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6.忘れてたわ! --モテる条件--

 

 ----  どうしてこうなったのかしらね ----


 エレナは今の状況が、いまいち理解出来なかった。


 私用のサロンにいる筈なのに、溜息が止まらない。


 ハロルドとソファに座り、美味しいお茶を飲む------ そこまではいつも通りであるのに、顔を前に向ければ普段いない筈の黒ちゃんがいる。


 ---- 黒ちゃん、私にちょっと怒ってたわよね?


 学院の休みが開けてから、何故か私のサロンに黒ちゃんが来るのよね。しかも、お腹の中真っ黒じゃなくて、もう見るからに黒ちゃんになってる。


 優雅にお茶を飲む黒ちゃんをチラリと見て、長い溜息を吐いた。


「おい、何だ? その溜息は」


 黒ちゃんはブスっとした顔をして、言葉使いも雑になってる。


 ----- あの優しそうな王子はどこに消えたのかしら?


 きっと幻だったのね。


「いえ、黒ちゃんは本当に変わりましたわね」


 黒ちゃんを見ていると、鍛えられた表情を維持してるのが馬鹿らしくなり、私は気持ちと共に表情さえも呆れた。


「何だ? お前だって、見た目と中身が違いすぎるだろ」


 -----  まあ、間違いないわね。


「似た者同士で、良いじゃありませんこと?」


「まあ良いだろう、ただ変なあだ名つけるな。俺が黒ちゃんなら、お前は黒子ちゃんか?」


「まあ! お腹真っ黒さんには、黒ちゃんがお似合いですわよ? 女性に黒子ちゃんなんて、教養のなさを感じさせますわね!」


 黒ちゃんと嫌味の言い合いをしてると、ノックの音がして扉が開く。


「あらあら、楽しそうな声が、扉の外まで響いてましたわよ?」


 お姉様が、凛とした姿で私達の前に現れた。


「あらお姉様、会いに来てくれて嬉しいわ。こちらバレルシア王国のレオン殿下よ」


「初めまして、テリージア王国第一王女のアリステアと申します。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。エレナと仲良くして頂いて有難うございます。学園生活はいかがですか?」


 ----- 何て素敵かしら! やっぱりお姉様は素晴らしいわ!


 お姉様は黒ちゃんに素敵なカーテシーで挨拶をし、美しく柔らかな表情で話す姿を見て、どうだっ! といった表情で、黒ちゃんを見る。


 すると、黒ちゃんはまだ開くの? といった具合の目の開きをして固まっていたが、表情を王子モードに直ぐさま戻し少し深めのお辞儀をして口を開いた。


「バレルシア王国第二王子、レオンと申します。こちらこそ挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。エレナ殿下には、私こそ感謝申し上げたい気持ちです。学園では学ぶ事が多く、充実した生活が送れています。お気遣い頂き有難う御座います」


「まぁ、それなら安心しましたわ。何かあれば遠慮なく言って下さいね」


 挨拶が終わり、お姉様は少しの間黒ちゃんと話すと、お邪魔したわねっと言って直ぐに部屋から退室された。


「アリステア殿下は、素晴らしいにつきるな」


 黒ちゃんは恍惚した様子で、上を向きながら呟いている。


「当たり前じゃない、私の自慢のお姉様なのよ? お姉様に惚れない人なんていないわ」


「あぁ、お前もだけど噂は当てにならないな。アリステア殿下が女王になるんだよな? あぁ、兄にあんな相手がいれば、俺も安心なんだけどな---- 女王になるなら無理だよな」


 ------- ん? 兄?


「お兄様に婚約者はいらっしゃらないのかしら? 話しを聞くに有能な方のイメージでしたけれど?」


 新しい政策にも力を入れてると聞くし、悪いイメージは聞かないわ。 


 どうしてなのかしら?


「兄は国の情勢を言い訳にして、婚約者を作らなかったんだ。来年国王になる予定だが、兄は女嫌いなところがあるのか女の影が全然ないんだ。誤解するなよ? 兄は物凄く格好いいんだからな! 顔は綺麗な作りだけど男らしいし、背も高い。無口だけどめちゃくちゃ優しくて、俺をいつも心配してくれるんだ!」


 ----- な、何て素敵なんだろう。


 まず女の影がないなんてポイントが高いわよね。

 見た目もよくて落ち着いていて、なおかつ優しい? そんな人見たことないわね。


 完璧な男ってこの世界ではモテるけど----- 拙い記憶を探る。


 そうそう、隙がある男の方がモテると書いてたわね? 確か、女性が近づきやすい雰囲気を出した方が、話しかけやすいからだったかしら?


 図書館でも、恋愛の指南書が良く借りられていたのよね。


 独身の男上司が、こっそり借りてた時には笑ったわ。堂々と借りればいいのにね。----- まあ、私も休憩時間にこっそり読んだから、人の事は言えないけど。


 そういえば、モテる条件は三高から四低に変わったとあったわね、低燃費って何? て思ったけど、今考えたらあんな男性いるのかしら? 


