ディアブロ
第16話です。
竜車を急ぎ走らせて数分、サザンカ村の入り口が見えて来た。黒煙が複数の家々からあがっているのがうっすらとではあったが奥に見えた。
「お姉さん、ノルデンさんはどこにいるか知っていますか?」
「ノルデンのお知り合いだったのですね。村が襲われ始めて村全体が混乱に陥ったのでわかりません。ですが彼女のことですからどこかで戦ってくれているはずです」
村の入り口に着くと、竜車を止めて戦いの準備をした。村の人々の悲鳴や助けを求める声が聞こえる。こんな卑劣なことをしているのは一体誰なのだろうか。
「俺たちは今から襲撃を止めに行きます。ここから先にいる敵は倒してみせるので、住人の皆さんを入り口に避難させてもらえますか」
避難させるのは戦いに巻き込まないようにだ。住人がいては力を十分に解放することができない。
「はい、わかりました。私たちの村をどうかよろしくお願いします」
女性は頭を深く下げた。
「タツキ、どう立ち回る?」
「ここはノルデンさんとの合流を第一に動こう。俺は村の東側をハルタは村の西側を探してくれ。もし出会うことができたら、魔法で空に何かしらの合図をしてくれ。探しながら避難誘導と敵勢力の排除も行うこと。敵の素性が全くわからないから気をつけよう」
「わかった。何かあったら知らせる。じゃあ」
俺たちはお互い向かうべき方角へ向かった。
村に入ってすぐに敵と思われる人影と出くわした。敵は大勢いて、全員が黒のフード付きローブを身につけていたので全く顔が確認できなかった。彼らのうちの一人がちょうど村人の腹に剣を突き刺そうとしていたところだった。俺はすかさず腰から双剣を抜き、斬撃を放った。今までモンスターしか倒したことがなかったため人を切ることを一瞬躊躇したが、サザンカ村のことを思うとその躊躇も一瞬にして消えた。刺し殺そうとしていた奴の首が跳ねて血潮が辺りに飛び散った。するとそれを見ていた周りの奴らに存在を気づかれ包囲された。
「怪我はないか?」
倒れ込んでいる村人に話しかけた。
「ええ、大丈夫です。どうかここからお逃げください。ここは危険です」
包囲してきた奴らの一人が話し掛けてきた。村人を優しく地面に寝かせると立ち上がって、鋭い視線を彼らに向けた。
「貴様何者だ」
「こっちが聞きたいな。サザンカ村の人々を殺して村を壊して何が楽しい?」
「ふっ、お前にはこの快楽がわからねぇだろうなぁ。ヒャハハハ」
「狂ってやがる。今まで何人のこの村の人を殺した?」
「二十人だ。お前を殺せば二十一人目だ。死ねぇ」
周りを囲んでいた奴らが一斉に俺を目がけて剣を向けて走ってきた。だが半年間厳しい訓練を積み重ねてきた俺にとってはこんなもの楽勝でしかなかった。風の加護受けている俺は奴らの斬撃を避けて素早く後ろに回り込み次から次へと倒した。
先程喋りかけてきたやつが斬撃を受けて倒れ込んでいる中話しかけてきた。
「やるなあ、貴様。だがこの村にいるのは俺たちだけじゃねえ。せいぜい生き延びられるといいな。最後に……。死ねぇ!」
奴は突然起き上がり隠し持っていた剣を先程刺し損ねた村人に投げつけ、血を吐いて倒れた。俺はこの瞬間やってしまったと思った。どうやっても止めることができない。
諦めかけた瞬間村人の前で土煙が上がり中で剣が弾かれた音がした。煙が晴れるとそこには見覚えのある姿があった。そこにはノルデンがいた。
「全く詰めが甘いぞタツキ」
「ノルデンさん! お久しぶりです」
「土産話を聞くのは後だ。すまないが、今から“奴ら”を倒すのに手を貸して欲しい」
「もちろんです。その“奴ら”って何者なんですか」
「“ディアブロ”だ」
この世界に来て半年のうちに何回か耳にした言葉だ。ガリウドが以前彼とノルデンの父母もディアブロによって殺されたことを教えてくれていた。
「ディアブロは殺人や窃盗など様々な悪事に手を出している極悪集団だ」
「以前ガリウドさんから聞いたことがあります。ですが、なぜそんな奴らがサザンカ村へ?」
「わからない。とりあえず村にいるやつらを片付けるぞ。ついてこい」
俺はノルデンと合流したことをハルタに知らせるため、火属性魔法を詠唱し、空に火を打ち上げた。すると西の方からも同じ火の魔法が空に打ち上がった。ハルタもどうやら無事のようだ。
ノルデンと息を合わせて順調に倒していった。人数は多いものの力や技能においてはこちら方が圧倒していた。戦闘の最中俺はシーナがどこにいるのか気になったが、ノルデンがどこかしらに避難させているに違いないと思った。
「さて、こっちの方はだいぶ片付いたな。ハルタのいる方へ行こう」
「はい。そういえばシーナは大丈夫なんですか」
「安心しろ、シーナは見つからないような場所にいるから安全だ」
「それならよかったです」
