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11.回避とお誘い! --賢い--

「はあ------ ほんっと自分が情けないわ----。」


 考えが足りない自分に悲しくなりながら、空を見上げる。


 黒ちゃんのご家族には、申し訳ない事をしたわね----。


 昨日、マイヤー殿下の問いに思わず叫んでしまった後、部屋に戻ると案の定ハロルドから盛大に怒られた。


 ------ もう思い出すのも怖いわ----


 ハロルドの久しぶりの説教に、悟りはどこに? と思いつつも、自分がやらかしたのだけは分かっていたので、何も言い返せず今に至る。


 ------ 黒ちゃんにも謝らないといけないわね。憂鬱だわ。


 こんな時、お伽話では動物達が慰めてくれるのにね。


 私の前には現れてくれないわよね----


 動物といえば、十二支の由来が何だか笑えたわね。 


 ネズミは牛の背中に乗って、ゴール直前に牛から飛び降りて一番になるのよね。確か---- 一番になったネズミは、猫に一月二日と嘘をついたから追いかけ回されるようになったと言われていたわ。


 ------ 確かに干支に犬はいても、猫がいないものね。


 ネズミって凄いわね--- 賢いわ。私とは大違いね。


 客間のバルコニーの手すりに両肘を置き、片手を頬に当てながら流れる雲を追いかける。


 どうしようかしらと思っていると、後ろからハロルドに声をかけられた。


「エレナ、だらしがない。早く部屋に入って座れ。」


 ハロルドの辛い口調に項垂れながらも、ゆっくりと部屋に戻りソファに腰を下ろした。


 ああ、ハロルドの顔が見れないわ。


「エレナ、俺はお前の事が心配なんだ。マイヤー殿下がエレナに悪い印象を持ったら、今よりもっとニ人を合わせられなくなるんだぞ? 良いのか?」


 床を見たまま、ハロルドの言葉に大きく首を横に振る。


 分かってるわ、それでも黒ちゃんとの婚姻は絶対お断りなのよ。


「ハロルド---- どうしたら、黒ちゃんとの婚約話を完璧に回避出来て、マイヤー殿下をお姉様に合わせてあげられるのかしら? 私はもうホームズになんてなれないわ。頭が働かないのよ。」


 小さく息を吐くと、ハロルドが急に私の手を握ってきた。


 慈しむように私の手を包むハロルドの手は、昨日の怒りを感じさせないので、勇気を出してハロルドの顔を覗くと、柔らかい笑みが目に映り心が跳ね上がる。


 ------ なっ! これは反則だわ。


 こんな笑い方出来るなんて知らなかった----。


「エレナ、ホームズが誰なのかは今度はっきり教えてもらうが、今は俺に考えがある。一緒にマイヤー殿下へ、会いに行かないか?」


「ほん--- とう? ハロルドは何か思いついたの?」


 ハロルドの言葉に希望を抱く。一体何を思いついたのかしら?


「------ ここでは言えない。とりあえず、マイヤー殿下に伝言を頼んだから返事を待とう。」


 ハロルドの言葉に頷きで返しつつ、とても嬉しくなりハロルドの体にギュッと抱きついた。


 ------ ハロルドは何て優しいのかしら。いつも何だかんだ助けてくれるのよね。テリージアに戻ったら何か返さなくては!


 そんな事を思いながら抱きついていると、ハロルドが距離を縮めるように抱きしめ返してきたので、ハロルドの腕や胸の硬さを強く感じて、何故だか急に恥ずかしくなる。


 一昨日の夜は、息が苦しくて気が付かなかったけど---- ハロルドって男性になってきたのね。


 顔や耳がカッと熱くなり出し、体が固まってしまう。


 ------ どうしよう---- どうすれば離れられるかしら?


 何だか心臓が煩い---- ハロルドに聞かれたくないわ。


 ドキドキと胸の音に耳が集中していると、ノックの音が響くように聞こえてきた。ハロルドの力が弱まるのと同時に、体を勢いよく離し胸の音を落ち着かせる。


 扉から入ってきた従者から、紙を受け取ったハロルドは、目を見開いたまま動かない。


 ---- どうしたのかしら? 


