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宣戦布告

 ディークがセレとの訓練を始めてから三週間。とうとう魔法祭が開催された。その間にセレとアイラによる接触は皆無であり、平和な空気が流れる教室に周りの生徒たちは居心地良さそうにしていた。

 全てはディークが留学してきたおかげであり、ディークがセレにちょっかいをかけなければ起こり得なかった事実である。そのことに気づいている生徒はいないが、セレ自体の評価は今までよりも少しずつ回復している。

「私は、アイラ・リューシェンカーに勝って、ウィル殿下に認めてもらいます」

「セレスティアさん……」

「セレスティア。お前がアイラに勝てるわけがないだろう。女神のような優しさと、平民でありながら精霊に愛される聖女だぞ。身の程を弁えたらどうだ?」

「なっ……ウィル殿下」

 魔法祭が開催される前日。セレは教室で堂々と宣戦布告を行った。教室の空気が一瞬で凍りつき、ピリピリと刺激的な感覚が肌に突き刺さる。クラスメイトたちの視線は対立する二つのグループに注がれている。

(やはり、セレは強いな)

 その様子を教室の後方で見守っていたディークは、楽しげな催しを穏やかに見守っていた。セレが一人の女としてアイラに勝負を挑んでいる。愛する婚約者の気持ちを取り返すために。

 誰が邪魔などできようか。そんな無粋な真似をしようものなら即座にディークが止めに入る。

 負けず嫌いで執念深いセレは、自分の婚約者を誑かすアイラが許せない。一時の迷いに騙されている王子様を救うために、セレは戦いを挑んだ。

「良いだろう。もしお前が負けたら、その時は俺との婚約を破棄してもらう!」

「ウ、ウィル殿下!?」

 思い切った発言に、教室中に驚愕が走った。隣で聞いていたアイラも目を見張り止めようとする。

「いくらなんでも婚約破棄なんて……」

「気にするな。このままではお前に対する嫌がらせも止まない。言っても聞かないなら、こうするしかないんだ」

 王子様はアイラを説得して口を閉じさせると、キッと威圧するようにセレを睨みつけた。

「アイラは優しいからお前にも気を遣ってくれているんだ! だが、お前にアイラの慈愛を受ける資格などない! 失望したぞ、セレスティア!」

「ウィル殿下……」

 糾弾されるセレは負の感情に顔を歪める。悔しい、悲しい、寂しい。綯交ぜになる感情を噛み殺すセレは、厳しい視線をアイラに投げつける。

 絶対に負けない。

 剥き出しの闘気に一瞬怯んだアイラはウィルの腕に縋る。

(セレには悪いが、おそらくこの勝負、アイラが勝つ。そして、婚約破棄。期せずして俺の望む通りに事が運んでいる。物語のルートからは外れているが、これでいい)

「坊ちゃん。どうするんですか?」

「成り行きに任せるさ。セレが戦うというのなら、その意思を尊重するだけだ」

「分かりました。アイラと、ホルムの方は?」

「引き続き監視しておけ。あの王子がこの出来事を利用しないはずがない」

 耳打ちをする二人は静まり返った教室を退出する。二人が動き出したことで、停止していた教室の時間が動き出した。像のように動かなかった生徒たちは逃げるように教室を出て行く。

 セレは最後の最後まで教室に残っていた。

 そして、魔法祭当日がやってくる。


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