ー第4話緊急用脱出ポッド
ー第4話 緊急脱出用ポッド
ロサンゼルス広場に戻って、夜を待った。この人通りだ。まさか、写メで世界に発信されてしまう訳にはいかない。
「ホシオカさん。リカコさんは、ホシオカさんと別れるつもりはありません。」
ホティオティが言った。
「んな事は分かってる。リカコに覚悟がなきゃ、俺達はやってゆけない。それだけの話しだ。」
「もう少し優しくしてあげても良いと思いますが?。」
星岡は、鷲の像に右手を置いた。
「理香子は、名大の准教授にプロポーズされてる。本人は隠してるが、路上ライブの仲間に名大の学生がいて、教えてくれた。日本史の研究者としても、その方が有利だ。俺の命を懸けてでも、その准教授と結婚させなきゃいけない。どんなひどい事を言ってもな…。」
「それで…リカコさんは幸せでしょうか?。」
「幸せに決まってるじゃないか。経済的に安定した家庭で、自分の研究もやれる。俺についてきたら、研究者としてのキャリアは終わりだ。」
「私は。そうは思わないのですが。」
「恋だの愛だの。そんなもんは、1年2年の話しだ。悔やんでも、あっという間に思い出になる。それでいい…。」
ホティオティは、星岡の背中を見つめた。
「リカコさんは、一生悔やむと思います。ホシオカさんを選べなかったと。プロファイルでは、リカコさんはそう言う人です。」
星岡は、ホティオティに鼻先をくっつけて怒った。
「サイドのスペースノイドだからって、勝手にプロファイルなんかするな!。人の心を読むな!。おまえに理香子の何がわかる!。」
ホティオティもアメンティティも、星岡を憐れむように見た。
「すぐにわかる。理香子は来ない。それが答えだ。」
時計は0時になった。ロサンゼルス広場に人影は無くなった。
「じゃあ。そろそろ行くか。」
星岡は、アメンティティが指定した和音をコード譜にして、ノートに書いてあった。
「もう少し待ちます。」
アメンティティは、水晶を鷲の目に入れようとしなかった。
「あきらめが悪いな。そっちの負けだ。朝になっちまうぞ。」
目を閉じたホティオティが言った。
「リカコさん…今、教授のプロポーズを断りました。」
「何だって?。」
「こちらに来ます。もう地下鉄は有りませんから…タクシーで。到着推定時刻は……0時22分20秒。」
「馬鹿じゃねえのか?。」
「馬鹿は。ホシオカさん。あなたです。」
10分が過ぎた。
「ホシオカさん。問題が生じました。」
アメンティティが深刻な顔で言った。
「宇宙人モノで問題って言ったら?…敵の襲来か?。」
「はい。サイド1745の我々とサイド1744は戦争中です。サイド1744のブリティスパトロール大隊が私達を見つけました。」
「じゃあすぐに行かないと!。目を入れろアメンティティ。」
「駄目です。私達が行ったら、あなたはリカコさんを待たない。」
「待つわけないだろう?。一生に一度のビックチャンスをゴミ箱に捨てた馬鹿女なんか。拾いなおしに行かなくてどうすんだよ。」
「だから。まだ行きません。」
20分が過ぎた。
「あと2分20秒ですが…パトロール大隊が来ます。」
星岡は、上を見上げた。薄いブルーの膜が見えた。そこにオレンジ色の火球が激突して、轟音と閃光を放った。
星岡は頭を抱えて、しゃがみこんだ。
「この防御シールドは、どれくらいもつ?。実物は初めて見るけど。」
「あのプラズマ弾では、貫通しません。パトロール大隊は、降りてきて白兵戦を挑んでくるでしょう。」
「白兵戦だぁ?。武器は?。」
アメンティティは像の台座の正面を開いてゴソゴソやり始めた。
「まぁ色々と有ります。これなんかは、星岡さんでも扱えるでしょう。」
アメンティティは、銀色の円筒形から青い光の棒を出現させた。
「ライトサーベルかビームセイバーか?。」
「我々はカタナと言ってます。」
星岡は振ってみた。
「ブンブン言わないな。」
「ホシオカさん。映画の見過ぎです。」
アメンティティとホティオティは槍のような物を、スルスルと伸ばして持った。アメンティティの顔が険しくなった。
「どうした?。さらに問題か?。」
「はい。リカコさん到着です。」
ー次話!
ー第5話 リターン
に続く