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始め ~駅にて~

 京都駅の新幹線上りホームに、二人の男性の姿があった。


「依頼された調査の件が済みしだい、寄り道をせずに速やかに帰ってきてくださいよ」


 年配の方の男が言った。歳は四十代前半。しわがひとつも出来ていないスーツに、実直真面目な顔の取り合わせは、まさにサラリーマンの鏡といった風情を醸し出している。 


「分かっています」


 答える若い青年の方は、二十代前半。黒の上下に、黒のコートを嫌味なく着こなしている様は、モデルのようにも見える。


「この先、お社の方の式典や行事がいくつも立て込んでいますから、そのことを重々忘れないでください」


「分かっています」


「それから、くれぐれもハメをお外しにならないように、お願いしますよ」


「だから、分かっています」


 青年は面倒くさそうに答える。


「分かっているとおっしゃっていながら、過去に突然行方不明になって、音信不通になるという前例が何度もあるので、私は心配しているのです」


「ぼくだってもう立派な大人になりましたから安心してください。そう何度も子供じみたマネはしませんよ」


「そこまでおっしゃるのであれば、私も今回は信じることにしますが……」



 ―――――――――――――――― 



 二人組からそれほど離れていない場所に、修学旅行生の集団がいた。列に並んだ生徒達の半分は前に立つ教師を見ており、残りの半分は後方にいる二人組の方に目を向けていた。より正確にいうのであれば、二人組のうちの若い青年の方を見つめていた。


 後方を見ているのは、全員、女子生徒たちである。男子生徒は見向きもしていない。女子生徒ばかりでなく、生徒を引率しているはずの女性教師も視線が後方に釘づけだった。


「ひょっとしてモデルじゃない。あんなに背が高くてかっこいいんだもん」


「違うよ。たぶんアイドルだって。あの優しそうな横顔からして間違いないって」


「俳優って可能性もあるわよ。もしかしたら今、映画の撮影中だったりして」


 口々にのぼる言葉は、しかし、どれも的外れなものであった。


 なぜならば、その青年の正体は――。

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