−最終話 緊急用脱出ポッド(アナザーエンディング)
第3話から接続する、別エンディングです。第4話と前半部分は同じです。ブリティスパトロール大隊が登場しません。よって戦闘シーンのないエンディング完結となります。
ー最終話 緊急脱出用ポッド(アナザーエンディング)
ロサンゼルス広場に戻って、夜を待った。この人通りだ。まさか、写メで世界に発信されてしまう訳にはいかない。
「ホシオカさん。リカコさんは、ホシオカさんと別れるつもりはありません。」
ホティオティが言った。
「んな事は分かってる。リカコに覚悟がなきゃ、俺達はやってゆけない。それだけの話しだ。」
「もう少し優しくしてあげても良いと思いますが?。」
星岡は、鷲の像に右手を置いた。
「理香子は、名大の准教授にプロポーズされてる。本人は隠してるが、路上ライブの仲間に名大の学生がいて、教えてくれた。日本史の研究者としても、その方が有利だ。俺の命を懸けてでも、その准教授と結婚させなきゃいけない。どんなひどい事を言ってもな…。」
「それで…リカコさんは幸せでしょうか?。」
「幸せに決まってるじゃないか。経済的に安定した家庭で、自分の研究もやれる。俺についてきたら、研究者としてのキャリアは終わりだ。」
「私は。そうは思わないのですが。」
「恋だの愛だの。そんなもんは、1年2年の話しだ。悔やんでも、あっという間に思い出になる。それでいい…。」
ホティオティは、星岡の背中を見つめた。
「リカコさんは、一生悔やむと思います。ホシオカさんを選べなかったと。プロファイルでは、リカコさんはそう言う人です。」
星岡は、ホティオティに鼻先をくっつけて怒った。
「サイドのスペースノイドだからって、勝手にプロファイルなんかするな!。人の心を読むな!。おまえに理香子の何がわかる!。」
ホティオティもアメンティティも、星岡を憐れむように見た。
「すぐにわかる。理香子は来ない。それが答えだ。」
時計は0時になった。ロサンゼルス広場に人影は無くなった。
「じゃあ。そろそろ行くか。」
星岡は、アメンティティが指定した和音をコード譜にして、ノートに書いてあった。
「もう少し待ちます。」
アメンティティは、水晶を鷲の目に入れようとしなかった。
「あきらめが悪いな。そっちの負けだ。朝になっちまうぞ。」
目を閉じたホティオティが言った。
「リカコさん…今、教授のプロポーズを断りました。」
「何だって?。」
「こちらに来ます。もう地下鉄は有りませんから…タクシーで。到着推定時刻は……0時22分20秒。」
「馬鹿じゃねえのか?。」
「馬鹿は。ホシオカさん。あなたです。」
22分20秒が過ぎた。ドレスアップした理香子が、ヒールを右手に持ってロサンゼルス広場の階段を駆け上がってきた
鷲の像の前には、星岡とあの中学生2人がいた。星岡は待っていてくれた。理香子は、立ち止まって叫んだ。
「ユキヒロ!!。」
その理香子に向かって星岡は言った。
「もう一度だけ考え直してみろ。教授夫人になるか、安月給サラリーマンのおばちゃんになるか。」
「…知ってたの?。」
「一生に一度のビックチャンスをゴミ箱に捨てやがって…。一緒に拾い直しに行ってやろうか?。」
理香子は涙をこらえて、上を向いた。
「いい。どんなビックチャンスだって、要らない物は要らないの。私は。ユキヒロのおばちゃんになるの!!。」
星岡は、理香子の所まで歩いて…抱きしめた。
アメンティティは、ホティオティと顔を見合わせて笑うと、鷲の目に水晶を入れた。本来の目がくぼんで、水晶が入った。
「ホシオカさん。盛り上がってる最中に申し訳ないんですが、ギターを弾いて頂けますか?。」
「あ〜そうか。」
星岡は、理香子の顔を見ながら言った。
「ギターって?。」
「説明しよう。この2人は月の裏側のコロニー、サイド1745から来たアメンティティとホティオティだ。バスが事故に遭って、遭難して困ってる。今、水晶を鷲の目に入れた。俺が20の和音を弾くとだ、緊急用脱出ポッドが発動する。2人は家に帰れると言う訳だ。エキサイティングだろ?。」
「つまり…その水晶は、鷲前立ての兜に入ってた水晶?。」
「そう。スペアの水晶を近づけたら入れ替わった。良くできてやがる。」
「本当なの?。」
「見てりゃわかるさ。」
星岡は、コードをダウンストロークで、ひとつづつ弾いていった。
20個目の和音が響くと、鷲の像は青い光を発し始めた。星岡は、理香子と像から離れた。
アメンティティが言った。
「何か有ったら、この像の前で20の和音を鳴らして下さい。時空をさかのぼって駆けつけます。」
「んな事は無いことを願ってるよ。だいたいだな〜何か有った時に20個もコード弾いてるヒマがあると思うか?。」
「ホシオカさんなら、やれますよ。」
星岡はあきらめ顔になった。
「わかった。頑張るよ。」
今度はホティオティが理香子に言った。
「リカコさん。あなたの判断は間違ってません。ホシオカさんは、どうかわかりませんが…リカコさんが幸せになるのは確実です。」
星岡が嫌な顔をしているのを見て、理香子は笑った。
「ユキヒロは、私が絶対幸せにしますよ。」
うなずくホティオティとアメンティティを青い光が包んでゆく。
瞬間。
2人は飛んだ。
星岡は、上に昇ってゆく青い光を見上げながら言った。
「これを学会で発表するつもりか?。箱書きの意味は、緊急用脱出ポッドの取り扱い説明書でしたなんて。」
「学会より。都市伝説の本を書いた方がいいかもね。」
「お前は馬鹿だよ…。」
「それはお互い様でしょ?。お似合いだと思わない?。」
星岡は理香子を見つめた。
星岡は、そっと顔を寄せると理香子にキスをした。
ソングライターホシオカ アメンティティホティオティ編
アナザーエンディング完結。