ」

 「面倒だろう? 一緒に払うから」

 「そうなの?」

 「うん、入れて」

 籠に菓子パンと紅茶が入る。


 吉川さんがレジ脇でお菓子を見つける。

 山本くんが聞く。

 「チョコステックが欲しいの?」

 吉川さんが恥ずかしげに「うーん」と言った。

 

 山本くんが言う。

 「チョコステックも買おう」

 山本くんが、篭にチョコステックを入れる。

 吉川さんが嬉しげに小さく微笑む。

 

 山本くんが会計した。

 山本くんがレジ袋を持って、その隣を吉川さんが歩く。


 美人の吉川さんは、男たちにチラ見されていく。

 その様子に、山本くんが言う。

 「いい気分だな」


 吉川さんが言う。

 「そうだね」

 吉川さんは、単に気分が良かっただけだった。


 二人のいい気分は、違ういい気分だったけど。

 でも、二人共、ご機嫌には違いなかった。


 二人は駐車場に着き、運転席に山本さんが、助手席に吉川さんが乗った。

 車は、一般道を走り、直ぐに高速に上がった。

 山本さんは、車を走らせる。

 東京の夜景が、矢のように通り過ぎていく。


 吉川さんが言う。

 「夜景が綺麗だね」

 山本さんは、横目で吉川さんを見て言う。

 「ああ、綺麗だ」


 二人の綺麗だと言った、対象物は、違っていたけど。

 

 夜景は途切れること無く続き。

 吉川さんが言う。

 「最近、夜景とか見てなかった。見せてくれてありがとう」

 山本さんが言う。

 「うん、俺もだよ。見られてよかった」


 ”山本くんは、そのセリフに、吉川さんと、と言う言葉は加えなかった”


 吉川さんが聞く。

 「コーヒー飲む?」

 山本くんが、運転しながら、横目で吉川さんを見る。

 「ああ、でも……。運転してちゃ、ストローがさせないし……」

「任せて!」

 吉川さんが、山本くんが買ったコーヒーのパックに、ストローをさす。

 吉川さんが、ストローをさしたコーヒーパックを、運転している山本くんの口付近に差し出した。

 山本くんは、吉川さんの手に持たれたコーヒーパックから、少し戸惑いながら、コーヒーを飲んだ。


 山本くんはコーヒーを、数口飲んで言う。

 「ありがとう。もう良いよ」

 吉川さんはコーヒーパックを、山本くんから離す。

 吉川さんが、聞く。

 「お菓子食べる」

 吉川さんが、チョコスティックを持っていた。

 山本くんは、普段お菓子は食べない。

 

 それでも、山本くんはチョコスティックを、チラッと見る。

 「チョコスティック、美味そうだな。くれよ」

 吉川さんが、山本くんの口に、チョコステックを運ぶ。

 山本くんは、吉川さんに、チョコステックを口に入れてもらって、そして食べた。


 吉川さんが聞く。

 「美味しい?」

 「すごく、美味しい」

 

 山本くんは、好きじゃないお菓子が美味しかった。

 吉川さんが喜ぶ。

 「良かった」


 山本くんは、助手席の吉川さんを、ぼんやりと感じながら言う。

 「チョコステックを、久しぶりに食べたよ」

 「そうなの?」


 山本くんが言う。

 「チョコステックって、美味かったんだな」

 吉川さんが笑う。

 「そうだよ、美味しいよ」

 

 そして車は、20分ほどの首都高の回遊から、中央道へと進路を変える。

 中央道を快適に走り、20分ほどで府中インターの出口が見えてくる。

 府中インターで降りて、ランプウェイを通って、一般道に戻る。


 それからしばらく一般道を走り、程なくして、車は吉川邸の前に着く。

 吉川さんが車から降りて、運転席の山本くんと話をしていた。

 すると玄関から、松本さんが出てきた。


 松本さんが二人に声をかけた。

 「送ってもらったの?」

 吉川さんが言う。

 「そう、たまたま山本くんが、同窓会の会場に車で来てたから」

 松本さんが言う。

 「呼んでくれたら、僕が迎えに行ったのに」

 

 山本くんが言う。

 「ついでだったんで……。じゃぁ、俺はそろそろ。またな、吉川ちゃん」

 山本さんが、人の心を溶かすような笑顔で、にっこり笑う。

 吉川さんが頷き、手を振った。

 

 車はゆっくり走りだす。

 

 松本さんは、吉川さんに、密着するほど、側に立った。

 

 車を運転する山本くんは、バックミラーに目をやる。

 そして、独り言を言った。

 「手を、繋いでいる」


 山本くんは、アクセルをふんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