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 翌朝、扉の隙間から朝陽が差し込みはじめた早朝。

 結局暗闇が怖くてほとんど眠れぬ一晩を過ごした私は、静かに家の扉を開けて外に出た。

 朝陽に輝く奇麗な泉と清々しい空気が、淀んだ匂いを纏う私には眩しい。


「フッ……」


 朝陽の温かさがとても心地良い中、私は自嘲の笑みを浮かべながら昨日掘った穴に、ツボの中身をぶちまけて土で埋める。

 穴の中には一晩で私の体から育成されてしまった物体。脂汗が出るほど我慢したけど、どうしてもトイレに行きたくなってしまった結果生み出されしソレを、無言で埋める。証拠隠滅。ナイナイ。

 誰もいない森の中とは言え、切実にせめてトイレットペーパーが欲しいと、私は唇を噛み締めて涙を流した。





 脱出だ脱出!

 こんな家、さっさと出て行ってもっと文明のある場所にいこう!具体的に言うならトイレとトイレットペーパーがある場所へ。火もある場所が良い!


「こんにゃろめ、こんにゃろめ」


 行き場のない怒りの衝動で土で埋めた穴を踏み均し、この後の移動の準備を考える。

 苺もどきは昨夜お腹が空いて全部食べてしまったから、この後の移動時に収穫しながらの移動をしなければならない。水筒代わりとして革袋にお水も入れて持ち歩かないといけないな。


 あの苺もどきだけは今の所安全に食べられる物と認識しているけど、流石にあれだけでは生きて行けないので、早めにこちらの世界の情報をゲットしなければと気合が入る。

 食べ物、通貨、トイレットペーパーがあるのかないのか等、生きて行く上で必要な知識は山ほど欲しい。

 ……――せめて火が起こせれば良いのだけど、と何度も考えるが、昨日の様子じゃ木での火おこしは簡単に思えなくて、今の私に温かいご飯を食べる事は無理そうだとほぼ諦めている。




 ちなみに。

 実は昨日、家の中で暗闇怖いと涙目で膝を抱えながら、そうだここ異世界じゃん、魔法とかってあるんかな、と色々試した。


 静かで怖かったのと暇だったのもあって、雰囲気も付ける為「我は勇者の末裔、光よ今ここに集え!ふん!」とか、「フハハハハ、この魔王に相応しき暗闇、大変心地良いぞ。ならばこの世界の光よ、全て我が手に来りて、意のままになれ。ハッ!」とか、シンプルに「光」「明るく」「ヘイ、神様。明かりつけて」「もういいじゃん、私頑張ってる。ご褒美、電球」とか、色々とそっ閉じしたい歴史を作った。

 だけど『しかし、まほうは、つかえない!』とばかりに、何にも起きなかった。繰り返す。何も起きなかった。ただ恥ずかしい思いをしただけだった。


 だから私の心は朝からささくれ立っている。神様が目の前に現れたら迷わず腹をグーパンするレベル。それもあって、もう絶対ここから出てトイレがある場所に行こうと、深夜に固く決意していた。



 今日の私の目的は森の出口を求めての移動及び、人を見つけて助けを求める事。可能ならば街道か、人の手の入った道を見つけたい。飲み水を持って、苺もどきを朝ごはん代わりに摘まみながらの移動だ。

 近くの村か町まで辿り着き、そこで誰かと出会って友好な関係を築き上げ、私の生活を助けて欲しいという他力本願なヤバい計画。そして何気にやる事盛り沢山。


 汚物は埋めるに限るぜー、証拠隠滅だぜーと、これでもかと土を踏み均しながら、空になったツボだけ洗って元の位置に戻したら出発しよう、そんな予定を立ててみた。






「片付けよーし、戸締りよーし、忘れ物もなーし。それではお邪魔しましたー!」


 持ち歩き用の革袋にお水を入れて、お尻ふき用の葉っぱを棚の中にあったロープを借りて結わい、ウエストからベルトの様に垂らす。ついでに水筒よろしく革袋をぶら下げれば、ちょっとした遠出ファッションの出来上がりだ。


