呼び出し 1
イチャイチャを邪魔された明くる日、吉川さんは、居酒屋にいた。
「何故私が呼び出されているんでしょう?」
平川くんが答える。
「俺たち仲間だろう?」
吉川さんは不満だ。
「仲間? 平川と山本くんが仲間ァ? ハァー。ちっとやめて。仲間じゃないから」
平川くんが太鼓判を押した。
「いや、謙遜しなくて大丈夫だから。俺たち高校からめちゃ仲良かっただろう?」
吉川さんは納得しない。
「え! そうだった」
なおも平川くんは言う。
「そうだよ。いつも一緒に遊んでただろう?」
絶望したように吉川さんが言った。
「覚えてない」
平川くんがバカにして言う。
「吉川のおつむは大丈夫かぁ? 元々バカだからなぁ」
吉川さんが文句を言う。
「いや、川平より成績良かったから」
「そう言う意味じゃないだろう?」
「じゃ、どう言う意味よ」
「そう言う意味だ」
冷静な山本くんが、しょうもない会話を止めた。
「もうお前たちやめろ。話が先に進まない」
平川くんが宣言した。
「そうだ。俺は明日早いんだ。早めに飲み会を終わらせるぞ」
吉川さんはチューハイをかき混ぜながら聞いた。
「明日早いの?」
平川くんは唐揚げをつまみながら答えた。
「そう。3時には出勤する。俺の仕事は不規則なんだ」
「鉄道会社だっけ?」
「そうそう」
「電車って朝から晩まで走っているもんね。そりゃ不規則になるわ」
また山本くんがストップを掛けた。
「イヤイヤイヤイヤ。全然主題が進んでないから。今は山岡ちゃんの話だろう?」
平川くんが思い出して言う。
「あ――――そうだった。お願い山岡ちゃんを同窓会に連れて来てくれよ」
吉川さんは、全然乗り気ではない。
「え――――。山岡ちゃんは離婚してから、そう言うの全然出たがらないんだよ」
山岡ちゃんは1年前に離婚したのだ。
山本くんが理由を聞いた。
「なんで出たがらないの?」
吉川がチューハイをかき混ぜながら言う。
「聞かれるじゃん。離婚についてさぁ。辛いじゃん。色々話させられたら」
気の毒げに山本くんが言う。
「まぁ、確かになぁ」
平川くんは諦めない。
「でもそこをなんとか連れて来るのが、吉川、お前の腕だ」
吉川さんが、平川くんの二の腕を指差す。
「腕?」
平川くんが説明した。
「いや、本当の腕じゃなくて、技術と言うか。裁量と言うか」
吉川さんがニッと笑った。
「バーカ。分かって言ったんだよ」
平川くんは苛つく。
「ともかく、連れて来てくれ」
吉川さんは、チューハイを飲んで言う。
「何で?」
平川くんはモジモジした。
「何でって……。好きなんだ。離婚したって聞いて、俺さ、出来たら……」
吉川さんがバカにして言う。
「ふーん。そうなんだ。高望みじゃないの? 平川みたいなバカが、山岡ちゃんを狙うなんてさぁ」
「良いだろう。この際、俺の頭の善し悪しは、良いだろう」
吉川さんが、山岡ちゃんの好きな男のタイプを教えた。
「そう言う意味でもなくて。山岡ちゃんは、尊敬出来る男が良いらしいよ」
「マジ?」
「そう言ってたわ。私は尊敬出来る男自体、いると思えないけどね」
平川くんは諦めない。
「でも俺、山岡ちゃんを諦められない」
「平川なんか、山岡ちゃんは無理だってぇ。婚活アプリで探しなよ」
平川くんは、意外なことを言った。
「俺も、山本も、婚活アプリはやってたよ。っていうか、やっている?」
「そうなの?」
山本くんがサラッと言う。
「俺はアプリで彼女出来たよ」
吉川さんがおねだりする。
「え?聞かせて」
山本くんは躊躇う。




