君が僕にお礼する 4
吉川さんが、平川くんと山本くんの席に近寄って言う。
「じゃぁ、先帰るわ」
平川くんが「おう」と言い。
山本くんが、吉川さんの顔を見て、にっこりと頷く。
吉川さんはそれに、微笑み返した。
琴音ちゃんは、吉川さんと山本くんの様子を、じっと見ていた。
そのまま琴音ちゃんは、去っていく吉川さんに視線を向け続けた。
そして琴音ちゃんが立ち上がった。
琴音ちゃんが隣に座る、オレジン色のカーディガン着た女の子に言う。
「パウダー室に行ってくる」
琴音ちゃんが、席から離れていく。
それを山本くんが見て。
山本くんも席を立った。
平川くんが山本くんに聞く。
「おい、山本、何処に行くんだ」
それで、平川くんが山本くんの後を追おうとした。
しかし、平川くんの携帯が床に落ちて、後を追うのが少し遅れる。
琴音ちゃんが行った先は、店の外だった。
外にまだいた吉川さんと松本さんを見つけて声をかけた。
「あの、吉川さんですよね?」
「あ、ぁ。琴音ちゃん?」
「そうです。あの失礼なんですけど。吉川さんは山本さんをどう思っていますか?」
「え? 何? 友だちだけど。それが何かぁ……。あの琴音ちゃん。琴音ちゃんは何か誤解しているよ」
「友達なんですね? 男性として好きじゃないんですね?」
「ちょっとぉ、待って。何? いったい?」
「その隣の男の人と、付き合っているんですか?」
「え、え、え、え……。あのぉ。付き合っては、まだ、いないけど」
松本さんが、吉川さんの”まだ”に、異常に興奮して言う。
「まだぁ」
そこに山本くんが来た。
山本くんが怒って言う。
「琴音ちゃん。吉川ちゃんに絡むのは止めて欲しい」
琴音ちゃんが吉川さんを睨む。
「吉川さんが、ハッキリしないから。色々な男が宙ぶらりんになって、何処も行けなんです」
吉川さんにそんな気持ちは微塵もない。
なのに、琴音ちゃんがキツく言う。
「美人だからって、男を唆して、侍らせるのは止めてください」
吉川さんは、琴音ちゃんの気迫に押されてしまう。
吉川さんはつい謝ってしまう。
「すいません。でもあのぉ。そんな事はしていない……、んじゃなかとぉ」
琴音ちゃんが大きな声で言う。
「はっきりしてください。誰が好きで、誰と付き合っているか」
吉川さんが松本さんを見た。
松本さんも吉川さんを見る。
その二人の様子を山本くんが見る。
その3人を琴音ちゃんが見ていった。
「山本さんには、もうチャンスはないみたいですよ」
山本くんが琴音ちゃんを冷たい目でみた。
山本くんが琴音ちゃんの耳元で、琴音ちゃんにだけ聞こえるように言った。
「本当に、ウザいんだけど。消えてくんない」
琴音ちゃんの表情がこわばった。流石の琴音ちゃんも、山本くんの言葉が突き刺さった。
琴音ちゃんが山本くんの顔を見上げた。山本くんの表情は冷たい。琴音ちゃんは自分がやり過ぎた事を今更知る。
琴音ちゃんが、ノロノロと、道沿いに歩き出す。琴音ちゃんは、店内に戻る気持ちに、なれなかったのだ。
そこに平川くんがやってきた。
平川くんには、今の状況は分からない。
しかし琴音ちゃんが、肩を落としてノロノロと、何処かに向かっていくのだけは分かった。
平川くんが琴音ちゃんを追い、そばに寄って、何か話しかけ始めた。
山本くんが、吉川さんと松本さんに言う。
「俺、店内に戻るわ。じゃまた」
吉川さんが言う。
「うん、また」
松本さんは唖然としていた。
「これでいいんですか?」
吉川さんが言う。
「私には難しくて、よくわかんない。平川センセーに任せよう。平川は、昔からキャプテンしたり、リーダーしてる人だからね」
「へー。そうなんですか?」
「そうそう。だから平川は、こんな時は、毎回問題処理班だから」
松本さんが聞く。
「問題処理班てなんです?」
「平川ってさ。クラスやチームで問題が起きると、処理する人なんだ。特に山本くんが、たまに仕出かすから、それを収めると言うかぁ。まぁ、山本くんと平川は、良いコンビって事だね」
松本さんは、わかったような、わからないような顔をした。
吉川さんがうんざりしたように言う。
「私は時々、山本くんの女関係に、何故か巻き込まれるんだよね」
松本さんが、店内に戻る山本くんを見た。
吉川さんが言う。
「もう1軒行かない? なんかテンションダダ下がったから」
松本さんが言う。
「じゃぁ、次は僕のお勧めの店に行きましょう」
二人は、琴音ちゃんと平川くんを通り越して、松本さんお勧めの店に向かった。




