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つまらないから是非観てほしい

作者: と~~~一

CAST

男A

男B

男C

男D


場所は都内のファミレス。時刻は夜。

男性四人が同じテーブルで雑談をしている。

A、Bの議論がエキサイトしていく様を、C、Dは傍観している。





A「こないだアレ観てきたんですよ。ソピルベーグ監督の」

B「ああ、『ベビープレデターワン』ね。どうだった?」

A「いや~、マジで観てほしいっす」

B「そんなに?」

A「ですです。多分オレ、もう一回観に行きますわ」

B「へー。観に行こうか迷ってたんだよねー。俺も行こうかな」

A「絶対行った方がいいっす」

B「どんなだったの? ネタバレとかナシで」

A「監督の愛を感じるんすよ。作品とか、日本とかへの」

B「へー……」

A「『ああ、ここでこう来るんだ!』とかが、すげーわかるんすよ」

B「へー、面白そうだね。観に行こうかな」

A「絶対行った方がいいっす」

B「ブルーレイ出てからでもいいかなって思ってたんだけど」

A「いや、スクリーンで観た方が絶対いいです。オススメします」

B「そう。じゃあ、観に行ってみようかな」

A「観たら言ってください! 話しましょうよ!」

B「そういえば、俺もこないだ映画観てさ」

A「何観たんすか?」

B「『ゾンビビンバ』っていうの」


   男C、D、「ああ、聞いたことある」というようなリアクション


A「『ゾンビビンバ』? なんすかそれ?」

B「いわゆるゾンビ物なんだけどさ」

A「でしょうね」

B「ビビンバ食った人がゾンビになっちゃうってヤツなんだけど」

A「なんすかそれw 超面白そうじゃないすか」

B「いや超つまんねーんだよ」

A「つまんねーんすかw」

B「マジでね、ヒドいよ。ガチで時間の無駄」

A「なんでそんなのススメるんですか?」

B「観てほしくって、ホンットクッソつまんねーから」

A「なんなんすかw そのつまんなさが逆にってことですか?」

B「いや、これに関してはマジでつまんない。マジで金と時間の無駄」

A「なんなんすかw そんなの観たくないですよw」

B「でも、観てほしいのよ。あ、そうだ」

A「なんすか?」

B「じゃあさ、お前がゾンビビンバ観たらさ、ベビープレデターワン観るから」

A「なんすかそのトレードw 成立してるんすか?」

B「するわけないじゃん、ゾンビビンバ、マジでつまんねーんだから。予算も全然安いし」

A「えーw じゃあ、観たくないんすけどw」

B「観てほしいなー、ホント、つまんないから。時間返せって思うから」

A「いや、そう言われるとちょっと興味湧いてきますけどw」

B「でしょ? 観たらいいよ、ゾンビビンバ」

A「じゃあ……わかりました。観てみます、ゾンビビンバ。ですから、ベビープレデターワンも観てみてください」

B「わかった、観る観る。わかんないけど」

A「はあ!?」

B「先に観てよ。そしたら考えるから」

A「なんすか、何をっすか?」

B「だから、まず、ゾンビビンバ観たら教えて。そしたら考えるから」

A「はあw なんなんすかそれw 超不公平じゃないすかw」

B「いやいや、とにかく観てほしいのよ、ゾンビビンバは。ホントにクソつまんないから」

A「わかりましたよw じゃあ、オレがソレ観たら、観てくださいよベビープレデターワン」

B「まあ、うん。考えとく」

A「考えとくじゃなくてw」

B「あー、じゃあ、多分観ないけど、観といてゾンビビンバ」

A「ちょっとw ダメですよ、交換条件じゃないですかw」

B「交換条件にはなってないよ。ゾンビビンバはマジでクソ映画だから。そっちは巨匠じゃん。絶対面白いでしょ。何の交換にもならないよ」

A「いやそれ、なんで自分で言ってるんですかw」

B「事実だから」

A「なんで自信満々なんすかw」

B「そんくらいつまんねーのよゾンビビンバは、間違いないから」

A「そんなのひとにススメないでくださいよw」

B「観てほしいんだよなー、ホントに。あんだけつまんない映画なんて、マジで、滅多にねーから」

A「そんなになんすかw なんか観たくなってきましたw」

B「でしょ? マッジで、金と時間の無駄だから」

A「だからなんでそんなのススメてくるんですかw わかりました、ちゃんと観ます、観ますから。観たら連絡するんで、ベビープレデターワンも観てくださいね?」

B「それは観ないけど」

