君が僕にお礼する 3
山本くんと平川くんが席に戻った。
山本くんの隣座る琴音ちゃんが聞く。
琴音ちゃんがモジモジしながら聞いた。
「あの綺麗な人は誰なの?」
「ああ、あのひとはぁ」
山本くんの視線は、吉川さんに向けられていた。
「吉川さんって言うひとだよ」
「吉川さん、友だちなの?」
「まぁ、そうだね」
「何時の友だちなの?」
「高校だよ」
「そうなんだ。どう言う人なの?」
山本くんが嫌がって言う。
「もう、吉川ちゃんのことはいいだろう?」
琴音ちゃんはしつこい。
「どう言う人なの?」
仕方なく山本くんが答えた。
「そうだな。口は悪いけど、根は優しくて。良い人だよ」
「良い人? 優しい……」
山本くんの表情が、少し緩んだ。
「そう、良い人で、優しくて、可愛いんだ」
「好きなの?」
山本くんが琴音ちゃんの表情を、確かめるように……、見ながら言う。
「好きだよ」
琴音ちゃんは聞くのをやめない。
「でも隣の男性は、恋人でしょう?」
「吉川ちゃんは、最近彼氏と別れたばかりで、あの人はまだ違うと思う」
「吉川さんと付き合いたいの?」
山本くんは、琴音ちゃんに怒っていた。
「琴音ちゃんには、関係ないでしょう? なんで俺が琴音ちゃんに、そこまで話さなきゃならないの?」
琴音ちゃんが黙ってしまう。
それを見ていた平川くんが言う。
「おい、山本、ちょっと来い」
それで山本くんと平川くんは、店の外に出た。
平川くんが言う。
「お前、言い過ぎだぞ」
山本くんが言う。
「琴音ちゃんが、しつこいからさ。そろそろ俺にまとわりつくの、止めて欲しいんだ。うざい」
平川くんがため息をつく。
「全く、山本は、そう言うところがあるよな。女に冷たいんだ」
山本くんが理由を言う。
「気を持たせる方が、悪いと思って」
「でも言い方があるだろう? それに、琴音ちゃんは、可愛いだろう? 可愛そうだ」
山本くんが嫌味なことを言う。
「じゃ、平川が付き合ってやれよ」
しかし、山本くんの嫌味は、平川くんには通じない。
「俺はぁ、まだ次に行けない。失恋の痛手が大きすぎて……」
「平川は、そう言うところあるよね」
平川くんが注意した。
「でも、アレだぞ。吉川を好きでもないのに、琴音ちゃんを振る口実に使うのは、良くないぞ」
山本くんが黙る。
「琴音ちゃんも、あれで結構キツイからなぁ。吉川に迷惑でもかけたら、悪いし」
山本くんは、黙ったままだ。
そして店の中に戻った。
今度は琴音ちゃんの隣に平川くんが座った。
山本くんは、黙ったまま、ビールをチビチビ飲んでいた。
山本くんの視線の先は、吉川さんだった。




