腹筋の素晴らしさで盛り上がって、同窓会に行く事にした
同窓会の前日、吉川さんは会社帰りに、山岡ちゃんを食事に誘った。
ファミレスで、吉川さんが山岡ちゃんを、同窓会に誘う。
「ねぇ。同窓会に、一緒に出ようよ」
「嫌だよぉ」
「なんで?」
「離婚のこと聞かれたくないよ。離婚して以来、心の傷が酷いの。癒えないんだなぁ」
山岡ちゃんは、子供を旦那にとられてしまったのだ。
吉川さんは、山岡ちゃんの部屋を思い出す。
子供をとられて、1年も経つのに、まだ山岡ちゃんの部屋は、子供の残していった物でいっぱいだった。
子供の服やおもちゃ、おむつにミルク、そして子供の写真で部屋が溢れていた。
吉川さんは、そんな山岡ちゃんが心配だった。
だから、少しは人生を楽しんでほしいと思う。
「でも、いつまでも、引きこもっていたら、良くないよ。まだ若いんだからさ」
「私はさぁ、幸せになっては駄目だし。楽しんでも駄目だって思っているんだ」
山岡ちゃんの答えに、吉川さんは困ってしまう。
「なんで? そんな事思うの?」
「子供を捨てちゃったからさ。子供に悪いと思うんだよ」
「だって、捨てた訳じゃないよ。裁判で負けたから。相手んちが金に物を言わせて、弁護士協会の役職が偉い弁護士付けたから、負けたんじゃん」
山岡ちゃんの表情はくらい。
「そうなんだけどさ。それでもさ。やっぱり私は、子供を捨てたんだよ。母親失格だって、皆思っているよ。みっともなくて、みんなに会えないよ」
吉川さんは、平川くんの為にもう一押しした。
「大丈夫だよぉ。誰もみっともないなんて思っていないよ」
「それに私、クラスに吉川ちゃんくらいしか友だちいなかったし」
「え? 平川くんと、山本くんがいるじゃん」
「私は、吉川ちゃんのオマケみたいなもんだから。私って、勉強ばかりしていて、クラスで浮いてたし」
吉川ちゃんが言う。
「それを言ったら、私は綺麗だったから、浮いていた」
それで二人は笑う。
吉川さんが頼み込んだ。
「でもさ、同窓会は行こうよ。」
「なんでそんなに同窓会に行かせたいの?」
「私一人じゃさぁ、行きづらいよ。スネ子がいるんだよ」
「スネ子が来るんだぁ。私もあの子は苦手だわ」
「お願い。一緒に来て。その代わり良いもの見せてあげるから」
「え? 何? 良いものって?」
吉川さんがニって笑う。
「平川の腹筋の写真だよ」
「なんで、そんな写真を持っているの?」
「それを話すと、色々ねぇ。でも見る?」
山岡ちゃんが、珍しく張り切る。
「見るよ。勿論。我々は、腹筋を愛する、腹筋愛好者じゃないですか?」
さらに、山岡ちゃんがうっとりして言う。
「良い腹筋を見ると、萌えるよね」
吉川さんが音頭をとる。
「そそ、それそれ。腹筋、腹筋! 腹筋最高!」
そして吉川さんが携帯を開いて、写真を見せた。
山岡ちゃんが頬を染めた。
「おお――。良いね」
「良いでしょう?」
山岡ちゃんのテンションが、久々に上った。
「触らして貰ったの?」
吉川さんは残念そうに言う。
「流石に触らないよ。高校生じゃあるまいしさ」
「だよね」
吉川さんはウキウキだ。
「細い体に、張り付く腹筋。最高ですなぁ」
山岡ちゃんが頷く。
「この写真頂戴」
「それがさぁ。誰かにあげるのは禁止されたんだわ」
山岡ちゃんはガッカリした。
「え――――」
「自分でもらいなよ」
「くれるかなぁ?」
吉川さんが太鼓判を押した。
「絶対くれるよ」
でも山岡ちゃんは心配だ。
「変態だって思われないかなぁ?」
「いや大丈夫。逆に喜ぶと思う」
「え? なんで?」
「ともかく、そう言うわけで、同窓会に参加しようよ」
「あ、じゃぁ。少しだけ」
こうして山岡ちゃんは、同窓会へ出ることになった。




