表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/64

婚活アプリ始める

 熊さんと別れた日。

 吉川さんは、仕事が終わると、家に帰らず、親友の山岡ちゃんのマンションに寄った。


 山岡ちゃんが驚いて言う。

 「え? 熊さんと別れたの? 意外だわ。熊さんは吉川ちゃんにぞっこんだったのに」

 吉川さんは、不満顔だ。

 「何時の話よ。今じゃ倦怠期の夫婦より、距離があるよ。あいつ、もう、彼の女いるし」

 「彼女? え? 同居していたのに、彼女作ってたの?」

 「そうだよぉ」

 

 ガッカリした顔で、山岡ちゃんが言う。

 「知らなかった。私はてっきり、二人は結婚すると思っていたから」

 


 「それで、婚活アプリしようと思って。婚活アプリの先輩の山岡ちゃんに、教えてもらいに来たんだ」

 吉川さんが、今日山岡ちゃんのマンションに来た、一番の理由だった。

 「ああ、いいよ。私は結局アプリでは結婚相手見つかんなかったけど。おじさんの紹介で、結婚しちゃってぇ。でもアプリで知り合った人と、半年付き合ったし。まぁ、アプリがどんなところかは分かるよ」

 「ねぇ、ねぇ、どうしたらいい?」

 「婚活なら、4社くらい有名アプリがあるけど。ピーチズあたりで良いんじゃない」

 「じゃそれにする」

 吉川さんは、顔認証通して、無料アプリを購入した。

 「はい入れた」


 二人で、吉川さんの携帯をガン見する。

 「それから、マイページ作るでしょう。あっとぉ、実物の顔を読み込ませるのが先かぁ」

 吉川さんが、アプリに自分の顔をかざす。

 それが終わって、吉川さんが、携帯画面に登録項目を入力していく。

 山岡ちゃんが言う。

 「ここでフィルターもかけられるよ。自分が好む男の条件を入れてさ。既婚者NGとかね」

 

 吉川さんが、山岡ちゃんに聞く。

 「アップする写真とか、どうするの?」

 「まずは適当でいいよ。写真はねぇ。これとか入れとけば。清楚そうだし」

 吉川さんは何も考えず、言われた通り作業をこなしていく。

 「はい、入れた」

 山岡ちゃんが満足げに言う。

 「そこから今度は、免許証とか、保険証を読み込ませるんだ。その審査が通ると、イイねとか、メッセージとか送れるようになるからさ」


 しかし審査が通る前に、どんどんどんどん、イイねがされていく。

 男の入れ食いが、今眼の前で起こった。

 

 「ねぇ、ちょっと。なんか、アップした瞬間、イイねがドンドン来るけどぉ。怖いけど」

 「吉川ちゃんは、美人だからだ、そりゃ来るよ。でも1週間が勝負だよ。トップページの新着に1週間載るから。その間に如何に集客できるかよ。その間に、どんだけ男が釣れるか勝負よ!」

 「え? そうなの?」

 

 「新着の登録者が来るからさぁ。どんどん埋もれていくだけなのよ。でも、吉川ちゃんなら、きっと1000人は越えるよ。でも千までしかカウントしてくれないけど」


「千超えると分かんないんだ」


山岡ちゃんの説明は続く。

「そそ。そこから好みの男にイイねして。男からダイレクトメールが返って来たら、1週間から2週間くらいやり取りしてさ。ラインを交換するか、アプリ内の電話で通話するかして。そこからまた1週間から2週間やり取りしたら、リアルで会うかんじかなぁ」


 「へぇー。会うまでに3週間から1ヶ月掛かるんだ」

 「案外、手間がかかるよ。超めんどい」


 山岡ちゃんが悲しげに言う。

 「でもさぁ、1000人集客しても、気に入る男は、数%いるかいないかよ。あんまり期待しないほうが良いよ。所得や学歴は良くてもさぁ。好きなタイプの外見の男が来るかはわかんないしね。コミュ障もいるし」


 吉川さんは、どんどん増えるイイねを見て、恐怖を覚えながら、頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