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10.探偵するわよ! --観察をしたまえ--

ハロルド視点から始まります!

「ワトソン君、準備は良いいかね? それでは行こう!」


「----------」


 エレナは葉巻を口に咥え、何かになりきっている。


 ---- 何でこんな風になってしまったんだ? しかも、その葉巻は一体どこから出てきた!


 疑問が頭の中を埋め尽くすが、全く答えが出ないハロルドは、静かに溜息を吐いた。




 **** 時を戻そう。 *****




「やあ、ワトソン君おはよう!」


 朝、エレナに与えられた客間に行くと、エレナは少しニヒルな笑い方をしながら、部屋にいるにも関わらず帽子ハットを被って座っている。


 ---- ワトソン? 何だ? 何が起きてるんだ!


「今日はマイヤー殿下に会うからね、君には是非観察を任せたいのだよ。そうそう、君はただ眼で見てるだけで、観察ということをしないのは分かっている。いいかい? 見るのと観察するのとでは大違いなのだよワトソン君、分かるかい?」


 ------ いや全く持って分からないが----。


 なしたんだ? 今回はまたいつもと二味くらい違うな。これはどう接するのが良いんだ?


 ------ チラリ。エレナ付きの長年の侍女を横目で見ると、明らかに呆れているのが分かる。いつも変わらない表情に、エレナといるのに凄いなと感心していたものだが、今回ばかりは抑えきれないらしい。


 結構な鉄仮面かと思っていたが---- 今まで耐えていたんだな。それはそれで、今までよく耐えてきたな。


「観察とはすなわち推理なのだよ。今日は私がマイヤー殿下に質問していくから、君はマイヤー殿下が本当の姿を私達に見せてるのか、はたまた女性の影がないのかを、見極めて欲しいのだよ。明白な事実ほど、誤られやすいものはないからね、しっかりと頼むよワトソン君!」


「はあ、分かりました。簡単に言えば、観察をして見極めろって事で間違いないですね---」


「あぁ--- ワトソン君そんな意気込みでは駄目なのだよ。今から仕事が始まるのだ、仕事それ自体、すなわち自分の特殊な能力を、発揮する場を得る喜びこそが報酬なのだよ。せっかく能力を発揮する場を得たんだから、もう少し気合いを入れるべきだとは思わないかい?」


「--------- そう、ですね。気合いが---- さっきより入ってきました」


 明らかに、力が入ってない言い方になってしまったが、俺の答えにエレナは満足しながら、うんうんっといった声に合わせて何度も頷いている。


「分かれば良いのだよワトソン君。私達には、お姉様を幸せにするという使命があるからね。絶望の淵にある淑女に、助けを求められたら、紳士たるもの危険を雇みるべきではないのだよ。」


 ------ アリステア殿下から、助けは求められていないけどな。


 エレナは何処から手に入れたのか、葉巻をスカートのポケットから取り出すと、口に咥えて蒸すフリをし始めた。


 ------ はあ、何だか分からん、流石に疲れてきたな。


「エレナ----。分かった、お姉様をす、すくえるようにがんばろうか----」


 葉巻を咥えたまま、エレナはソファから颯爽と立ち上がると、何を意味してるのか全く分からないポーズを取り、口を開いた。


「ワトソン君、準備は良いいかね? 真実を探しに行こうではないか、それでは行こう! 」


 エレナが決まった! っという顔をした後に、何故かハロルドも、顎下で両手の指を突き合わせた(三角形のような形)ポーズをエレナに取らされる。


 マイヤー殿下が、嘘をついてると感じたら、このポーズをするのだ! っとエレナから言われ、何なのか分からずポーズを取ったままその場に立ち尽くした。


 ハロルドは考える事を放棄し、静かに溜息を吐いた。



 --------------------------------------------



「エレナ嬢、庭の奥にあるガゼボでお茶にしましょう」


 マイヤー殿下に城の庭を案内して頂き、素敵な花々を見た後ガゼボへと向かう。


 流石に葉巻を口にしたままお会いできないので、ポケットに忍ばせてホームズになった気持ちで足を動かした。


 庭を案内するマイヤー殿下は終始穏やかで、どんどんと期待で胸が膨らんでいく。ハロルドを時たまチラリと見るが、ポーズが出ることもなく時間だけが過ぎていった。


 -------- 黒ちゃんと違って瞳は透き通ってるし、胡散臭さも感じないわね。黒ちゃんが無口と言うだけあって、無駄な会話もないしなんだか拍子抜けしてしまうわ。ポケットに入れた葉巻が、何だか恥ずかしわね------