 家の中の備品を使えばもっと何とかなったのかもしれないけど、もしもこの家が誰かの家で今は留守にしているだけだったら……単純に今は使われていないだけだったら……そう考えた不安からロープだけの失敬にとどめた。


「そろそろ出発かな……」


 どちらに向かうべきなのか分からなかったので、とりあえず家をスタート地点にして、自分の影がある方へ向かう事にする。


 この世界では東から太陽が昇るのか分からない。けど、昨日は夕方と夜を経験しているから陽は沈む事は確定だ。ならば、森の中では分かり難いかもしれないけど、影が無くなったお昼頃にある程度の移動距離が稼げなかったり街道発見の見込みがつかないのならば、最悪、泉の家まで引き返す事を考えなくちゃならない。

 だから自分の影が見える方向へ進む事にした。これが正解なのかさっぱり分からないけど。


 もう一度ここに戻ってくるのか来ないのか分からないが、出発する前に改めて泉と家を見る。

 火が点けられたら、苺もどきを煮込んでそれこそジャム作りたかったな。

 そんな淡い夢が詰まった、神様が転移させてくれた場所。叶うならいつかまた来よう、と心に決め、私は森に向けて歩き出した。





 もしかしたら泉に引き返すかもしれない。

 だから目印となる物を木に付けて進んでいく。そして苺もどきも見つけ次第収穫させてもらい、ちょっと食べながら袋に入れていく。

 それらを同時にこなしながら進み、木漏れ日の光が作る影がもう少しで無くなる頃。つまり昼手前ぐらいだろうか。

 結論から言う、全然進んでない!ただただ疲れた。そして今、私はもと来た道をダッシュで引き返している。

 理由?

 なんか鹿みたいなのに遭遇して、ついでに威嚇されたからだよぉ!




 そう、あれは遡る事5分くらい前。

 木への目印として、お尻ふき用の葉っぱの蔦をむしって木の胴体にぐるぐると三重位に巻いて、ついでに葉っぱを垂らして分かりやすくしておく。その木から近くに見える範囲に、同じように蔦を巻いて……なんて丁寧に目印作っていたら、それはそれは時間がかかって私は泉からあまり離れた場所へは進めていなかった。


 だけど迷子が怖いからと地道に丁寧にやっていたら、あっという間にお昼近くになってしまったらしい。このまま先に進むべきか、やっぱり泉に戻るべきか考えながら蔦を巻き終え、ため息つきつつ進行方向へ振り返ったら、ちょいと離れた場所になんかの生き物がじっとこちらを見ていたのに気が付いた。



 鹿のような大きさと、後頭部に向けて伸びている鹿らしき角。なんというか、その角も顔つきも鹿っぽかったから、私の中でアレは鹿。

 見つめあうこと暫し。両者動けず。でも鹿さんは耳だけ時折パタパタと動かしてる。なんか聞こえるのか警戒しているのか。

 思わずゴクリ、と漫画のように唾を飲み込みつつ、無害だよアピールの為、出来るだけ優しい声で話しかける事にしてみた。


「……こ、こんにちはー。鹿さん、この近くに住んでいるのかな?」


「……」


「はじめましてー、わたし」


「キィエ――――ェエエ!!」


「ひぃぃぃーー!!」



 優しく話しかけたのに!優しく話しかけたのに!

