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02話魔王のスキル

 

「魔王様、魔王様」


 魔王……。


「魔王様!」


 あっ、俺か!


「悪い、起きてるユキ」


「なんで、無視をするんですか?」


「いや、無視をするつもりだったわけじゃ」


「それで、指定された時間に起こしましたが。何か変化はありましたか?」


「あ、あぁ。あったよ」


「えっ、本当ですか!」


 おい、その笑顔どうした。さっきまでの俺に対する期待ゼロの無表情顔はどこにいった。


「まぁ、予想通りだな」


 こういうことなら、ここにいて正解だったな。


 戦っているうちに、スキルが使えるようになると思って人間と戦ってたら俺は死んでたな。


 だって、視界の右端に真っ白な文字で【スキル欄】って書いてあるからな。


 どうりで、召喚されたばかりの時は見えなかったわけだ。


 今は夜、雪で白かった周りも暗闇で真っ黒だ。


 だから、白い文字が見えるようになったわけだ。


「それで、スキルはありましたか?」


 ユキの期待の眼差しを受けながら、スキル欄を見ていると。


【スキル欄】を確認しますか?


 と空中に文字が浮かび上がった。


 確認……YesもNoの文字もないけどどうするんだ?


「どうですか?」


「今、確認中だ。少し待ってくれ」


 ユキからの質問の催促に、焦りながらも【スキル欄】を見ながら確認と念じると。


 スキル欄のようなものがズラッと出て……くることはなく。


【スキル】


 ・運命の歯車(ガチャ)




 …………。


「なんだよこれ!?」


 急に、大声をあげたことによって横にいるユキが驚いた顔をしていたが、それどころではなかった。


 何回【スキル欄】を閉じて開いても、そこに書いてあるスキルは1つだけ。


 魔王として神より与えられた力は、ガチャだった。


 何が、運命の歯車だ!


 要するに、俺の力は運任せってことだろ。


「ど、どうしましたか?」


 心配そうな顔をして、こちらの様子を伺っているユキにスキルについて話した。


運命の歯車(ガチャ)ですか」


「聞いたこともない、スキル名ですね」


「ぎゃ、逆に聞いたことあるスキルってどんなの?」


 自分以外の魔王が持つスキルが気になって聞いてみるも。


「前魔王様の、『全知全能』や『全魔法適正』『武器適正』『魅了』などのスキルを複数持っているのが平均的な魔王らしいです」


「へ、へー。そうなんだ」


 つまり、俺は平均以下ってことだね!


「魔王様、そんなに落ち込まないでください」


 あー、そういえばずっと魔王様って呼ばれるのって変な感じだな。


「ユキ、俺の名前はカイトだ。津城カイト」


「カイト様、分かりました」


 様呼びは無くならないんだ。


「それで、落ち込まないですむ理由でもあるの?」


「はい」


 えっ、ほんとに?


「他の魔王様には、スキルが『指揮』しかないお方もいたみたいです」


「そのスキルって弱いの?」


「このスキルは、統率をとり指示をするのが上手くなるくらいの力しかありません」


 えっ、弱すぎない?


「ですが、そのお方はそのスキルの可能性を信じ様々な勉強や工夫をし立派な統率のとれた魔物の軍隊を作ったそうです」


「その、様々が知りたいんだけど……」


「すみません、人伝いに聞いた話なので」


「元気に、なりませんでしたか?」


 ユキなりに、落ち込んだ俺の事を励まそうとしてくれたんだよな。


「ありがとう」


「そうですか、よかったです」


 その言葉は素っ気なかったが、心なしか喜んでいるように感じた。


 要するに、どんなスキルが貰えたとしてもその使い手次第ってことだよな。


 っていっても、俺のスキルに使い手って関係あるのか?


「ユキ、俺って魔王なんだよな?」


「もちろんです」


「魔王って何人くらいいるの?」


「魔王、どれくらいでしょうか。村や町、国のある所に魔王はいます」


「数は分からないが、結構な人数がいるってことか?」


「はい、ですが魔王は勇者より多く召喚する事が出来ないので。多いといっても、100人もいないと思います」


 勇者か、まさか勇者まで召喚されてるってことはないよな?


「てか、俺が召喚されたってことは俺の国があるってことか」


「……はい」


 あっ、そうだった。


「占領されてるんだったな」


「すみません、私の力不足で」


 そのユキの表情からは、申し訳なさが凄く伝わってきた。


 ユキは悔しいのか、服の裾を力強く握りしめていた。


「じゃ、取り返すしかないよな」


「えっ、取り返しに行くんですか?」


「えっ? ダメなの」


「いや、相手には勇者がいて……カイト様の謎のスキルだけで勝てるとは」


「結構ストレートに言うんだね」


「カイト様に死んでほしくないですから」


 えっ、そんなセリフ無表情で言える?


「俺のスキル次第って訳か」


「てか、俺魔王っていうくらいだから……支配下的なのはいないの?」


 そういうと、ユキは自身と横で待機している狼を指差した。


「まさか、ユキとあの狼だけ?」


「いえ、ここにいるのがです」


 あっ、他の子たちは別のところにいるってことか。


「他の子は?」


「全員捕まってます」


「ほんとに?」


「はい」


 その場に重い空気が広がった。


「支配下って結構いるの?」


「種族などはバラバラですが、かなりの数があると思います」


「なのに、みんな捕まったのか」


 そんだけ、いるなら勇者だとしても全員が捕まらないと思うんだけどな。


「カイト様を召喚する時に、みんな体力をもっていかれましたので」


「……」


 その場に本日2回目の重い沈黙が訪れた。


「なんで、そのタイミングで俺を召喚するの!?」


「カイト様、勇者に私達が対抗しても無駄ですよ。次元が違いすぎます」


「なので、私達は最後の希望として貴方を召喚したんです」


「ユキは捕まらなかったんだな」


「カイト様を向かいに行く者がいなくてどうするんですか」


 あれ、なんか今バカにされた気がする。


「勇者達に捕まったままで大丈夫なのか?」


 殺されたりするんじゃ。


「今は大丈夫だと思います」


 よかった。大丈夫なら、時間はあるな。


「私を誘き出すために、痛めつけられているだけで。殺されはしないと思います」


「いや、全然大丈夫じゃない!!」


「カイト様、この世界では魔物と人間が出会ったらどちらかが死にます」


「命があるなら、救いようはあります。殺されては、どうすることもできません」


 ユキの顔からは、他の仲間達に対する心配と人間に対する怒りがこもっていた。


「それも、そうだな」


「それなら、命あるうちに早く救いにいかないとな!」


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