 黒ちゃんはというと、紙をつくる為にどこの木を使うか、山に確認に行った為ここにはいない。朝から気合いを入れて、山に向かったとマイヤー殿下から聞かされた。


 ガゼボに着き、ハロルドと共に腰を降ろしお茶が用意されるのを待つ間、マイヤー殿下の姿をじっくりと観察する。


 整った爪に、全く乱れのない姿は好感しか生まれず、そういった男性を初めて見たのもあって感激してしまう。


 ------ ああ、こういう人って本当にいるのね。お兄様って呼びたいわ。


 お茶がテーブルに置かれたのを確認すると、勇気を出して口を開いた。


「マイヤー殿下は、新しい政策に励んでいるとお聞きしてますわ。素敵ですわね。来年は国王陛下になられると、レオン殿下からお聞きしています。マイヤー殿下の婚約者様も、これから大変ですわね?」


 ------ ハロルド、見逃さないでよ! 


「えぇ、知ってらっしゃるかと思いますが、7年前に謀反をした宰相と色々と話しまして、これ以上国を乱れさす訳にはいかないと、それはもう必死でした。やっと様々な事が落ち着いてきて、今は安心しています。これで、国民からの信頼も回復出来るでしょう。私の婚約者ですが---- 残念ながらいません。今はそんな余裕もないので、考えてもいないですね」


「そうですのね、新たな政策に民もきっと喜んでますわね。貴国で見た民の方々の顔は、生き生きとしてらっしゃいました。マイヤー殿下が国王陛下になれば、一層活気付くのでしょうね。あら、婚約者様はいらっしゃらないのですか? それは、大変失礼致しました」


「そう言って頂けると励みになりますね、有難う御座います。まだまだ父には敵いませんが、立派に勤め上げられる様、国に身を捧げるつもりです。婚約者に関してはお気遣いなく。私の、我儘でもありますから」


「えぇ、私達王族は私欲ではなく、公欲を持たなくてはいけませんからね。私も、マイヤー殿下を見習っていきますわ。婚約者様がいないのは、我儘なのですか? どういった我儘なのか、お聞きしても?」


「公欲ですか----- 間違いありませんね。エレナ嬢は、その歳でもう理解をされているのですね。我儘と言っていいのかは分かりませんが、私の求める正妃像がとても厳しいのです。私と一緒の目線で国を想い、民を愛しむ女性は中々いません。一緒の目線を持つには、まず知識が深くないと難しいですから----」


 ------- わあ、まさにお姉様の事だわ。黒ちゃんが嘆くわけよね。


 チラリ。ハロルドを見てもポーズが出てるわけもなく、むしろ感心してマイヤー殿下の話を聞いている。


 お姉様にピッタリだわ、思考が同じですもの。どうにか合わせたいわね。


「エレナ嬢にも、私からお聞きしても宜しいですか?」


「ええ、私でお答え出来るのでしたら」


 ---------- どうしたのかしら? 少し聞きにくそうね?


 マイヤー殿下の表情は柔らかいままだが、少しだけ緊張したように口をなかなか開かない。?(はてな)と思っているとマイヤー殿下が口を開いた。


「エレナ嬢は、その---- 弟のレオンと、婚姻を考えて下さるだろうか?」


 ----------------。


「どうしてそうなるのーー!?」


 エレナの叫びはバレルシア城内にも響き渡り、王と王妃が控えていた部屋にまでも届いた。


 マイヤー殿下から、レオンの婚姻についてエレナ嬢に問うと聞かされ期待していた二人は、声が聞こえた事で脈がない事を知り、ガックリと頭を下げた。





読んで頂き有難う御座います。


シャーロックが大好きな光政ですが、メアリー(ワトソンの妻)を登場させれず悔しいです。


シャーロックの作者はコナン-ドイル。


エドガー・アラン・ポーや、エミール・ガボリオの作品に刺激を受け、シャーロック・ホームズが生まれたらしいのですが、名前を見ていくと有名な漫画が思い浮かびますよね。


楽しんで頂ければ嬉しいです!

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