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第9話 女刑事はほくそ笑む
終業時間を二十分過ぎて、ようやく捜査資料の整理を麗子は終えた。バックを手に取り、帰宅の準備をしていると、二十分前に部屋を出たはずの南方が姿を見せた。
「いつも遅刻出勤、定時帰宅がお決まりの課長が、この時間まで署内にいるなんて珍しいですね。今夜あたり、東京中に百鬼夜行が現われるかもしれませんね」
0課らしい妖怪ジョークを口にして、麗子は課長に顔を向けた。
「そんなに老人をいじめんでくれよ。帰ろうとしたら、新宿署に勤める同期の人間から連絡があってな。これは麗子くん好みの事件になりそうだと思って、この時間まで話を聞いてたんだよ。正式な捜査資料は後日届けてくれるそうだが、とりあえず簡単な状況説明のファックスをもらったから、今日の内に君に渡しておこうと思ってな」
南方は一枚のファックス用紙を麗子に差し出した。
「どうかな?」
「――歌舞伎町のホストが目に見えない相手と乱闘騒ぎを起こして大怪我ですか。――課長、これは面白い事件ですね」
「そうか。久しぶりに残業した甲斐があったよ」
それだけ言うと、南方は意気揚々と帰っていった。
「ふふふ。もしかしたら、陰陽師の先生との再会の時期は、案外すぐなのかもしれないわね」
一人残った麗子はひっそりと艶然な笑みを浮かべるのだった。