 なんか威嚇するように突然雄たけびをあげられて、その音量と言ったら私の体がビクゥ!と飛び跳ねるほどの甲高い雄たけび。

 突然の鹿さんの雄たけびに驚いてこちらも悲鳴を出せば、鹿さんは更にもう一度雄たけびをあげられて、いきなり突進してきたように見えた。



「キィエエェェェェ!」


「ひやああぁぁぁぁああ!!」



 薮だとか木の枝だとかが体中や顔に打ち付けてくるけどそんなの構っていられない。猛ダッシュで来た道を引き返す。

 途中、怖さから一瞬だけ後ろを振り返ろうかと思った。そんな暇があればもっと走るべきなのかもしれないと思ったけど、恐怖心から余計に今どんな状況なのかが知りたくて無理矢理振り返ったら、鹿さんは思ったより少し離れた所でこちらを見ているのを確認できた。


 もう鹿さんは走って追いかけてはこない。けど、ものすごく警戒しているかのようにじっとこちらを見ている。

 そんな森に、もうお昼にもなろうかというこの時間帯、方角すらまだよく分かっていない状態で街道や人里目指して進もうだなんて到底思えず、私は急ぎ足で泉のほとりの家に戻る事にした。

 というか、素直に言う。

 不肖怖がりなこの私、この森を抜けて村とか街道を目指そうという気持ちが正直、ぽっきりと折れました。



「ううっ、もうヤダ怖い。さっきのは獣?それとも魔物なの?」


 さっきの鹿さんが獣なら、きっともっと怖いであろう魔物がいるんでしょ。この森にいるのかは分からないけどさ。


 半泣きで帰る私は、何度も何度も後ろを振り返り鹿さんが追ってきていないか確認した。

 そして泉のほとりの家に着いたら、とりあえず今朝片付けたツボを再度確保して、その後はずっと家に引きこもった。





 その日の夕方。

 水筒代わりに用意しておいた革袋から水を飲み、少しだけ採る事ができた苺もどきを食べて過ごし、そしてもう一度火の点火に挑戦しようと木と木をこすり合わせてみたけど、何度挑戦してみても火って本当に簡単に点かないんだね。勉強になったよ。


 これからどうしよう、今夜どうしよう、明日からどうしよう。

 漠然とただただ不安が募る。こんな時誰か心優しい人が訪れて助けてくれないかなー、ラノベのように話が進まないかなー、なんて思ったりするけど現実は誰も来ないのが当たり前。


「あの鹿さんは獣だよね、多分」


 今日遭遇した鹿さんを思い出して、改めて口にする。

 神様は魔物がいるって言っていたけど、魔物ってこの世界ではどんな位置づけされているんだろう?人を襲う?家畜を襲う?それとも人と共存しているタイプもいるのかな。


『俺の世界には魔物がいるよ。弱い魔物も、強い魔物もね』


 あの言い方からすれば、モンスター的な敵として考えるべきかな。出会い頭にレディ・トゥ・アタック状態で襲ってくるのかな。もしもそうならこの家にいるのも、今後森の中に入るのも怖さ倍増。ってか無理。おんも怖い。お外怖いー!


「魔法もない、手助けもない、トイレもトイレットペーパーもない!お外も怖いよー、うわーん」


 そんな泣き言を言いながら、この日はもうやる気も何にも起きなくてふて寝した。






 翌朝。

 昨日起きた時間よりも遅い時間帯に、私は未だもぞもぞとベットの上で寝転んでた。

 お腹が空きすぎて動きたくないのと、この後また苺もどきを採りに行かなきゃならない事が面倒くさいのと、お外が怖い気持ちでウダウダしてるけど、そろそろ動かないと飢える。


「あー、喉も乾いた。いい加減起きなきゃ」


 薄暗い部屋の中で一度伸びをしてから、トイレ用のツボ持って外に出ようとする。

 昨日は汚物用の穴を掘ってないから穴掘りから始めなきゃと思って、玄関の扉をあけたら泉の周りにはなんか動物がいっぱいいて、驚いた私は静かにそのままゆっくり扉を閉めた。


「昨日はいなかったのに、なんで今日はこんなに動物がいるんですか神様……」


 昨日は今日より早い時間帯に起きていたけど、この家の周りでは動物とは出会わなかったのに。なんで今日に限っていっぱいいるんだ?


