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第2話 アベノセイメイ、呪符を送る

 ボクの名前はアベノセイメイ。あの有名な陰陽師アベノセイメイである。


 ここ最近、ボクは非常に忙しい毎日を送っていた。新しく始めた『呪いの代行』業務の依頼が、びっくりするくらいあるのだ。


 業務内容はいたってシンプルである。依頼者の呪いたい相手に、ボクが製作した呪いの霊符を送りつけるだけである。相手を呪うことに適した新しい霊符も作った。デザインはドクロマークで、おどろおどろしい雰囲気に仕上げてある。呪符(じゅふ)と名付けて売り出すと飛ぶように売れた。


 果たして呪いが成功しているのかどうか、ボクはまったく知らない。でも、大半の依頼者は『陰陽師アベノセイメイが製作した呪符なら効果がある』と思うようで、今まで一度もクレームのメールは届いていない。呪いの代行にクレームをした場合はあなたが逆に呪われます、と注意文章を掲載したのも要因かもしれないけれど。


 とにかく、今のボクはすごく忙しかった。


 今日も朝の修行という名の業務をやり終えると、いったん休憩に入った。一階の冷蔵庫からコーラのペットボトルとシュークリームを取ってきてひと休みする。


「ドウムくん。たまには外出して、太陽の光をあびないとダメよ。部屋にずっと引きこもったままじゃ、体に悪いわよ」


 階段を上がりかけていると、居間から声がした。ボクの母親――ではなく、アベノセイメイに仕えるお手伝いさんの声だ。


「学校だって、ずっと不登校のままなんだから。このままじゃ、退学になっ――」


「分かっているよ。母さ――」


 言い掛けたところで、慌てて言葉を飲み込んで、ボクは自分の部屋に戻った。


「まったく、自分の息子が今、とっても大きなネット事業をしていると理解していないから困るんだよな」


 ボクはパソコンデスクにペットボトルとシュークリームを置き、メールボックスを開いた。少しでも目を離していると、次から次に注文メールが届いているのだ。何通かにざっと目を通す。


「また同じ人から届いているよ。このところほぼ毎日だな」


 メールの送り手は、一番最初にアベノセイメイ神社に、呪いの代行の依頼をしてきた人物だった。



『最初の依頼から二週間が過ぎましたが、まだ祖母は元気で健在です。もっと強い呪いがあったらかけてください。いますぐにでも死んでもらわないと本当に困るんです。よろしくお願いします』



 ボクはこの祖母宛てに、呪いの呪符を十通以上送っていた。今だに効果がないと書いてあるが、そもそも呪いなんかに効果を求める方がおかしいのだ。


 かといって、そのことをはっきり言ってしまっては依頼人が怒るだけなので、いつもと同じように遠回しの表現でメールを返すことにした。



『呪いは一朝一夕で効くものではありません。陰陽師アベノセイメイの力をもってしても、人間を呪うには長い時間がかかります。少しずつではありますが、相手の力が弱まっているのは、日々確認出来ていますので、もうしばらくお待ちください。なお、今日も呪いの呪符を相手方に送ってあります』



 メールを送ると、ボクはさっそく呪符の制作に取り掛かった。メールには呪符を送ったと書いたが、今日はまだ送っていないのだ。今から作れば、バイク便で今日中に届けてもらえるだろう。


 さっそくパソコンの図形ソフトを立ち上げる。今回はデザインをさらにおどろおどろしい死をイメージしたものにする。ドクロマークだけではなく、血飛沫のデザインも取り入れる。そうして出来上がった呪符に、祝詞を入力する。


 入力を終えてプリントアウトを済ませると、最後にいつもはやっていないが、アベノセイメイの呪いの力を呪符に注入した――ように振る舞った。形だけでも呪いの力を注入したようにしておけば、クレームがあったときに言い訳が出来ると思ったのだ。そもそも、ボクには人を呪えるだけの力なんて、これっぽっちもないんだけどね。


「よし、これでOK」


 封筒に入れて、依頼者から教えてもらった呪いたい相手の住所を記入する。送り主の部分には、こちらの身分がバレないように住所は記入せず、アベノセイメイとだけ書いておく。


「それじゃ、これをバイク便で送ろうか」


 ボクは封筒を持って、玄関に向かった。


「ドウムくん、外出するなら、帰りに卵をワンパック買ってきてね」


 居間から顔だけ覗かせた母さ――ではなくて、アベノセイメイ神社のお手伝いさんが声をかけてきた。


「はいはい、分かったよ」


 形だけ答えて、ボクは外に出た。

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