全ての始まり
「遅かったね勇者サマ」
大岩の上に座った少女は長い金髪を靡かせ、そう言った
その岩の下で跪いている青年は勇者と呼ばれるには随分とみすぼらしい格好をしていた
「私との契約、覚えてるよね?」
「…ああ」
「ふふっ、よかった」
男を魅了するような美しい笑みを見せた
「あなたの記憶を聞かせてよ、勇者サマ」
「ああ」
勇者と呼ばれた青年は語り始めた
その時、俺は、知らない場所に居た
「勇者様が来てくださったぞ!」
「これでこの国も安全だ!」
「皆の者!落ち着けい!」
少し遠いところで高そうな椅子に座った人がそう言った
「勇者よ、名前を教えてはくれんか」
「え、と、淪勇 隆です」
「ここはライト・イーヴィル王国じゃ
この国は…いや、この世界は魔法の脅威に晒されている
その脅威を退けられる者としてお主は選ばれ、召喚された
勇者、リュウよ
どうか、この世界を救ってはくれぬか」
「はい、絶対に救ってみせます」
「そうか!よろしく頼んだぞ!
これは少しばかりの気持ちじゃ」
お金と防具を手に入れた
「ありがとうございます」
「こんなものしか用意できなくてすまんのう…この国も限界に近いのじゃ」
「いえ、大丈夫です、行ってまいります」
「勇者よ、頼んだぞ!」
「はい」
こうして、俺の旅が始まった
ー現在
「ふふ、この時はちゃんと正義の味方ね、それなのにどうして王国軍に追われるなんてことになったの?」
「向こうが悪いんだ!向こうが、俺らを」
「そんなつまんない話しないで」
「君が聞いて、」
「私との契約をした時の条件、覚えてる?」
「…っ、ああ」
「私の命令は?」
「…絶対だ、すまない」
青年は悔しそうに下唇を噛みながらそう言った
「分かってるなら、歯向かわないで」
「すまなかった」
「次やったら許さないから」
「ああ、もうしない」