「いやいや、ちょっと待て。何匹いた?なんか凄く数が多くなかった……?」


 もう一度扉を開ける勇気は無かったので、壁の隙間から僅かに見える範囲を見ようと片目で覗き見る事にする。

 すると、昨日見た個体かは分からないけど、鹿さんと四本腕のお猿さんと、イノシシのような……イノシシ……あれはイノシシか?細長い足を持つイノシシさんが見えた。その中にはさっき扉を開いたからか、こちらをじっと見つめているのも何体かいる。

 ここでもう一度扉を開いて外に出るって?無理。絶対無理。そんな度胸あったら、そもそも昨日鹿さんと出会った時に逃げていない。


「今まで遭遇しなかったのは奇跡だったのかな」


 扉の近くにツボを下ろして地面に座り込みながら呟いた時、扉の外に何かを感じてもう一度隙間から外を伺う。すると、鹿さんらしきつぶらな目がこちらをじっと見ていた。


「ヒイィィ!」


 いきなりは怖い!いきなりのドアップは怖いです!というかもう異世界怖い!動物怖い!

 日本じゃ普通に動物園とか行けたし、何なら観光地で馬に乗って引き馬乗馬体験とかもした事あるけど、もうなんもかもが怖い。なめんなよ、私のビビり度を!


 暫くすると壁越しで対面していた鹿さんがいなくなって、心底ほっとした。でもまだ近くに鹿さんはじめ、他の動物もいるかも知れないと思うと気が抜けない。

 そんな訳で私はその後、息を殺し気配を殺し、ずっとずーっと壁の隙間から外をちょいちょい見ながら過ごした。





 昼過ぎ。

 泉のほとりにいた動物はすでにいない。

 でも何があるか分からないのが怖くて、喉はカラカラだし部屋の空気も入れ替えたいし、何よりお腹空いたけど外に出られずそのまま過ごす。

 というか、もう外に出るのが本気で怖い。壁の隙間から見えない所にもしも動物がいたらと想像したら、余計に外に出られなくなったのもある。






 夕方。

 朝、泉に来たのとは違う動物たちが水を飲みに来た。やはり初日に遭遇しなかったのは奇跡的なのか。いや、もしかしたら私が泉の周りをうろついていたから単純に近寄れなかっただけかも知れない。それに昨日の夕方は家にたどり着いた後ずっと引きこもっていたから、夕方の泉の様子は確認していない。

 それに冷静に考えれば森の中にこんな奇麗な泉があれば、動物だってお水飲みに来るよね……。


 夕方に訪れたのは鳥がメインだった。おっきいですねー、そんな羽で森の中の暮らしは大変じゃないですか、な鳥もいれば、両手の大きさ程度の鳥もいて、自然ドキュメントの番組か何かをリアルで見ている錯覚になる。


 そんな鳥さん達も泉から姿を消すと、もう夕闇はすぐそこな太陽の明るさ加減だ。

 今日は何も食べてないし、お水も殆ど飲んでいない。お水だけでも欲しいな、すぐそこだし汲めないかなと悩んだけど、どうしても家の外に出るのが怖くて、引きこもる事にした。

 外に出るならせめて明るい時が良いよね。

 お水もない、食べ物もない、ならば戸締りをもう一度確認してからさっさと寝よう。それが良い。そうして私はベッドに向かった。






 深夜

 お腹が空いた。喉が渇いた。明かりが欲しい。あと、トイレットペーパーが欲しい。暗闇怖い。






 更に翌朝。

 朝陽が昇りそうな頃、泉の周りにまだ何の生き物も来ていないのを確認してから、私はダッシュで泉のお水を鍋ですくって飲む。


「っん、生き返る……!!」


 何度飲んでも喉が渇いているような感じがするけど、とりあえず初日と同じように家にあるタライへとお水をせっせと運ぶ。他の動物が来る前に飲み水の確保を済ませておかないと遭遇しても怖いだけだし、もし家に籠っている状態でお水が欲しくなっても、動物が来たら怖くてお水汲む事できなくなるし。