 マイヤー殿下からの伝言だったのか、ハロルドは私に手を差し伸べると口を開いた。


「マイヤー殿下が今から会って下さるそうだ。エレナ今から会いに行こう」


 ハロルドの手を取りソファから立ち上がると、ハロルドの手は私の手から離れる事なく、そのまま扉へと歩き出した。



----------------------------------------------------




「急なお願いに応じて下さり、有り難う御座います。」


 エレナと手を繋いだまま、マイヤー殿下に指定された部屋へと入り、深いお辞儀をした。


 マイヤー殿下は、俺とエレナをじっくりと見たが柔かな笑顔で出迎えてくれる。


「いや、こちらこそ昨日は申し訳ない事をした。私もだが、母も父もレオンの事を心配していてね。レオンが女性を城に呼んだもんだから、張り切ってしまったんだ。どうか許して欲しい」


「いえ、こちらこそ誤解されても致し方ない行動でしたから、謝罪はいりません。エレナも反省していますし、どうかお気になさらないで下さい。」


「マイヤー殿下、誤解させてしまい申し訳ありません。昨日は無作法な返事までしてしまいましたし、恥ずかしいですわ。お許し下さいませ。」


 一通りの挨拶と謝罪を互いにした後、マイヤー殿下からソファに座るよう促されたので、エレナと共に腰を下ろす。


 お茶を一口飲まれた殿下は、首を横に少し傾げてから口を開いた。


「それで、ハロルド君。何か話したい事があるのかい?」


 試すような目をされて、エレナの手を握りながらも力が入る。


 ------ ここで引いたら負けだな。


「マイヤー殿下には、私達が何故バレルシア王国に来たのかお話したいと思いまして。お時間を頂けますか?」


 マイヤー殿下は俺の問いにいいよっと答えてくれたので、えっというエレナの声を無視し、意を決してアリステア殿下の事を順を追って説明した。



 アリステア殿下が、どれほど博識で美しい人であるかを。


 婚約者が酷く、国内で新たな婚約者を探しても全く見つからないという事を。


 レオン殿下からマイヤー殿下の話しを聞いて、興味を持った事を。


 マイヤー殿下の観察を、行った事へのお詫びは忘れずに伝えながら、アリステア殿下とマイヤー殿下の考えがとても似ている事を。


 今までの出来事を全て話すと、最後に今日一番伝えたいマイヤー殿下への願いを、想いを込めるようにして口にした。


「マイヤー殿下がもし会っても良いと、少しでも興味をお持ちになって下さったのなら、難しいとは思いますがアリステア殿下の一ヶ月後の誕生日パーティーに来ては頂けませんか?」



 俺の話しを聞いたマイヤー殿下の表情は、崩れる事なく穏やか笑みのまま変わらず、どう思っているのか全く読み取れない。


 ------- 流石だな。俺も見習わなくてはいけない。


 無言のままマイヤー殿下と目を合わせていると、マイヤー殿下が小さく息を吐いた。


「もし---- 私がアリステア殿下を気に入ったら、テリージア王国はどうする気なんだ?」


 マイヤー殿下の声が少し低くなり、瞳に強さが増したように思えたので、俺は合わせていた目を更に真っ直ぐにぶつけて、問いに答えた。


「その時は---- エレナが女王となり、私が王配となって国に身を捧げましょう。エレナにとって、姉上であるアリステア殿下の幸せが唯一の私欲です。私はそれを叶えてあげたい。マイヤー殿下から見れば、幼い馬鹿な考えかもしれませんが、私は馬鹿にされても構わない。」


 マイヤー殿下は無言のままで、張り詰めた空気が部屋に流れ出す。


 ---- 俺は言いたい事を言ったから、後はマイヤー殿下の言葉を待つだけだ。


 どのくらいマイヤー殿下と目を合わせていたか分からないが、いきなりマイヤー殿下が目を瞑り出し体を震わせた。


 マイヤー殿下の体の震えが、先程より激しくなると笑い声が聞こえ始め、目の端に浮かぶ涙を手で拭っている。


 ---------- やはり少し幼稚だったか? 


 周りくどいやり方より、率直に伝えるのが良いと判断したのだが---- 間違いだったか----?


 色々と考えを巡らせていると、笑い声が収まったマイヤー殿下が俺を見て、前よりも優しい表情を浮かべた。


「うん、分かった。いいよ。アリステア殿下の誕生日パーティーに出席しよう」


 俺は、マイヤー殿下の言葉を聞いて破顔してしまう。その顔を見たマイヤー殿下が再び体を震わせ始め、大きい笑い声が部屋に響き渡った。


 俺は強く握られたエレナの手に気づき、俺も同じ力でエレナの手を握り返した。









読んで頂き有難う御座います!


今回は、情けない事に物語が思い浮かばず、干支にしました。


干支の由来は、他にもお釈迦様バージョンもあるんですよね。


そっちだと、猫はお釈迦様の薬を駄目にして干支に入れて貰えなかったみたいですね。


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