今もラブラブ
松本さんと吉川さんが、吉川邸に暮らし始めて2年が過ぎようとしていた。
二人はラブラブだった。
吉川さんがシャワーを浴びて、浴室の扉を開けると。
バスタオルを大きく広げて、松本さんが待っていた。
吉川さんが笑う。
「もう、颯太ァ。なにしているの?」
「愛海が、お風呂を出るのを待っていたんだ」
そう言いながら、松本さんが、持っていたバスタオルで、吉川さんをすっぽり包む。
バスタオルに包まれた吉川さんを、松本さんが抱きしめる。
そして、その場で、二人はしゃがみ込んでしまう。
松本さんが手を伸ばして、棚からタオルをとった。
タオルで吉川さんの髪を丁寧に拭き始めた。
吉川さんは拭かれるがままになっている。
松本さんが言う。
「幸せだな」
吉川さんが「うん」と小さく言った。
しかしこの幸せを、携帯電話が引き裂いた。
吉川さんの着替えの上に置かれた携帯電話バイブしたのだ。
吉川さんが携帯画面を見る。
「くっそぉ。人がいい気分でラブラブしているのに電話かよぉ」
吉川さんが、携帯げ面の受信をタップしないで、見つめた。
松本さんが聞く。
「出ないの?」
「出たくない。ラブラブしていたい」
なのに電話は切れない。
いつまでもコールが続く。
「あっ、もう!」
吉川さんが電話に出た。
出るなり吉川さんが怒って言う。
「何? なんの用事よ。私は今良いところなのに! なんで電話してくるかなぁ!」
それから吉川さんは、ウンウンと言った。
吉川さんは、少し眉を潜めた。
「ああ、山岡ちゃんね。不参加じゃないの。自分で聞いたらいいじゃん!」
電話の向こうで、男の声がする。
松本さんにも、何か切実に訴えているのだけはわかった。
吉川さんが面倒くさそうに言う。
「何で、私が山岡ちゃんを、同窓会に連れて行かなきゃならないの? その日楽しみにしている、ライブ配信の日だから、同窓会に行かないって私言ったよね?」
また電話の向こうで、男が訴える。
更に、違う男の声も加わった。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ。もう、うるさい。分かった。分かった。電話切るからね」
何か喚いている男たちをよそに、吉川さんが電話を切ってしまった。
松本さんが吉川さんに聞く。
「何? 何があったの?」
「来週の同窓会に、山岡ちゃんを連れて、出てって頼まれてさぁ」
「ああ、行かないって言っていた同窓会でしょう?」
「行きたくないよぉ。スネ子が来るんだよ」
「スネ子って誰?」
「某アニメのキャラに似ている、同級生よ。自分を美人でモテると勘違いしていて、私をライバルだと勝手に思っているんだ。マジうざい」
「そんなに、似ているの?」
「激似よぉ」
松本さんと吉川さんが、見つめ合って笑う。
そしてキスし合う。
ついばむ小鳥みたいなキッス。
それから絡みつくキッス。
それから……、それから。
もう誰も2人を止められない。




