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14.円卓会議よ! --報告なさい!--

ハロルド視点から始まります!

 

「ハロルド、これから会議をするわ! メンバーを徴集なさい!」


 エレナの一声により、いつものメンバーを丸いテーブルが用意されたエレナの私室に呼び出し、各々が到着次第席に着いていく。


 最後の一人が席に着くのを確認すれば、エレナは時計回りに全員の顔を見回し口を開いた。


「我騎士達よ、これから会議を始めますわ!」


 エレナは円卓の真ん中に、自ら購入した小型のナイフを突き刺すと、会議が始まった。


 この円卓会議は、エレナが六歳の時から始まり、初会議の内容は王の不倫疑惑についてだったと記憶している。


 メンバーは、目が吊り上がったままの独身である侍女長や毒を愛する庭師長、城内の記録を作成し変わり者であるジンバ先生に、元女たらしの近衛隊の副隊長だ。


 なぜこのメンバーなのか理解不明だが、唯一共通する点を上げるなら、全員がエレナに対し忠誠を誓っている。


 城内で人から疎遠にされていた四人に、エレナが好奇心から話しかけた事で、彼らはエレナを可愛がり王の命令よりもエレナのお願いに忠実だ。


 ------- どうしてこうなったんだか。仕事は出来るメンバーであるのが、エレナらしいと言えばエレナらしいけど。


 そういえば、不倫と言えばランスロットね、円卓会議よ! て言って始まったんだよな------ 結局ランスロットって誰だったんだろう。


「皆、良く集まってくれたわね。今日の議題はあいつについてよ、各々の知る事を私に聞かせなさい!」


 エレナは前に聞かされたアーサー王になりきっているのか、口調を強めに変えて真剣な眼差しを皆に向けている。


 テーブルに座るメンバーは、エレナの様子を各々違う形で見守りながら、会議の議題を聞いて頷いた。


「ハロルド、説明しなさい」


 エレナの様子に呆れながらも頷き、息を溢す。


 姿勢を元に戻し、俺も円卓のメンバーとして皆へ話し始めた。



「三日前の出来事です-------」




 **** 時は遡る ****




「やっと着いたわね、当分旅行は良いわ----」


 城に着き、グッタリとしながら馬車を降りたエレナをエスコートしながら、一息つく為に近くの庭にあるガゼボへ歩いていた。


 バレルシア王国を出てからよそよそしかった筈のエレナが、流石に疲れたのか俺に身を寄せて歩くので、顔が綻ぶのもお構いなしに機嫌良く歩いていたのだが、庭に入る為の角を曲がった途端、自分の足が止まった。


 前方に見える光景に驚き、足だけでなく息も止まる。


 少しの間そのまま立ち尽くしていると、私達に気づいたアリステア殿下が近付いてきて声を掛けてきた。


「あら、お帰りなさい。バレルシア王国はどうでしたか?」


「----------- 」


 驚き過ぎて声がでない私達の前に、あいつがアリステア殿下の後ろからやって来くる。


「やあ、エレナ殿下にハロルド君お帰りなさい」


 どうしたんだと思いつつも体が固まっていた俺は、目線だけ前からずらしてエレナに向けた。エレナは茫然とした顔をしたまま、返事もせず固まっている。


「あらあら、どうしたのかしら? 二人とも馬車に酔ったのかしらね?」


 アリステア殿下がそう言うと、あいつはアリステア殿下を見て柔らかく微笑む。


「アリス、きっと二人は疲れたのでしょう」


 あいつはそう言うと、アリステア殿下をエスコートしながら私達の前から去って行った。


「な--- 何が起きたのよー!」




 **** 時は戻る ****




「皆分かったかしら? なぜあいつが今になってお姉様の婚約者らしい事をしてるのか、気になってしょうがないのよ!」


 確かにあの日見た光景は、俺でさえ目に焼きついて離れない。


 アリステア殿下の髪に、あいつが庭に咲く真っ赤な薔薇を刺しながら、蕩けた表情で何か言葉を発していた。


 アリステア殿下の表情は見えなかったが、仲睦まじい二人の姿に震えが止まらない。あいつは、アリステア殿下の婚約者でありながら、エスコートしていたのは夜会の入場時だけだったし、月一度の交流でさえたまに放棄していた筈。