「ああ、もう本当お腹空いた。苺もどき……苺もどきはどこじゃぁぁ」


 水を飲み終えた私は空腹からゆらりと立ち上がり、さっさと苺もどきを採って食べようとした。

 けど立ち上がって私が目にしたのは、森の中からちょうど顔を出したばかりの、四本腕のお猿さん軍団。あ、昨日もいらっしゃいましたね、覚えております。あなた達も喉乾いたんですね、と私は小さく頷くと、まだ中身を捨てていないツボを持って家に引き返し扉を閉めた。











「わぁ、警戒されてるー」


 家の扉の少し離れた所から、お猿さん軍団のリーダーっぽいのがずっとこちらを見ているのが壁の隙間から垣間見える。


 私を探しているのか時折ウロウロしたりしていて、正直言うと大変怖い。この泉は俺らの縄張りだぜアピールなのかな。

 出来るだけ気配を殺して彼らがどこかに行くのをずっと待っていたんだけど、何故かお水を飲み終わってもリーダーも他のお猿さん達も泉の周りからどこにも行かない。なにゆえ?目の前で家の中に入ったから、さっきのアイツ、あそこにいるぜ的に警戒しているのかな。


「んー、意味が分からぬ」


 私はと言えば、さっきお水を飲んだせいか、大至急用を足したくなってきている。ちゃちゃっと済ませられる小用なんだけど、お猿さんが気になって致す事も出来ない。かといって膀胱の一時停止なんてできるはずも無く、だんだんとモジモジさん的な動きになってくる。


「ぬぉぉ、もう我慢の限界……お猿さんには特に動きが無いし、大丈夫、かな」


 致しても!という訳で、扉を抑えていた手を放し、ごっそごっそとツボにまたがって安堵の息を漏らし始めたら、ふとお猿さんのリーダーがのそりと動き出すのを、壁の隙間から僅かに見る事が出来た。


「は?」


 ツボにまたがった状態で体をひねりながら確認すると、お猿さんのリーダーがのっそのっそと家に向かって歩いてくるのが分かる。家の扉はさっきまで手で押さえていたから、まだつっかえ棒をかましていない。変な物音立てない方がいいかと思っての行動だったけど、悪手になってしまった。


「え、ちょ」


 私はまだ動けない!

 ツボにまたがり、ツボにほぼ座った状態で膀胱はまだ止まっていない。というか女は簡単に止められない!更にここからトイレットペーパー代わりの葉っぱで、チョチョっと色々フィニッシュを決めなきゃ汚れちゃう。振ればいいだけの男とは違うのだよ!

 なのにお猿さんの歩みは止まらない。


「やだやだまってまって!」


 こんな姿で野生動物に襲われたくない。せめて柔らかいトイレットペーパーがあれば、あっという間にフィニッシュの仕上げが出来るのに!ああ!お猿さんが!お猿さんが!


「やだー!だ、誰かー!トイレットペーパーくださぁぁいぃ!」


 私は泣いた。泣き叫んで神様に願った。それこそ心から。そしてお猿さんの四本腕が家の扉に触れた時、私は全身全霊をもって神様に願った。


「神様ぁぁぁぁぁ!!トイレットペーパァァ―!」



 涙ながらに叫ぶ私の声が響く中、家の扉がゆっくりと開く。

 絶望に襲われる私の体は、いつの間にかキラキラと輝いていたがそんな事に気がつく余裕なんか無かった。



 そして家の扉をゆっくりと開けるお猿さんの手が、涙でぐちょぐちょになった私の視界に入った時、突然目の前に神様が現れた。


 今の私に頼れるのは神様しかいない。だから私は腹から声を出して叫んだ。もう他に方法は無かったから。


「トイレットペーパー、プリィーズ!」


「もうここは天界だ!」


 どこから出したのか神様の手に握られたハリセンですぱこーん、と叩かれた私の姿は、つるんぽやんなおばけの姿で、気が付くと森の泉の家の中ではなく、いつの間にか真っ白い世界にふわふわとおばけ姿で浮いていた。





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