突然、西の空にハルタからの合図が上がった。何を知らせるための合図だろうか。どちらにせよノルデンと合図の方向へと急いだ。
到着すると傷だらけのハルタが地面に倒れていた。
「ハルタ大丈夫か? しっかりしろ」
「タツキ、気をつけろ」
ハルタはそう言いながら、民家の屋根の上を指で指した。そこには黒いローブを纏った奴が一人立っていた。だがそいつは今まで戦ってきた奴らとは違ってフードから角が生えていた。背は低くてフードからは白髪が垣間見えていた。ハルタがやられたことからこいつは相当強いことが推測できる。
「あーあーあー。まためんどくさそうな奴らが来ちゃったよ。こっちは時間がないって言うのにぃ」
奴の喋り方や背の高さからして小学生くらいの年齢だろうか。
「タツキ、ここは私に任せろ。あいつはおそらくディアブロの幹部でお前がまだ太刀打ちできる相手ではない」
「え、でも二人で戦った方が有利ではないですか」
「それはこちらの戦力が空いてより有利な場合だ。今この状況ではかえって不利な状況に持ち込まれやすい」
「我が名は剣士ノルデン。この村の守護者だ」
「これはこれは、元龍の牙メンバーのノルデン様とは恐れ多い。僕の名はトローニだ。よろしく頼むよぉ」
ノルデンは剣を構えて体勢を取ると奴を目掛けて見えない速さで切り裂いた。しかし、切り裂いたと思われた場所には奴の姿がまだ残っていた。彼の体は無傷でローブだけ裂けていた。ノルデンも切ることが出来なかったことができなかったことに対して驚いたのかその場に立ち止まった。
「やっぱり君速いわ。でもまだ僕より強くないねぇ」
「久しぶりだ、この速さについてこれるやつを見たのは」
ノルデンは歯を食いしばりもう一度先ほどと同じ体勢をとって地面を蹴り上げて屋根に飛び移ると、彼の目の前で剣を振ったが避けられてしまった。それに続けて何度も切り掛かったものの彼はノルデンの振る速さよりも速く華麗にかわした。剣は全く奴の体を捉えることができなかった。
「頑張ってるけどそれじゃ僕のことは倒せないよぉ」
「まだ私は本気を出していないことがわからないのか馬鹿め」
「どういうことかなぁ」
ノルデンはなにか秘策を持っているような笑みを浮かべた。彼女は剣を持つと奴から離れて斬撃が届かない場所なのにも関わらず剣を振った。剣を振るとそれに沿うように地面が浮き上がり、岩が形成されて物凄い速さで奴を襲った。俺は見ているだけでは耐えきれなくなって岩の斬撃に加勢するよう風の斬撃を奴に向けて与えた。奴は少し驚いたが難なく全ての攻撃をかわした。
「君達二人も加護を持っていたのか。これは少し面倒臭いね。さっき倒した君のお仲間も加護を持っていたねぇ」
宙で岩を避けながら言った。まだ余裕があるらしい。
「タツキ、お前加護を付与されたのか。ハルタも持っているのか!?」
「はい、土産話にでも話そうと思っていたのですが」
「加護二人相手だと少し釣り合わないねぇ。時間もないし今日はずらかるとするかぁ。またそのうち君たちとは会える気がするなぁ」
奴はそういうと指を鳴らした。すると奴の背後から闇属性魔法によって形成されたと思われる渦ができて、奴はその中へ引きずり込まれて姿を消した。姿を消すと同時に渦も今まで何も無かったように綺麗さっぱり消えてしまった。
「くそ、逃げられたか」
「まだディアブロは村に残っているはずですが、彼らを置き去りにしていくんですね」
「他の奴らはディアブロに雇われたただの盗賊や犯罪者で、ディアブロの中心にいるのはあのツノが生えた幹部たちだ」
ハルタの元へ近寄り怪我の具合をみたがほとんど切り傷で軽傷だった。ハルタは自分で治癒魔法を使って治療した。
「私は残党どもを倒しにいく。ハルタ一緒にこれるか?」
「はい! もちろんです」
「俺はどうすれば?」
「タツキ、お前は宿にいるシーナたちの安否を確認してきてくれ。確認できたら村の入り口で落ちあおう」
「わかりました」
ハルタとノルデンは残党を倒しに村の中へと向かっていった。
俺はノルデンに言われた通りに宿へと向かった。宿は半年前と全く容貌変えておらず、懐かしさを感じた。村が襲撃された割に他の民家と違って崩れている部分が少なかったからおそらくノルデンが守ってくれていたのだろう。
宿のドアに手をかけて入ると廊下の奥から空の便を構えて走ってくる少女の姿があった。
「入ってくるなーー」
「おいおいおい、俺だよ。シーナ」
彼女は一瞬立ち止まって俺の顔を見つめてきた。俺の顔を確認するとホッとした顔をした。
「え……。タツキ!」
彼女は再び走り出し、苦しいぐらいのハグをしてきた。俺は重みに耐えられず二人重なりあったまま床へと倒れた。
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