 この世界とは逆の事ばかり書いてるから、あの本が近くにあったら皆真っ青になっちゃうわね。低姿勢な男性なんて、見たことないもの。


 「おい、兄みたいな奴はいないと思ってるな? 兄の素晴らしさをお前に見せてやりたいよ、見たら直ぐに分かるしな」


 ----- この兄への崇拝ぷりは私に近いわね。てことは凄い好物件って事になるわね。話しが本当なら、お姉様にピッタリな相手かもしれない。あぁ会いたいわ。


 「そうね、会う事って出来ないのかしら? 一度見てみたいわね」


 「そうだろ? ---- もうすぐ夏休みだから、俺の国に一緒に来るか? まあ滞在時間はあまりないが、お前にとっても他国の勉強になるよな? あ、木で紙作るか?」


 凄く魅力的な話ね。


 お姉様の新たな相手は、国内で探してても全く見つからないし、一度会ってみたいわ。


 しかも紙って聞こえたわね。でも欲を出したら駄目。今は銀の斧で我慢しなきゃ、ゴムが作れたんだから十分じゃない。


 ハロルドの顔をチラリと見れば、俺も行くと言われたので安心して行けそうだ。


 「そうね、お願いしようかしら? 黒ちゃんお願いね?」


 「任せろ! 黒子に俺の自慢の兄を見せてやる!」


 「だから、黒子って呼ばないで! ちゃんはどうしたのよ!」


 エレナの頭の中では、歌舞伎役者の後ろで忙しく動き回る、黒子の姿で埋め尽くされた。



 

-----------------------



 チラリと前を見れば、優雅にお茶を飲む、(エレナの言い方を借りれば)黒ちゃんが目に入る。


 ----- どうしてこうなった。


 休日中に何かあったのか? 何であれから懐かれているのか、全く理解出来ない。


 エレナが黒ちゃんに興味がないと知って、苛立つ事はなくなったが、2人の時間が作れず会話もあまり出来ていない。


 ----- 優雅に、お茶なんか飲むなよな。


 ハァっとエレナから溜息が漏れると、黒ちゃんがエレナに噛みつき出し、お互い素の表情で嫌味を言い合ってる。


 ----- 一応王族だよな、この二人大丈夫か?----


 これは長くなるなと思い、小さく息を吐くと、ノックの音が聞こえてアリステア殿下が現れた。


 綺麗なカーテシーをしながら話す姿は完璧で、美しいアリステア殿下に尊敬を抱く。


 何故、この素晴らしさに気づかない男ばかりなのか---- 


 黒ちゃんは、アリステア殿下の姿に驚きが隠せないようで、頭は良くないと思っていたが、どうやら人を見る目はあるようだ。


 ---- 少しだけ黒ちゃんを見直してやろう、アリステア殿下の素晴らしさに気付いたからな。


 

 黒ちゃんはアリステア殿下が居なくなると、バレルシア王国の第一王子について語り出した。語る黒ちゃんの姿は、エレナがアリステア殿下の事を語る様子に非常に似ている。


 ------ 二人を見てると、尻尾を振る犬にしか見えないな----- 


 黒ちゃんの力説が伝わったのか、エレナがバレルシア王国の第一王子に興味を持ち始めた。


 アリステア殿下の婚約は、未だ解消されることなく続いていて、エレナと新しい相手を探してはいるが、中々納得のいく相手が見つからない。


 あいつもエレナの前には姿を見せなくなったが、諦めたわけじゃなかったのだと俺はある日気づいた。エレナと庭にいれば、校舎の窓からあいつの顔がうっすらと見え、食堂に行けば実はエレナの後ろに座っていたりするからだ。


 ------ エレナには、黙っておこう。 


「そうね、会う事って出来ないのかしら? 一度見てみたいわね」  


 ボーっとしていたのか----- いつの間にかバレルシア王国の第一王子に会う方向で話が進み、二人で盛り上がっている。エレナがチラリと見てきたので、慌てて俺も行くと伝えた。


 バレルシア王国に行く事が決まると、黒ちゃんは満足したのか鼻歌を歌いながら去っていく。やっと黒ちゃんがいなくなり、やっといつもの空間に戻った。


「第一王子に早く会いたいわ、見極めなくちゃね!」


「やっぱり興味を持ったか。しかし、良かったとしてどうやって二人を合わせるんだ?」


 アリステア殿下と、バレルシア王国の第一王子を合わせるのは難しいと言い切れる。二人とも未来の国王だからな、エレナはどうする気なんだ?


「それよねー、本当困ったわ。なんだか織姫と彦星みたいよね。中々会えないだなんて」


 ------ 今度は何なんだ? エレナから詳しく説明を受ける。


 ------ 一年に一回会える夫婦だと? ありえない。


 そもそもそれで夫婦と言えるのか? 何で2人は働かなかったんだ! よく分からないが悲しすぎる。


 ----- 俺はきちんと働こう。


「なあエレナ。もしエレナが女王になったら、俺が近くにいてやるからな」


 額に汗をかいてしまったが、中々普通に言えた。


 ---- 少しは俺の気持ちに気づくか?


 表情を見逃さないようにエレナの顔を伺うが、何故だかエレナは顔を両手で隠した。


 少しは言葉の意図に気づいたかと思ったら、足をバタバタと動かしエレナの声が部屋に響き渡った。


「あー! 忘れてたわ!」


 ハロルドは、盛大に項垂れ少しだけ悲しんだ。



 ---- この時の事を、侍女はこう語る。----


 さすがに気の毒で、見ていられなかった。と

読んで頂き有難う御座います!


モテる条件の本は沢山出てるので、どれが本当なのか分からないままの光政です。


時代と共に変化していくので、どの年代にも当てはまるのは優しさでしょうか?恋だと優しさは時に物足りなく思うものなのかも知れないですが、結局は自分に合うかどうかですよね。

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