アリとキリギリス-希望の灯-
本作品は文学初心者の投稿主が大学の入試対策に書き始めた作品の第一作目です。本当は800字程度が理想でしたが、勢い余って1000文字を超えてしまいました…つたない文章ですが、暇つぶしにでもどうでしょうか。精進してまいります。
銀杏の葉も枯れはじめ、辺りが荒野のように錆びてきた頃、似合わない音が聞こえてくる。明るく響くその音色は、食料を運んでいた蟻の群れの耳にも入った。
蟻たちは耳を傾けつつも先を急ごうとする。するとぱっと音楽が止み、止まった方向を見てみるとキリギリス達がこちらへ向かってきていた。
「やあやあ蟻くん。そんな大荷物を抱えてどうしたのかな?」
「次の冬に備えているのさ」
「へえ、結構重そうだけど辛くないのかい?」
「辛いさ」
バカにするように尋ねてくるキリギリスに辟易しながら答える。
「ハハハハ!面白いな、君たちは。今を生きずに将来のことを考えるだなんて」
突然笑いだした蝉に腹が立った蟻たちはその場を去り、キリギリス達も演奏会を再開した。
冬を目前に迎えたある日、三匹の蟻が命を落とした。労働環境があまりにも劣悪だったためだ。
それを聞いた蝉達は笑いだした。
「将来のために命を落とすなんて、滑稽だね」
とうとう冬がやってきた。あたりは一面死の世界だった。そこにキリギリスはいた。
食料はなく、触角には霜がついている。そんな時、一匹のキリギリスが言った。
「俺の友に蟻がいたんだ。奴らに匿ってもらおう」
反対するやつはいなかった。
そうと決まれば行動は早かった。みんな立ち上がり、歩き始めた。蟻を馬鹿にしていたフランクルも歩き始めた。動かなくなった隣の友人を置いて。
道中で五匹は倒れただろうか。それでも動きは止めない。そこに希望の光が見えるならと、動き続けた。
「見えたぞ!」
先頭の仲間が叫んだ。周りの雰囲気が明るくなる。そしてただガムシャラに進んだ。
「悪いが、君たちは匿えない。こっちも余裕がないんだよ」
その一言と、扉を閉める甲高い音は彼らの希望の炎を消した。
それとほぼ同時に、先頭にいたやつが倒れた。それは寒さによるものではなかった。やつは自分の手で、自分の命を絶ったのだ。そしてそれに続くように、一匹、また一匹と、自らの手で命を落とした。
結局、残ったのはフランクルだけだった。
進む。ただ進む。どこか、また火を灯してくれる場所を求めて。
そして見つけたのだ。モヤの先にある光を。走った。どんな結末でもいい。ただ、希望を求めて、走った。
戸をノックして出てきたのは、蟻の老婆だった。入れてくれないかとダメ元で頼むと、なんと彼女は承諾してくれたのだ。
家の中に入ると、すぐに彼女は食料を出してくれた。それを見るやいなやすぐに食べだした。
食べ終わると、彼女に聞いた。なぜ助けてくれたのかと。
彼女は答える。
「亡くなった夫がそういう人だったからねえ。残してくれた食料も他人のために使いたいのよ」
ああ、そうか。これが、未来のために生きるということか。
フランクルは自身の犯した過ちを悔いた。
このような拙い文章をご読了いただきありがとうございました。
本作は童話「アリとキリギリス」に私のキーワード「希望」を合わせて執筆しました。
もっと良い作品を書けるように精進していきます。