ー最終話 リターン
ー最終話リターン
ドレスアップした理香子は、ヒールを右手に裸足でロサンゼルス広場の階段を上がって来た。
上がった所で、立ち止まって、鷲の像の前に居る3人を見た。
…まるでスターウォーズ。2人はジェダイの騎士?
そんな事には構っていられない。
「ユキヒロ!!。」
理香子は叫んだ。
星岡がライトサーベルを持って走って来る。星岡は待っていた。理香子は抱きしめられるのを待った。
「伏せるんだ!理香子っ!。」
「えっ!!。」
とっさにしゃがむと、その上を星岡のカタナが通り過ぎた。ドサッと音がして、ピクピクした肉の塊が2っ落ちてきた。
星岡は目を剥いて(むいて)いる理香子を抱きかかえて、鷲の像に戻ろうとした。そこに幾つもの影が落ちて来て、立ちふさがった。
「俺の女に手を出すんじゃねえ!!。」
またもや、肉の焦げる臭いと共に、ピクピクした肉の塊が転がった。さらに、影が落ちてくるが、それは別の光の棒が貫いてゆく。
理香子と星岡は、鷲の像にたどり着いた。
アメンティティが笑顔で言った。
「リカコさん。お待ちしてました。いったん我々と一緒に行きましょう。」
「どこに?。」
「ラグランジュポイントだ…」
星岡が言った。
「ここに来たって事は。俺とならどこまでだって行くんだろ?。」
「うん。」
「じゃあ。ついて来い。」
アメンティティは、ニッコリ笑って、水晶を鷲の像の目に入れた。本来の目がくぼんで、水晶が入った。
「戦うのは、私とホティオティでやります。ギターを弾いて下さい。」
「まかせとけ。…理香子こいつを持っててくれ。」
星岡はカタナを、理香子に渡した。
「私。フェンシングやってたの知ってた?。」
「いや?。」
理香子は、フェンシングスタイルで寄せて来る宇宙人を蹴散らし始めた。
20個のコードが、ノートに書いてあった。
星岡は1っづつビックを使って、ダウンストロークで弾き始めた。
19個目に来た時、アメンティティが言った。
「エネルギー切れます。もうシールドも武器も終わります。」
サイド1745パトロール大隊長のブリティス大佐は、残っているのは自分だけだと気づいて愕然とした。
しかし、まだ自分のレーザーガンのエネルギーが残っているのを確認した。
「そこまでだ。弾くのを止めろ。用があるのは、サイド1745の2人だけだ。お前達の命はとらん。」
星岡はニヤリと笑った。
「フォークシンガーはな。弾くのを止める時は、自分の意志で止める。他人の指図は受けねえんだよ!!。」
星岡は最後のコードを鳴らして、ネックを持つと、レーザーガンを抜いたブリティス大佐の頭にギターを振り下ろした。
モーリスは砕け散り、ブリティス大佐は崩れ落ちた。
「テクノロジーが万能だなんて、思い上がるんじゃねえ。」
鷲の目から、青い光がほとばしり出た。
「敵は全滅だ。もう宇宙に行く必要はないな。」
「そうですね。でも何かあったら、ここで20のコードを弾いて下さい。すぐに駆けつけます。」
「んな事は無い事を願ってるよ。」
星岡は理香子を連れて、鷲の像の前から離れた。
青い光がアメンティティとホティオティを包み込んでゆく。
2人はニッコリ笑って、手を振った。瞬間。
アメンティティとホティオティを包んだまま飛んだ。
星岡は昇ってゆく青い光を見上げた。
「こいつを学会で発表するつもりか?。箱書きの意味は、緊急用脱出ポッドの取扱い説明書でしたなんて。」
理香子も光を見上げた。
「学会より。都市伝説の本を書いた方がいいかも。」
「馬鹿だよ。お前は…。」
「お互い様でしょ?。お似合いだと思わない?。」
星岡と理香子は見つめ合った。
砕け散ったギターのネックを、星岡は捨てると、理香子にキスをした。
ー2時間後 ロサンゼルス広場
星岡と理香子が去った後、ブリティス大佐は意識を取り戻した。
「クソッ。甘く見過ぎた。追うしかないか…。」
ブリティス大佐も光となって飛んだ。
ーソングライター ホシオカ アメンティティホティオティ編 完結