スモルリンのEランクダンジョンに潜る
ギルドでEランクに昇格した翌日、メイは若干落ち込みながらスモルリンのはずれにある、Eランクダンジョンに向かっていた。
メイは、しばらくこのスモルリンの街で、ダンジョン探索に打って出ようと考えていたため、昨日ギルドを出た後、借家を借りるために不動産屋に行ったのだが、家を借りることができなかったかのだ。
というのもこの世界では、黒髪の人間は「不遇」であったり「忌み子」であったりという風に呼ばれることがある。これは、ほとんどの人が魔法を使えるこの世界において、黒髪で生まれてきた人のほとんどの魔法の扱いが他よりも数段も劣っているからだ。この理由については、いまだ解明されておらず、一部の熱心な研究者が研究しているが、国からの支援も少ないため、放置されているような状況である。
そんな状況もあり、黒髪の人間が冒険者などの戦闘を伴う職業で成功する可能性はかなり低いと言われているため、いくらEランク冒険者という証明があったとしても、黒髪の人間では収入に関する信頼を得ることができず、貸してもらうことができなかったのだ。
結果、しばらくの間は割高になってしまうが、宿屋に泊まることになった。
(宿屋でも大丈夫なくらい魔物を倒せばいいんだ!それが強さにもつながるし!)
メイはそんな風に自分を奮い立て、ダンジョン入口の管理棟に入っていった。
少なくとも、ドベリン国内で認知されているダンジョンは、一つを除いて冒険者ギルドが管理している。出入を管理することで、危機管理を行っているのである。
メイが管理棟の中に入ると、中にはメイの予想していたより多くの冒険者がいた、やはり、冒険者の花形であるダンジョン探索に取り組む人は多いのだろう。
人が多いため、メイが注目を集めることはなかったが、周りからこそこそとした声は聞こえてくる。
とは言っても、メイも11年間生きてきて、そんなことは何度も経験しているため、とりあえず変に絡まれることさえなければいいなぁと、のんきに入場の列に並んでいた。
結局今回は、絡まれることなく入場することができた。メイは、初めて入るダンジョンにわくわくしながらも、危険溢れるダンジョンで浮足立たないように気を引き締めなおすのであった。
このスモルリンにあるダンジョンは入り口の洞窟を1階だとすると、下に続いて全部で10階層存在しているEランクダンジョンである。
Cランクまでのダンジョンは、攻略されてもつぶされることはなく、冒険者たちの稼ぎやトレーニングのポイントとして、ギルドによって保管されている。
このスモルリンのダンジョンも、E,Dランク程度の冒険者達にとっての、良い修行の場となっている。
ここのダンジョンには、主にゴブリンと呼ばれる、緑色の肌をした体長1,5メートルほどの人型の魔物が存在している。
だんだん下の階層へ下がっていくと、そのゴブリンたちの知能レベルが上昇したり、上位個体と言われる、能力が上昇したりしているゴブリンが現れ、探索が困難になる。
一番奥には、ボス部屋と呼ばれる部屋があり、D,Cランク程度の冒険者が数人で倒せるレベルの魔物が居座っている。
ダンジョンに潜る冒険者は、そのボスを倒し、それによって得られる素材や名誉を手に入れようとしているのだ。
Eランクとしては、高い戦闘能力を持っているメイは、人の多い1,2階層をササっと抜け、3階層にたどり着いていた。
(人の数が減ってきたから、魔物討伐に集中できそう)
メイはそう思いつつ、若干魔力の循環速度を上げ《身体強化》を施し、周りに注意を払う。
すると、前にあるT字路の右奥側から、魔物らしき気配を感じ、壁に張り付いてそちらに目を向けると、3体のゴブリンがのんきに歩いているところを発見した。
メイは、腰にさしてある剣を抜くと、地面を蹴り一気にゴブリンに接近する。
まず、一番手前にいたゴブリンの反応を許さないまま首を切りつける。そのゴブリンは首から血を吹き出しながら倒れる。
一体目が倒れる前に、返す刀で二体目を切る。
すると、メイに気づいた3体目が持っていた棍棒で殴り掛かってきたが、メイは剣を振った流れのまま、その棍棒を躱し、ゴブリンの腹に膝蹴りをくらわす。
腹に蹴りをくらったゴブリンは、そのダメージから両膝を地面につく。
そうなると、メイの目の前には、ちょうどいい高さにゴブリンの隙だらけの首が現れるので、そこを切り裂いて、無事に3体のゴブリンの討伐を完了した。
「…ふぅ」
メイは息を整えると、早速ゴブリンの解体を始める。ゴブリンは、素材として使えるところがほとんどないので、若干の肉と一緒に魔石をはぎ取って終了である。
ダンジョンでは不思議なことに、絶命した生物がダンジョンに接した状態でしばらく経つと、その死体はダンジョンに吸収されるという現象が起きる。
そのため、良い素材となる魔物を倒したときは、早急に魔物の解体をして、確保しておく必要があるのだ。
メイにとってゴブリンは敵とは言えず、その後もゴブリンを適当に倒しながら進んでいき、7階層までたどり着いたのであった。




