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第4話 アベノセイメイ、驚き騒ぐ

 ボクの名前はアベノセイメイ。あの有名な陰陽師アベノセイメイである。


 バイク便に荷物を預け、コンビニで卵をワンパック買って、ようやく今家に帰ってきたところだった。すでに夜の九時を過ぎている。今日は朝からずっと働き詰めなので、残っていた霊符の製作作業は明日に回して、そのままベッドに転がった。


 うとうとしかけたとき、不意に部屋の中に違和感を察した。ベッドから起き上がったボクの視線の先に、なぜか闇と同化したような真っ黒い烏が一羽いた。


「なんで烏が部屋にいるんだよ……?」


 呆然とするボクをよそに、烏は一声鳴くと、部屋の中で猛然と暴れ始めた。


 パソコンデスクの周りにきれいに整理整頓して置いておいた仕上げる直前の霊符が、烏の羽が巻きおこす風によって部屋中に舞っていく。まるで旋風が部屋を通過したような惨状だ。慌てて霊符を回収しようと試みたが、烏の巻き起こす風圧の方が強くて、霊符を手でつかむことすら出来なかった。


 ボクがあたふたとしていると、今度はどこからともなく焦げくさいにおいがしてきた。においの先に目を向けて驚いた。烏が火の付いた紙切れをくちばしにくわえていたのだ。


「おい、まさか……そんなわけ……ないよな――」


 ボクのつぶやきを無視して、烏はぷっと紙切れを放した。途端に、近くで舞っていた霊符に引火した。さらに、その炎が別の霊符に引火していく。瞬く間に、部屋中で炎が乱舞しはじめた。


「じょ、じょ、冗談だろ……」


 ボクはベッドの上にあった枕を手にとると、燃えている霊符に向かってがむしゃらに叩きつけた。


「消えろっ! 消えろっ! 消えてくれよっ!」


 家の中だということも忘れて、叫びながら無我夢中で消火作業をする。


 数十秒後──ようやく、部屋の中から炎は消えてなくなった。床の上には、焦げて使いものにならなくなった霊符の束が散乱している。こうなってしまっては、またデザインの段階から作り直さないとならない。


 すべての原因を作った烏の姿は、いつのまにか部屋から消えていた。



 そもそも、あの烏の正体はなんだったんだ? ニセモノとはいえ、霊符なんかを作っていたせいで、下級の動物霊が引き寄せられて、部屋に入り込んできたのか?



 いずれにしろ、今日はもうくたくたで、深く考える気力すら起きなかった。


「ちょっと、ドウムくん。なに騒いでいるの? もう夜なんだから、近所迷惑になるでしょ!」


 階下から声がした。


「分かっているよ、母さん」


 母親のことを、お手伝いさんと言い直す元気もない。


「ほんと、厄日としか思えないよ……」


 ボクはその場に座り込んでしまった。



 ――――――――――――――――



 どこからともなく姿を見せた一羽の烏が、ホテルのベッドで休んでいた成明の元に舞い降りた。成明の耳元でなにごとか話すように烏のくちばしが動く。


「――なるほどね、そういうカラクリだったわけか。これで相手のことは分かったよ」 


 成明は納得気にうなずいた。そしてすぐにサイドボード上の電話を引き寄せると、女刑事に連絡を入れた。


「――だいたい事情は分かったわ。それで、このあとどうするつもりなの?」


「呪いは法律で裁くことが出来ないんだろう? だから大人の世界の厳しさと、そして、本物の陰陽師の力を、ぼくがしっかりとその人間に教えてあげるつもりさ」


「なんだか面白そうなことを考えているみたいね。ぜひ、わたしもそのパーティーに参加したいわ」


「君のことだから、そう言うと思ったよ。君には招待客のエスコート役をやって欲しいんだけど、お願い出来るかな?」


「任せてちょうだい」


「それともうひとつ。一応、その人間の身元についても調べておいて欲しいんだけど」


「そちらも了解したわ。――それじゃ、パーティーの始まりを楽しみに待ってるわね」

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