魔法との出会い
第11話です。
翌日も二人で学校へ向かった。教室に入って自分の席に向かうとそこにはすでにウルドの姿があった。ウルドの体の所々に傷があった。
「ウルド、その傷どうしたんだ? もしかして昨日のギルドの任務でできたのか」
「そうさ、昨日のモンスターは手強かったけどなんとか倒し切れた。お前たちなら死んでいただろうな」
ウルドは高笑いをした。あいかわらず自分の立ち位置を理解していなかった。
「本当か? どうせ昨日も上級冒険者に助けられて帰ってきたんじゃないか」
「ど、どこでそのことを聞いたんだ」
ウルドは顔をしかめた。
「昨日俺たちもギルドに行ってその時にヘルヘイムさんから聞いたんだよ。もう少し自分のレベルに合った任務を受注したらどうなんだ」
「あやつめ。任務のレベルを下げては意味がないと思っているからな、お前たち下級冒険者とはちがうのさ」
「俺たち次の学校の休みの日にこのクラスいるカナリアっていう子とタツキで植物型モンスターの討伐任務へ行くんだ。最初の任務で不安だから自称上級冒険者であるお前についてきて欲しいんだけど来れる?」
ハルタが聞いた。
「いいだろう、そこで俺のお前達との実力差をみせつけてやろうじゃないか」
「じゃあ、よろしくな」
「あ、あのここ座ってもいい?」
カナリアが隣の席にやってきた。
「カナリア、おはよう。いいよ誰も座ってないから」
「ありがとう、その方は?」
カナリアが耳元で聞いてきた。
「こいつはウルドって言うんだ。央都の上流階級貴族の出身で少し癖がある。自称上級冒険者らしいから今度の任務について来てもらうことなった」
「そうなんだ。ウルドくんでいいんだよね、私はカナリア。これからよろしく」
「なんて礼儀正しいんだ、この二人とは大違いだ。俺はウルド。こちらこそよろしく頼むよ」
ウルドは女に弱いらしい。
「皆さんおはようございます。それでは授業を始めましょう」
教室にフレイヤ先生が入ってきた。
そして今日も授業が始まった。フレイヤ先生によると今日は待ちに待っていた剣術と魔術の授業を行うらしい。
「ではこれから魔術の基礎のきを教えていきます。これから授業で使う教科書を回します」
フレイヤ先生が手を振ると前の教卓に重ねられていた分厚い本が魔法によって浮いてクラスの人のいる机へと振り分けられた。本にはミドロジャ語で魔術と書かれていた。
「それでは授業を始めます。まず魔術とは何か。皆さんは魔術とは言われたら戦闘に使うものと思い浮かべる人が多いかもしれませんが、本来魔術というのは私達が生活する上で手助けしてくれるものです。例えば水が欲しい時や火が欲しい時、何か冷やしたい時に氷が欲しい場合などそう言った時に魔法は私たちを助けてくれます。こんなふうに」
フレイヤ先生はみんなの前で手から火の玉や氷の塊、水を作り出してみんなに見せた。現実の世界では不可能なことだったせいかとても感激した。
「魔法はとても便利なものだということがわかったと思います。魔法には属性が存在します。属性はそれぞれ火、水、木、氷、雷、風、地光、闇属性があり、魔法の全てはこれらの属性に分類されるのです。
そしてこの魔法を繰り出すには詠唱と杖が原則必要となってきます。でも私のように熟練者になれば無詠唱、そして杖なしで魔法を繰り出すことができます。その魔法が繰り出される根源の力は皆さんの中に秘められている潜在魔力量です。魔力量のよって繰り出せる魔法の力量が変わってきます。さて、説明はこのぐらいにして実際に代表的な魔法を扱ってみましょうか」
先生が詠唱する代表的な魔法を復唱して繰り出した。
「『イグニアが幻出し異能は我が下に、実りし灯火は汝に灼熱の災いをもたらすフラーマ』」
詠唱すると杖から炎が出て球体になった。
「凄い、ハルタくんの火の玉とっても大きい! 恐らく潜在魔力量が多いのね」
カナリアが言った。ハルタの火の玉はクラスの誰よりも大きく力強かった。おそらく潜在魔力量の多さに比例して魔法の力量が決まってくるのだろう。
「これは火属性魔法の中で最もよく使われている魔法です。杖を振ればこの炎が振った方向へ炎の玉が飛んでいくの。杖を手から離せば魔法は消滅して火の玉は消えます」
杖を手から離すと火の玉が消滅した。
「次は水属性魔法ね。代表的なものを唱えるからみんなもさっきと同じように続けて詠唱してみてください。
『アクエルが幻出し異能は我が下に、奔流の如く汝を吹き払う、彗星の蜃気楼アクアピア』」
フレイヤ先生が詠唱すると先生の手からは水の玉が現れた。俺たちも続けて詠唱すると同じように水の玉が生成された。
「こんな簡単な魔法はできて当たり前だぞ。全く底辺の奴らは」
ウルドは手を持て余して余裕な表情を浮かべていた。
俺の杖の先にも水の玉ができていたが周りのハルタたちと比べて圧倒的に小さかった。どうやら俺の潜在魔力量は少ないらしい。
フレイヤ先生はその後も各属性の代表的な魔法を詠唱して教えてくれた。そして休み時間になった。
「しかし面白かったな魔術の授業、これから自分で教科書を読み進めてもっと強くなろうっと」
ハルタはやる気満々な様子だった。