 ---- なのにどうしたんだ? しかもアリスって愛称で呼ぶなんて怖すぎる----。


「そうでしたか、では私が耳にしたお話しを、まずはお話し致しましょう」


 吊りがった目の侍女長は、メガネのヨロイを指で上げなら語り始めた。



 ------------------------------------------



「私が最初に耳にしたのは、エレナ殿下がバレルシア王国へ向けて旅立った十日後の事でございます。侍女達が騒いでおりましたので、耳を寄せてみると、ウォルフ様がアリステア殿下と仲良さげにお茶を楽しまれたようで、ウォルフ様のアリステア殿下を見る熱い眼差しが素敵だと皆騒いでいました。更に四日後、ウォルフ様がアリステア殿下に十六本の赤い薔薇を送られまして、アリステア殿下が喜びながら部屋に飾るよう、指示されたとも聞いております。その日から更に六日後には、アリステア殿下の教会へ行く公務にウォルフ様が同行されまして、孤児の子達に二人で絵本を仲良く読まれたとも聞き及んでおります。エレナ殿下がお帰りになられた日は、ウォルフ様がお疲れであるアリステア殿下を休憩させる為、庭に連れて行かれたと侍女達がまたも騒いでおりました」


「なっ----- プレゼントなんて聞いた事ないわ! 教会にも同行したの?!」


 -------- あり得ないわ、今まで一度もしなかった事だらけだわ!


 ぐるぐると今までの事を思い出しながら唖然としていると、副隊長が挙手をしたので、発言を促した。


「私は、その教会へ行く公務に護衛として同行しましたが、それはもう素敵な王子のように、アリステア殿下に付き添っていましたよ。絵本を読むお二人の姿は、今までと違いすぎて私達近衛では噂になったぐらいですね。ついにエレナ殿下を諦めたと」


 軽やかに笑う副隊長を見て、なんだか釈然としないまま他のメンバーを見れば、庭師長が体を震わせながらも笑いを抑えていたので、発言するよう促す。


「いやあ、すみません。十六本の赤い薔薇は、私がウォルフ様から指示を受けて用意したのです。アリステア殿下が好きな花はなんだと聞かれたので、ちょっとばかり意地悪をしてしまいました。アリステア殿下が好きなのは白い百合の花ですから、喜んだのは建前でしょう。三日前のあの場には実は私も近くにいましてね、エレナ殿下のお顔は面白い顔をされてましたなあ。ちなみにウォルフ様は赤い薔薇をアリステア殿下の髪に刺した時、それはそれは鳥肌が立つくらい、甘い言葉を吐いていました。貴女は赤い薔薇より美しい、と」


 笑い声を上げ始めた庭師長を無視して、まだ発言をしていないジンバ先生を見れば、ジンバ先生は姿勢を崩さないままお茶を優雅に飲んでいる。


「ジンバ先生は何かお聞きしてませんの?」


 問いかけてみると、ジンバ先生はゆっくりとお茶の入ったカップを受け皿の上に乗せて、口を開いた。


「わしゃ、ウォルフ様に尋ねられましたのぉ。あれはいつだったか---- エレナ殿下がバレルシア王国に向かって直ぐだったと思うが、何だか凄い顔をして、城のライブラリーの片隅で蹲っておったから声を掛けてやってのぉ。話しを聞いてみれば、本当に大切な物は、近すぎて気づかなかったんだとか言っておった。今からでも間に合うかと尋ねられたから、人が亡くならない限り、間に合わない事などないよと言うたら、何処かに走って行ったのぉ」


 -------- え? ここに来て星の王子なの?


 --------。


 ------------。


「何で今更なのよー! あぁ思うようにいかないわ!」


 この時、メンバーである四人は同じ事を考えていた。


 ---- 今日も相変わらず殿下は可愛い。と




 ハロルドが、いつの間にか会議を終わらせてくれていたようで、メンバーが部屋から去って行くと、座ったまま放心してる私の前に新しいお茶を淹れてくれた。


「なぁ、エレナ。アリステア殿下に直接聞いた方が早いんじゃないか? もしかしたらお互い気持ちがあるのかも知れないし---- 」


 ハロルドから問われ、頭では納得するものの、どうにも心が納得しない。


 あの時のお姉様の表情は、いつもと変わらなかったわ。家族の前で見せるような、砕けた表情をまだ見せていないなら、あいつに心は開いてないって言い切れないけど思うのよね。


 でも------ 星の王子様か。


 何だか羨ましさもあれば、今更とも思う。


 お姉様とあいつ、幼かった頃は仲が良かったみたいなのよね。


「ねえ、ハロルド? ハロルドは大切な物って近くにあると気づかないって事ある?」


 ハロルドは私の問いにいつものポーズで考え始めたが、珍しくすぐに口を開いた。


「ないな。大切な物なら近くに置いとくべきだろ」


 私はハロルドの答えに満足して、お茶に口をつけた。



読んで頂き有難う御座います!


有名なアーサー王ですが、奥さんと、円卓の騎士ランスロットは王国の崩壊まで、不倫関係だったんですよね。よくよく読んでいけば結構な歳の差なんですが、長い間関係は続くんです。


騎士達のキャラを近づけるか悩みましたが、やめました。楽しんで頂けていたら嬉しいです!


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