A「ちょ、なんでなんすか?」

B「でも、ゾンビビンバは観てよ」


   男C、D、お茶を飲んでいる


A「……いやいや、おかしいじゃないですか? なんでオレだけ観なきゃいけないんですか?」

B「自分だけとかそういうことじゃなくて、観てほしんだって、ゾンビビンバ。マジでつまんねーんだよ」

A「でしょうね、わかりますよ。どうせゾンビが感染してくんでしょ?」

B「そう、ビビンバ食って」

A「ビビンバ食ってってw なんすかソレ、非科学的なw」

B「ゾンビは全部そうだよ」

A「そうですけど。いや、無茶ありすぎですって、ビビンバ食ってゾンビって」

B「いや、そこはそうでもないんだよ」

A「へ? そうなんすか?」

B「そう、観ればわかるけど」

A「はあ」

B「で、結果、観たら『金返せ!』ってなんだけど」

A「ちょ、どういうことすかw 結局、設定とかガバガバってことっすか?」

B「設定とかそういうことじゃないんだよ、あの作品に関しては」

A「どういうことすか?」

B「んー、でもこれ以上は、言うとネタバレになるからなー」

A「そうなんすね」

B「とにかく、観てほしい。ガチでつまんないけど、観る価値もないけど、観てみて」

A「わかりましたってば……観ますから、その代わり、ベビープレデターワンも観てくださいよ。お互いに感想話しましょ?」

B「いや、観ないけど」

A「ちょっとちょっと! そこはもう『ウン』って言いましょうよ! 話が進まないじゃないっすか!?」

B「話が進む進まないじゃなくって、ゾンビビンバを観てもらいたいだけだから」

A「先に映画紹介したのはオレですよね!?」

B「そうだよ、もちろん」

A「でしたら!」

B「わかるって。超わかる。気持ちはわかるんだけど、ゾンビビンバが、本当に、マジで、歴史に残るくらい、クッソつまんなかったわけで」

A「はあ……」

B「だって、名作でしょ? 面白いと思うよ俺も、ベビープレデターワン、まだ観てないけどさ」

A「ええ、面白いです。傑作ですよ」

B「でしょ? それならさ、いつかは観ることになるから。必ずさ。名作って、そういうもんだからさ」

A「まあ、地上波とかでもたぶんやるでしょうね」

B「でしょ?」

A「でもオレは、映画館で観てもらいたいんすよー! そして語りたいんです!」

B「俺だってゾンビビンバについて語りたいよ」

A「だから観ますからそれは!」

B「ありがとう、観たら言って」

A「言いますから、ベビープレデターワンも観てくださいよぉ」

B「うーん……」

A「だってこれ……なんなんすか? オレだけ観ても、超悔しいんですけど?」

B「んー……」

A「めっちゃ負けたカンジになるじゃないすか?」

B「勝ち負けじゃないんだけどなあ。俺はただ、ゾンビビンバを観てほしいってだけで」

A「それはもう、わかりましたってば! 何回言うんすかゾンビビンバってw」

B「だって、話題にしてるんだから、出てくるでしょ単語は?」

A「そうですけど、最初はベビープレデターワンの話題でしたよね? それも、オレが振った?」

B「そうだよ」

A「もっとそれについて語ってもよくないすか?」

B「だって言ったら、ネタバレになっちゃうでしょ?」

A「それはそうなんですけど……」

B「逆に、ゾンビビンバは、ゾンビもビビンバもタイトルにあるわけだから。そこは話してもセーフじゃん?」

A「それはそうっすねw」

B「だから話してるってだけで。それに、どうしても観てほしい。ホンット、つまらないんだって。ビックリするから」

A「……わかりました。もう、わかりましたよ」

B「観てくれる? ゾンビビンバ?」

A「だから、観るってずっと言ってるじゃないですかw もうわかりました、ベビープレデターワン、観てくれなくても大丈夫です」

B「えっ、じゃあゾンビビンバは!?」

A「観ますよ、もう」

B「マジで!?」

A「はい」

B「嘘じゃないよね!?」

A「嘘じゃないっすよ。てか、映画好きだし、たまにはつまんないの観るのも、話のタネにはなりますからね」

B「……そう、そういうこと。俺がいいたかったことは、そういうことなの」

A「はあ、もういいっすけど……じゃあそろそろいっすか? この話題?」

B「なんか悪いな」

A「気にしないでください」

B「やっぱ俺も観に行こうかな、ベビープレデターワン」

A「いや最初に言ったら終わってたこの会話!」

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