2次会へ行く
同窓会の店を後にして、結局、別の店で飲み直すことになった。
4人がけの狭い席で、4人は他愛のない話をしていた。
いい感じで昔話をしていると、突如吉川さんが携帯を見る。
「あ、電話だぁ。席外すね」
”電話は嘘だった”
吉川さんが席を立つと、山本くんが言う。
「俺はそろそろ帰ろうかなぁ。明日早いんだぁ。平川、俺の分払って置いて。後で振り込むからさ」
”明日早いのも嘘だった”
平川くんが答えた。
「分かった」
”これは、事前会議の結果、仕組組んだことだった”
山本くんは帰ってしまい、電話で席を外しただけの吉川さんが、なかなか戻ってこない。
”山岡ちゃんと、平川くんを二人にする作戦”
それで、二人きりが続く。
なのに、なんとなく会話が続かない。
”折角2人になったと言うのに、平川くんは喋れない”
”好きな山岡ちゃんの前で、男の純情が発動してしまった。他の女となら、あんなに喋ることが出来るのに”
山岡ちゃんが、携帯を見て言う。
「吉川さぁ、帰っちゃったよ。吉川ちゃんから、先に帰るって、メッセージが来たわ」
平川さんが白々しく言う。
「そうかぁ……。帰ったかぁ」
「いいの? 吉川ちゃんは、帰ちゃったよ。私たちも、もう帰ろうか? 私とじゃ、会話も盛り上がらないでしょう?」
平川くんが謝る。
「ごめん、会話が盛り上がらなくて」
山岡ちゃんが困ったように言う。
「いや、それは私が詰まらない人間だからで、平川くんのせいじゃないよ。私といても退屈でしょう?」
平川くんが必死で言う。
「山岡ちゃんは、詰まらない人間じゃないと思うよ」
山岡ちゃんが、礼を言う。
「ありがとう。でも私吉川ちゃんみたいに、会話を弾ませられないんだよね」
平川くんが言う。
「吉川は、思った事を、そのまま口から出しているけど、山岡ちゃんは考えて喋るからだろう?」
山岡ちゃんは少し間をおいて言う。
「そうかな……。そう言えば、私たちって、案外二人だけになった事なかったよね?」
「確かにそうかも」
山岡ちゃんが何気に言う。
「平川くんは吉川ちゃんと、よく二人でいたよね」
平川くんは、山岡ちゃんに誤解されていると、感じて言う。
「もしかして誤解している?俺は吉川と一緒にはいたけど、違うんだよ。好きなのは好きだけど、友だちとしてだよ」
山岡ちゃんには、驚きしかない。
「え? 違うの? 高校の時からメチャ仲良しだったじゃん。すごく話も弾むし」
「まぁ、確かに。会話は弾むけどさぁ。なんか吉川って、女って感じしないよ」
山岡ちゃんには、平川くんの話が、信じられなかった。
「男女の友情ってあるの?」
「吉川と、俺にはあるよ」
「それは本当の話なの?吉川ちゃんが好きだから。吉川ちゃんに彼氏がいても、平川くんは、吉川ちゃんと付き合っているんじゃないの?」
平川くんは山岡ちゃんに、吉川さんとの間を、誤解させたくない。
「いやぁ、吉川は、マジ男と変わらないぞ」
「本当にそう思っているの?」
「そうだよ。それより、あのさぁ、俺はさぁ」
そこにスネ子がやってきた。
「いた、いたぁ。探したんだよぉ。この店に入ったの、見ていたこがいてさぁ。教えてくれたぁ」
スネ子が山岡ちゃんを見て聞いた。
「座って良い?」
山岡ちゃんが頷き、平川くんと山岡ちゃんの間に座った。
「2次会行くなら、何処行くか、教えてから消えてよ。私はぁ。平川くんと喋りたかったんだぁ」
「俺と? 何で?」
スネ子が恥じらう。
「あ。嫌だぁ。そんな事聞くのぉ」
スネ子がベルを鳴らした。
店員が来る。
「モヒート。3つください」
山岡ちゃんが不思議に思って聞いた。
「なんで3つも頼んだの?」
「だって、山岡ちゃんも、平川くんも、グラスが空だからさぁ。頼んであげたんだよぉ」
山岡ちゃんは明らかに怒っている。
「そうなんだぁ」
スネ子が言う。
「えへ、朋ちゃんてぇ、気が効くから」
平川くんがスネ子に聞く。
「お前は、まだ自分を朋ちゃんって呼んでいるの?」
「そうだよぉ。だってずっとそう自分を呼んでいるんだもん」
「そうなんだぁ」
「うん」
そしてすぐモヒートはきた。
スネ子が甲斐甲斐しく、モヒートを配る。
「飲んで。飲んでェ―」
そう言いながら、スネ子は軽く、平川くんにボディタッチする。
平川くんが、それをさり気なく避ける。
避けられてスネ子は、平川くんから少しだけ、距離をとる。
不満げにスネ子は、モヒートを飲みながら言う。
「あ、それとぉ。何で離婚したの? さっきの会場でも、その話で持ちきりだったよ。立派で真面目な山岡さんが、まさかの離婚で、みんなビックリよ。優等生でも離婚するんだね。サレ妻とか? あ、でも、子供をとられたって事は、自分が浮気したの?」
山岡ちゃんの表情が、一気に険しくなった。
山岡ちゃんが、モヒートを一気に飲んだ。
そして立ち上がった。
テーブルに5000円を置いた。
「これ、私と吉川ちゃんの分。多分、余ると思う。だからお釣りはいらない。じゃ、先帰るね」
平川くんも立ち上がった。
「待って、俺も帰るよ」
すると、平川君のTシャツの裾が引っ張られた。
引っ張る手の先は、勿論スネ子だった。
「ちょっとぉ。せっかく今座ったばかりなのに、私を置いて行かないでよ。モヒートもきたしさぁ」
お人好しの平川くんは、スネ子を置き去りに出来なかった。




