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ディークレオスです。

 それから家族と朝餉を共にしたディークは、若い従者と共に書庫にやってきた。

「よみたい」

「分かりました。では読みますね〜」

 文字の読めないディークは従者の膝に乗せられながら、絵本を読んでいた。

(クソ、情報を集めようにも文字が読めないんじゃな。だが、かなりいいとこ生まれのようだし、この家の広さからして王族なのではないか?)

 ディークは本を眺めながら考えを回らせていた。

 元財閥の御曹司である真は、周囲の状況と持ち前の知識から、自分がどこかの国の王族であると推測した。その考えは間違いない。

 ディークが答えを得たのは、文字の読み書きができるようになってから数年。八歳の頃だ。

 ディークレオス・モニオール。モニオール帝国第三皇子。二人の兄を持つ帝国の跡取り候補である。優しげな瞳を持つ母に似ている、温和そうな美少年の容姿を持っている。丸い二目は猫のようで愛らしさを感じさせ、その片鱗は八歳であるにも関わらず、惜しげもなく発揮されている。流れる柳のように揺れる銀髪と夜天を思わせるような深い蒼の瞳。城内では可愛いと評判の美少年である。

 二人の兄は父譲りの鋭い目つきをしており、到底ディークとは似ても似つかない。

「ディーク、今日も稽古か? 精が出るな」

「はい、アレクお兄様!」

 八歳になったディークは木剣を手に、庭で修行と称し剣を振っていた。そんな可愛い弟の元に声をかけてきたのは、第一皇子であるアレクシアだ。

「僕は、世界最強にならないといけないので!」

「ハハハ、そうか。頑張れよ」

「はい!」

 アレクはディークの頭を撫でてやると、颯爽と庭を抜けて城内に戻っていった。

(所詮は子供の戯言。アレクも本気にはしていないんだろうな)

 ディークは影の落ちる表情で木剣を握る手に力を込めた。

(俺は、最強になる。セレのために……!)

 自由に過ごせる幼少期を過ごしたディークはこの世界と自分について、はっきりとした自覚を持っていた。

 榊原真が転生してきたのは、真が愛読書にしていたライトノベルの世界だった。ここは物語の主舞台となる隣国にあたる。その第三皇子として生まれたディークは、事実を知ったときに震えていた。歓喜したのだ。

 真が転生したのは、物語の主要人物たちと同じ年に生まれた隣国の皇子ディークレオス。まだセレスティアが死ぬ前の時間軸。

 この事実を知った真は、セレを助けるために計画を立て、動き出した。

(剣と魔法の存在する不思議な世界。物語の世界。俺だけが知っている未来……待っていろ、セレ!)

 ディークは、遠い異世界から惚れ続けた愛しの君を思い、一心不乱に剣を振り続けた。

 ディークがセレとの邂逅を果たすのは、そう遠い未来ではなかった。


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