朝起きたらロボットになっていた
朝起きたらサラリーマンの梶田はロボットになっていた。
顔は四角く金属質で頭にはアンテナが立っている。
彼の身に一体何が起こったのか。
朝起きたら虫になっていたのはカフカの変身だが、私の場合は朝起きたらロボットになっていた。
待ってほしい状況がわからない。
私の名前は梶田亮平、バリバリのサラリーマンだった。
鏡を見てみる。
顔が四角い、胴体も四角い、更に金属でできている。
しかも髪の毛の代わりにはアンテナが立っている。
手を見てみる。Uの字型のマジックハンドだ。
手首を回してみるとくるくると回った。
ボトルのキャップを外すのに便利そうだなぁと現実逃避しそうになる。
おかしい昨日までは私は普通の人間だったはずだ。
落ち着いてコーヒでも飲もうと冷蔵庫にあるアイスコーヒーを取り出す。
さてさて、、、茶色い液体をコップに注いだあとよく見たらボトルにOILと書かれているのが気になる。
匂いを嗅いで見る。
オイルですねこれは。
飲めるかこんな物。
いや、今はロボットなのだからこれを飲むべきなのか?
そもそもロボットって口から飲めるのだろうか?
いやいや大体なんでコーヒーがオイルに変わっているのか問題はそこではないだろうか?
現状を考えればもっと考えることがありそうだがまずはそこから考えよう。
1.自分が間違えてコーヒーとオイルを間違えて買った。
2.誰かが入れ替えた。
どちらかといえば2だろう。
なんだよコーヒーとオイルを間違えて買うって。
つまり侵入者がいたということか?
念の為アパートの玄関の扉を確認しに行く。
鍵は、、、かかっている。
ちなみに窓も鍵がしまっていた。
どういうことなのだろう。
ウンウン唸って考えてみたがどうにもこうにも答えは見いだせない。
外に助けを求めたいがこの体で外に出たらどうなるだろう。
なんかのコスプレと思われればいいが、本物のロボットとわかれば。。。
こんな自動で動くロボット早々ないはずだ。
研究所に連れて行かれて調査分解される将来が見えてゾッとした。
人と出会うのは避けなければ。
しかしそろそろ仕事に行く時間だ。
どうすれば。
なんて考えていたらいつの間にか随分と時間が経過していたようだ。
もう正午だ。
玄関のインターホンが鳴った。
こんな姿では出られない。無視しようと思ったがやけに連続して鳴らしてくる。
なんでだろうと思ってふとスマホを見ると着信が大量にきていた。
マナーモードにしていたので気づかなかったようだ。
着信履歴を見てみると会社からのようだ。
となると・・・
ドアが叩かれる。
「おい大丈夫か!生きてるか?」
外から上司の怒鳴り声が聞こえた。
つまり会社に出ず、電話にも出ない状況の私を心配して家まで来たようだ。
どうしよう。
オロオロしているうちに状況は進んでいく。
「倒れているかもしれません。大家さん鍵を開けていただいて良いですか?」
「わかりました」と大家さんの声が聞こえてすぐに鍵が空いた音がした。
まずい。
私が撮った行動は多分一番馬鹿な方法だっただろう。
つまりロボットの人形のふりをするだ。
部屋の片隅で直立不動で立つ。
これで相手からはただのロボットの人形だと認識されるはず。
そしていよいよ上司と大家さんが踏み込んできた。
「倒れているかもしれません。場合によってはすぐ救急車を・・・」
なんて声が聞こえる。
無視だ無視、直立不動、私は人形。
部屋に入ってきた。上司がまず見たのは人形のふりをしている私だった。
「・・・何をしてるんだ梶田?」
上司は困惑しているようだ。
人形のフリは失敗だったようだ。
しかしなぜロボットの体なのに私を認識できたのだろう。
「これはわけがあって。。。朝起きたらこんな体に・・・」
「何を言ってるんだ、せめて電話にでろよ!心配したんだぞ」
おかしいなにか会話が噛み合っていない気がする。
「いやいや、この状況で混乱しているんですよ。体はロボットになっているしコーヒーはオイルだし」
「ロボット?コーヒー?」
上司はますます混乱している。
ん?そういえば何かがおかしい。
もともと上司は四角い顔のいかついおっさんだがこんなにも四角くはなかったはずだ。
しかも金属質のような・・・
「ああ、そういうことですね」
ふと大家さんが急に喋った。
「ちょっと失礼しますねー」
プシュプシュっと、いつの間にか大家さんの手に握られてた銃のようなものが2連続で発射された。
私と上司に直撃する。
「なにを・・・」
「大丈夫ですよ、すぐに終わりますから」
そして目の前が暗転した。
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目が冷めた。
あれ?何をしていたのだろう。
時計を見た。
昨日はえっと・・・なんか自分がロボットになっていた夢を見ていた気がする。
念の為鏡を見に行く。
うん、普通の顔だ。
何だったんだろうあれは?
夢にしてはやけにリアルだったような。
おっと、もうそろそろ会社に行く時間だ。
バタバタと準備を整え私はアイスコーヒーを軽く飲んで出かける準備を整えた。
焦って階段を降りる。
掃除をしている大家さんがいた。
「あら梶田さんおはようございます」
「おはようございます」遅刻しそうなので返事がおざなりになってしまった。
「あ、梶田さん」
呼び止められる。何かあっただろうか?
大家さんが自分の頭に指を指して笑いながらこう言った。
「アンテナ立ってますよ」
ちょっと恥ずかしい。私は頭をなでつけた。