「確かこの後は模擬戦闘場で剣術の授業だよね」
カナリアが聞いてきた。
「ああそうとも。俺の本当の力を見せてやろうじゃあないか。楽しみにしておくがいい」
そう言い残してウルドは教室を出ていった。
「本当に懲りないな。それよりフレイヤ先生ってあの格好で動けるのか」
「フレイヤ先生はああ見えてユグドラシルで最強のうちに数えられる人だよ。あの人実は冒険者もやってて、最近とっても強いドラゴンを一人で倒したって聞いた」
「そんな強いのか。全然そういうふうに見えないけど」
「俺たちも早く行こうぜ」
ハルタの後に俺たちは続いた。
模擬戦闘場へいくとそこにはさっきの授業の姿とはうって変わって鎧と純白のマントに体が包まれたフレイヤ先生がいた。
フレイヤ先生の前には防具が並べられていた。
「ここから防具を各自1セットずつ取っていって。これは卒業まで学校の授業で使うから大切にね」
防具を手に取ると想像より遥かに重みがあった。
「それではこれから剣術の授業を始めるわ。まずこの防具について、この防具はいざというときに皆の体を守ってくれる重要な存在よ。もう一度言うことになるけど大切に。付け方は今から教えます」
フレイヤ先生が順を追って装着の仕方を丁寧に教えてくれた。全ての装備をつけ終わるととても動きづらかった。
「皆似合ってるわよ。あらウルドさん、あなたは自前のものなのね」
「もちろんですとも先生。自分のが一番馴染んでますし俺はそこら辺の素人とは違いますから」
「そうですか、期待できますね。そんなに言うなら先生も戦ってみたいくらいです」
「いいですよフレイヤ先生、俺も先生と戦ってみたかったところです。一戦やってみましょうか」
「ええ、喜んで」
フレイヤ先生は笑顔でウルドの誘いに応えた。すると周りがざわつき始めた。
二人は中央へ行き、お互い剣を構えた。
「私はあなたの攻撃を受け続けるわ。あなたに決して攻撃はしないから安心して全力でかかってきなさい。時間は一分間。いつでもかかってきていいわよ」
ウルドはフレイヤ先生に向かっていった。なんとなく分かりきっていたことだが彼は俺たちよりも足が遅くて剣をの重みを体が支えきれていなかった。ウルドはなんとか勢いを保ち先生へと攻撃したが先生は難なく攻撃を全て弾いた。彼は先生の防御に押されて後ろへと飛ばされてしまった。諦めがついたのか彼は剣を地面に置いた。
しかし、彼はまだ諦めていなかった。彼は懐から杖を取り出しそして何やら詠唱をして魔法を繰り出した。彼は繰り出したのは授業で扱った雷属性の魔法の一種だった。彼の放った閃光は凄まじい速さでフレイヤ先生の元へ向かったが先生も杖を取り出してその魔法も難なく弾いた。するとウルドは先ほどより長い詠唱を始めて先ほどとは異なる魔法を繰り出した。その魔法は電撃をいくつも放った。先ほどよりも威力が増しているように見えた。フレイヤ先生の元へ電撃がたどり着くとその魔法が爆発反応を起こして、辺りが爆発による黒煙がその場に漂い二人の姿は見えなくなった。煙がなくなると変化が何もない先生と疲れ果てて地面にひれ伏しているウルドの姿が現れた。
「ちょうど一分経ちました。今は剣術の授業ですよ。剣術をつかわなければ意味がありませんよ。でもウルドさんは魔術がとても優れていますね。剣術は今ひとつでしたが」
「悔しい、俺が負けるとは何事だ。だが負けを認めよう。先生は強い」
ウルドは珍しく負けを認めた。たまにはこういう感情もあいつは味わったほうがいいに違いない。
「さて、そろそろ授業を始めましょうか。今日はまず基礎についてです」
最初の授業はノルデンさんが教えてくれたようなものばかりだった。今まで練習は素振りしかやってこなかったから素振りの練習では先生によくできていると褒められた。他の人が素振りの練習をしている間先生は人形を魔法で動かして実戦を想定した練習の仕方を暇を持て余していた俺とハルタだけに教えてくれた。相手との間合いの取り方から人形の動かし方まで細かいところを教えてくれたから宿の屋上でもやろうと思えばできそうだ。
あっという間に時間が過ぎて学校の終業のチャイムがなった。身につけていた防具を外して学校を出た。
「さっきの授業タツキくん達は何を教えてもらっていたの?」
カナリアが聞いてきた。
「相手との実戦での闘い方だ。まだ身に付いてはいないけど」
「いいなー。私はまだ素振り練習だよ。魔術の方で頑張るしかないか」
「ウルド、今日はすごかったよ。今度使ってた魔法を教えて」
ハルタは魔術の虜になったようだ。
「あの教師は化け物だ、俺の全力が通用しなかった。魔法なんて自分で調べろお前に教える義理はない」
ウルドは相当落ち込んでいた。
「冷たいな、教えてくれたっていいじゃないか」
「さて、ここで二人とはお別れだなまた明日」
俺たちは宿までの道の途中で二人と別れた。
帰ってから早速今日教わった練習を屋上でやってみることにした。もっと強くなってノルデンのようになりたい。いつしか俺の目標はノルデンの強さに近づくことになっていた。
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